ビジネス
2022/12/28 12:00

不変不動なことが安定? 組織人の盲点に『組織のネコという働き方』著者が説く「安定」の定義とは

「組織のイヌ」であることに疲れた人、違和感がある人へ。「組織のネコ」という存在を知っていますか? これは令和時代のサラリーマンに贈る、もっと自分に忠実に、ゴキゲンに働くためのヒント集。楽天創業期からのメンバーにして、同社唯一の兼業自由・勤怠自由な正社員となった仲山進也氏に学ぶ「組織のネコ」トレーニング、略して「ネコトレ」!

 

ネコトレVol.04「ネコと安定」

 

“安定”とはいったい何だ……?

吾輩はイヌである。

 

名はポチ川アキ男、31歳。趣味は推し活。犬山電機10年目の中堅にして、未だ営業チームの副主任どまり。会社の指示には忠実に従っているので、もっと正当に評価してもらいたいと思ってはいるものの、出世のレールは先輩社員の行列で大渋滞中……。

↑「我が輩はイヌである」(ポチ川アキ男)

 

今日は我が犬山電機の営業部に激震が走った。

 

30年以上にわたり犬山の製品を仕入れ続けてきた大手量販店Aが、弊社との取引をやめるという。どうやら今後は地球環境に配慮したサステナブルな製品だけを扱うとか。そうなると、我が社の製品はすべて基準を満たさないというのだ。

 

安さがウリだった量販店Aに、そんな大転換が果たして可能なのか? 社内でも懐疑的な声が上がっているが、これも時代の波なのだろうか……。

 

同僚と一杯ひっかける気にもならなかったその日の帰り道。スマホを眺めるオレの目に飛び込んできたのは、沈んだ気持ちに拍車をかける記事だった。あのニャンザップをオレに紹介してくれた大学時代の友人・ネコ山が、なんと気鋭の経営者・トラエモンとメディアで対談をしているではないか!

 

「ついに100億円調達! 最新型ピッキングロボットが物流に革命を起こす!」

 

ぶっちゃけ、ネコ山が新卒で入った大手企業を3年で辞め、社員20名ほどのスタートアップに転職したと聞いたとき、オレは「あいつも終わったな」と思ったんだよな。「わざわざ安定を捨てるなんてあり得ない」と。そう思ったのに、今日の時点で安定しているのはどちらだろうか……。そもそも安定とは何なのだ?!

 

混乱したオレの足は、いつのまにかニャンザップへ向かっていた……。

 

変化の時代の「安定」とは何か

↑ポチ川は再び、ニャンザップの戸を叩いた

 

ニャカ山トレーナー(以下、ニャカ山T)「おや、ポチ川さん。今日はずいぶん冷え込みますね」

 

ポチ川「ええ。僕の気持ちも懐も、冷え込む一方です」

 

ニャカ山T「懐も? 何かありましたね」

 

ポチ川「実は今日、うちの売上を長年支えてきた量販店Aが、犬山の製品の取り扱いをやめると決定したんです」

 

ニャカ山T「安さで有名な全国チェーンのAですね。それはまたどういう経緯で?」

 

ポチ川「地球環境に配慮したサステナブルな製品だけを扱うとかで、うちの製品がすべて対象外になるのだと……」

 

ニャカ山T「なるほど。今や投資家も、企業の環境への取り組みには目を光らせていますからね。ESG投資ってやつですね」

 

ポチ川「しかし、そんな急に変化するのは無理だと思うのですが。あまりにもリスクが大きいのではないでしょうか。会社の安定が崩壊しませんか!?」

 

ニャカ山T「ほほう。安定が崩壊ですか」

 

ポチ川「ニャカ山さん、安定って一体なんなんでしょうね。僕はもう、すっかりわからなくなりました」

 

ニャカ山T「おや、安定がわからなくなったといいますと?」

 

ポチ川「僕にニャンザップを紹介してくれたネコ山って、わかりますよね?」

 

ニャカ山T「ええ、もちろん。ポチ川さんとは大学時代の同級生でしたよね。ちょうど今日、記事を見かけましたよ」

 

ポチ川「あっ、読まれましたか!? 実は僕、ネコ山が20人のスタートアップに転職したと聞いたとき、『あいつも終わったな』と思ったんです。わざわざ安定を捨てるなんてバカげていると。それがどうですか、今やここまでに。片や犬山電機は不安定になってしまった。冬のボーナスも期待できません。『何があってもビクともしない安定した会社』だと思ったから入社したのに、僕の選択のなにが間違っていたというんでしょうか?」

 

ニャカ山T「何があってもビクともしない、ですか。これまた思考が凝っているようですね……」

 

“安定” と “不変・不動” は似て非なるもの

ポチ川「どういうことですか?! 安定を求めてはいけないんでしょうか? まさか不安定なほうがいいとでも!?」

 

ニャカ山T「もし山道を走るバスに立って乗っている人がいて、くねくねした曲がり道にさしかかったときに体勢が崩れたとしましょう。その人が安定感を増すために足元をコンクリートでガチガチに固めようとしはじめたら、どう思いますか?」

 

ポチ川「は? そんなバカげた人、いるわけないでしょう。仮にいたとしても急カーブで倒れるに決まっています。まったく意味のない対策ですよ」

 

ニャカ山T「ではポチ川さんがそのバスに乗っていたら、どうしますか?」

 

ポチ川「そりゃあ全身でバランスを取って、体勢をキープするでしょう。誰だってそうしますよ」

 

ニャカ山T「そうですよね。ではポチ川さんがいう『何があってもビクともしない安定した会社』って、バスでいうとどっちのやり方に似ているでしょうか」

 

ポチ川「……」

 

ニャカ山T「刻々と変化する不安定な環境で、自分はビクともしないように努力したつもり。それが山道で足元を固めた乗客の思考ですね」

 

ポチ川「ううう……きょうの取引停止を聞いて、上司がまさに『足元を固めなければ』と繰り返していました。固めることと安定ってイコールではないのか……」

 

ニャカ山T「環境変化の少ない時代なら『不変・不動』であることが安定につながります。しかし、環境が大きく変化し続ける時代には『不変・不動』は不安定につながるのです」

 

ポチ川「うーん。でも、足元を固める以外のことって何をどうすればよいのでしょうか?」

 

ニャカ山T「そろそろ今日のネコトレをはじめましょうか。今回のテーマは、『日々のルーティンを変えてみる』です」

 

日常の小さな変化から始める

ポチ川「日々のルーティン? 毎日の業務内容を僕の一存で変えるわけには……」

 

ニャカ山T「いえ、業務でなくても、ポチ川さんご自身の生活のルーティンでかまいません。ポチ川さんは最近、プライベートで新しい出会いや発見はありましたか?」

 

ポチ川「新しい出会い? うーん。いつも同じことの繰り返しだからなぁ」

 

ニャカ山T「その繰り返しを、ちょっと変えてみるんです。たとえば通勤ルートや、毎日立ち寄るコンビニをスーパーに変えてみる、ランチで今まで入ったことのないお店に行ってみるとか」

 

ポチ川「え……そんなことでいいんですか?」

 

ニャカ山T「日常の小さな変化こそ、『不動こそ安定』という思い込みから自由になる第一歩ですから。小さな変化を習慣化して『変化が常態』と思えるようになれば、真の安定が得られるはずです」

 

ポチ川「変化が常態……。しかし、変化ばかりしていても安定しないのではないでしょうか?」

 

ニャカ山T「山道を走るバスを思い出してください。バランスを取るときに大事なことってなんですか?」

 

ポチ川「まずは体の軸をしっかりさせて、バスの動きに合わせて体勢を変え続ければいいですよね。あと、窓の外の景色も観察すると、予測が立ちますね。うーん、なるほど、そういうことか」

 

ニャカ山T「そういうことです(笑)。今日のところは、ここまでとしましょうか」

 

ポチ川「なんだか僕、真理を会得した気がします! ネコトレも早速、明日から実践してみたいと思います。通勤路を変えればいいんですよね」

 

ニャカ山T「明日からじゃなくて、今日の帰り道から実践してみてくださいね(そういうとこだぞ)」

 

今日のネコトレ

Vol.04
【日々のルーティンを変えてみる】

・「安定」と「不変・不動」は同じではない
・変化の時代は「変わらないリスク」の方が大きい
・「変化が常態」と思えるまで小さな変化を続けてみよう

Vol.00から読む
Vol.03「ネコとロール」<< Vol.04 >> Vol.05「ネコとお客さん」

 

仲山進也

仲山考材株式会社 代表取締役、楽天グループ株式会社 楽天大学学長。
北海道生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。創業期の楽天に入社後、楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。人にフォーカスした本質的・普遍的な商売のフレームワークを伝えつつ、出店者コミュニティの醸成を手がける。「仕事を遊ぼう」がモットー。

 


『組織のネコという働き方
〜「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント〜』

1760円(翔泳社)
仲山進也氏による、組織の中で自由に働くためのヒント。組織で働く人をイヌ、ネコ、トラ、ライオンの4種類の動物にたとえながら、ネコと、その進化形としてのトラとして、幸せに働きながら成果を上げる方法を説く。

 

取材・構成/小堀真子 イラスト/PAPAO