ビジネス
2023/5/12 19:00

中堅社員が今参加すべき研修とは?『組織のネコという働き方』著者が説く「伸ばすスキル」の見つけ方

「組織のイヌ」であることに疲れた人、違和感がある人へ。「組織のネコ」という存在を知っていますか? これは令和時代のサラリーマンに贈る、もっと自分に忠実に、ゴキゲンに働くためのヒント集。楽天創業期からのメンバーにして、同社唯一の兼業自由・勤怠自由な正社員となった仲山進也氏に学ぶ「組織のネコ」トレーニング、略して「ネコトレ」!

 

ネコトレVol.10「ネコと研修」

 

リスキリングにポータブル・スキル……?
研修なんて無駄じゃないの?

吾輩はイヌである。

 

名はポチ川アキ男、31歳。趣味は推し活。犬山電機10年目の中堅にして、未だ営業チームの副主任どまり。会社の指示には忠実に従っているので、もっと正当に評価されたいと思ってはいるものの、出世のレールは先輩社員の行列で大渋滞中……。

↑「我が輩はイヌである」(ポチ川アキ男)

 

ここ最近、社内で新たな取り組みが増えている犬山電機。1 on 1の導入に続いて、今度は研修制度が変わることになった。配付された資料には、「リスキリング」「ポータブル・スキル」「越境学習」「健康経営」「人的資本経営」などの聞き慣れない言葉が並んでいる。これまでは会社からの指示で必須参加のカタチだったのが、これからは研修を受けたい社員だけが好きなプログラムを選べる制度になるという。従来の階層別研修なども廃止されるそうだ。

 

ミケ野「先輩、新しい研修制度のやつ見ました!?」

ポチ川「ああ……ちゃんと見てないけど、なんか変わるらしいね」

ミケ野「楽しみっスよね!」

ポチ川「えっ、楽しみ?! いやいやいや、研修なんて全然楽しみじゃないだろ。恐ろしく退屈な座学で眠気と戦うとか、ままごとみたいなグループワークをやらされるとか、精神鍛錬で大声を出させられるとかでしょ、どうせ。最後3年計画を立てて宣言させられるけど、3日後には跡形もなく忘れ去ってるやつな。無駄の極地! 今回のあれで任意参加になったら、誰も参加しなくなるんじゃない?」

ミケ野「僕、もう申し込みましたよ!」

ポチ川「えっ?! なんの研修に?」

ミケ野「『ファンマーケティング』と『コミュニティマネジメント』と『チームビルディングファシリテーション』っス!」

ポチ川「なにそれ、そんなの今までの研修で聞いたことないんだけど……」

ミケ野「外部のプログラムでも申請すれば経費で参加できますよ!」

ポチ川「そんな斬新な制度になったのか……。でもさ、そんなテーマの研修、1日受けたって変わんないでしょ」

ミケ野「あ、さっきの3つとも3か月プログラムなんで!」

ポチ川「そ、そうなんだ……。なんでそれを受けようと思ったの?」

ミケ野「僕が立ち上げた量販店さんのコミュニティを、さらにイイ感じにできたらなと思って! 先輩は何やるんスか?」

ポチ川「うん……、まあ、あれだな。いろいろあるからまだこれからって感じかな。あはは……」

 

……マズい。席に戻って資料に目を通したオレは、研修を受けなければ取り残されるような不安と、何を選べばいいのかさっぱりわからない不安で、午後いっぱいモヤモヤが止まらなかった。そうだ、帰りにニャンザップに寄って聞いてみよう!

↑ポチ川は今日も、敏腕トレーナーのいるニャンザップへ駆け込んだ!

 

将来役に立つスキルを手っ取り早く学びたい!?

ポチ川「こんばんは! 今日もよろしくお願いします!」

 

ニャカ山トレーナー(以下、ニャカ山T)「ポチ川さん、今日はなんだか勢いがありますね」

 

ポチ川「ハイ! 質問があるのですがいいでしょうか?!」

 

ニャカ山T「もちろんです。何でしょう?」

 

ポチ川「僕は今どんなスキルを学ぶべきなのか、ぜひ教えてほしいのです!」

 

ニャカ山T「なぜそれを聞きたいと?」

 

ポチ川「実は会社の研修制度が刷新されることになって、研修を受けるかどうかも含めてすべて自分で考えて決めるカタチになったのです。でも、何を学べばいいのか困ってしまって……」

 

ニャカ山T「ご自分がよいと思うプログラムを選べばいいのではありませんか?」

 

ポチ川「どれがよいかわからないから質問しにきたのですが」

 

ニャカ山T「ポチ川さんはどういうものがよいとお考えですか?」

 

ポチ川「そりゃあ、手っ取り早くスキルアップできて、将来、役に立つような?」

 

ニャカ山T「……。たとえば?」

 

ポチ川「そうですね。やはりプログラミングとかAI活用、データサイエンスあたりをやるべきでしょうかね?」

 

ニャカ山T「ポチ川さんはそういう方面、素養がおありだったんですか?」

 

ポチ川「いいえ、まったく知識ゼロですけど」

 

ニャカ山T「……。もしかして、今の3つはパンフレットみたいなのを眺めていて、自分がまったくできないとかニガテだとかいうものを言ってみただけですか?」

 

ポチ川「ご名答! というか、研修ってそういうものですよね。できないことを勉強させられるやつ」

 

ニャカ山T「ふむ。今回もかなり凝っているようですね。では、今日のネコトレのテーマは『凸(デコ)を磨く』にしましょうか」

 

組織人の努めは
凹を埋めること?

ポチ川「凸を磨くっていうのはあれですか、強みを伸ばせ的な?」

 

ニャカ山T「そうです」

 

ポチ川「出ましたね。僕はもうダマされませんよ! 強みなんて伸ばしたって意味ないですから」

 

ニャカ山T「どうしてですか?」

 

ポチ川「だって、組織というのは人が入れ替わっても大丈夫なようにしなければいけないでしょう。強みを伸ばしたら、仕事のしかたが属人的になってしまうので、その人がいなくなったら回らなくなりますよね。だから、凸を磨くのではなく、決められたことをきちんとこなせるように凹を埋めるのが組織人の努めなんですよ。研修ってのは、そのためにあるわけですから。ミケ野だってそうですよ」

 

ニャカ山T「あの“組織のネコ”のミケ野さんも?」

 

ポチ川「3つも研修に申し込んだと言っていました。自分が立ち上げた量販店コミュニティがどうのこうので、なにやらカタカナの羅列みたいな研修を受けるとか。きっとうまくいってなくて悩んでいるんでしょうね」

 

ニャカ山T「ちなみに、ミケ野さんは何の研修を?」

 

ポチ川「気になって一応メモっておいたんですよ。えーっと、これこれ、『ファンマーケティング』と『コミュニティマネジメント』と『チームビルディングファシリテーション』だそうです」

 

ニャカ山T「たしかミケ野さんは、量販店さんの横のつながりをつくって、どこだかの社長からほめられてましたよね?」

 

ポチ川「ニャンデンネンの社長ですね。それが何か?」

 

ニャカ山T「ミケ野さんが申し込んだプログラムのラインナップからすると、完全に凸を磨きにいっていますね。おそらく単発の研修ではなく、一定期間継続するようなプログラムではないでしょうか」

 

ポチ川「どうしてわかるんですか!? 3つとも3か月続くやつだと言ってました……」

 

ニャカ山T「やはりそうですよね。では、そろそろ今日のネコトレをやってみましょう。今回のトレーニングは『101点以上を目指す』です」

 

凹を埋めずに凸を磨いて
101点以上を目指すべし

ポチ川「101点……って意味がわからないのですが?」

 

ニャカ山T「学校教育のテストは100点満点なので、ニガテ科目を勉強したほうが点数の伸びが大きくなりましたよね」

 

ポチ川「当然です」

 

ニャカ山T「でも、仕事の世界に満点はありません。あったとしても100億万点とかなのです。凹を埋めても70点くらいの平均点にしかならないのに対して、凸を磨けば1000点にも1万点にもなる可能性があります。だから、ポチ川さんも得意なことで突き抜けてほしいと思うのですが」

 

ポチ川「仕事で得意なこと……。うーん、そう言われても、僕には特に思い当たるものがないんですけど」

 

ニャカ山T仕事以外のことでもかまいません。ポチ川さんの趣味は推し活だと思いますが、そこで得意なことやスキルを伸ばしたいことはありませんか?」

 

ポチ川「推し活で得意なことですか? 長くなりますよ? まずは推しの魅力を解説するための動画チャンネルを立ち上げたのですが、まだまだ登録者が少ないので動画の編集スキルを磨いてスピードを上げたいと思っていたところです。さらに、推しが成長を遂げるには何が必要なのかを知るために、トレンドのデータを収集・分析するノウハウを今まで以上に磨きたい。また、推し仲間の横のつながりをつくることでファンコミュニティを強化するために、社会心理学の方面から攻めてみるのもありだなと思っていたところで……」

 

ニャカ山T「あの、ポチ川さん」

 

ポチ川「なんでしょう?」

 

ニャカ山T「もうそのくらいで十分です」

 

ポチ川「あ、すみません! 推しのこととなるとつい熱くなってしまうもので」

 

ニャカ山T「動画編集、情報分析、ファン心理ということですが、営業の仕事にも役立ちそうなスキルばかりですね

 

ポチ川「……あっ!」

 

ニャカ山T「さて、今日はもうこんな時間です。またお会いできる日を楽しみにしていますね」

 

 

今日のネコトレ

Vol.10
【101点以上を目指そう】

・何を学ぶべきかではなく、何を学びたいか
・凹を埋めるのではなく、凸を磨くことにフォーカス
・趣味や好きなことのスキルを、仕事に当てはめてみる

Vol.00から読む
Vol.09「ネコと1on1」<< Vol.10 >> Vol.11「ネコと楽しい仕事」

 

仲山進也

仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長。
北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。創業期の楽天に入社後、楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。「仕事を遊ぼう」がモットー。

 


『組織のネコという働き方 〜「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント〜』
1760円(翔泳社)
仲山進也氏による、組織の中で自由に働くためのヒント。組織で働く人をイヌ、ネコ、トラ、ライオンの4種類の動物にたとえながら、ネコと、その進化形としてのトラとして、幸せに働きながら成果を上げる方法を説く。

 

取材・構成/小堀真子 イラスト/PAPAO