伝説のギャル雑誌「egg」を復刊させた元編集長・赤荻 瞳さんが、2023年4月に「渋谷女子インターナショナルスクール」(シブジョ)を開校。27歳にして校長に就任し、話題となっている。校舎を「東急プラザ表参道原宿」内に構える、超都市型スクールのシブジョでは、赤荻さんの多彩な経験からカリキュラム化された授業や、有名講師陣の特別レッスンが受けられるという。今回は、赤荻氏に「シブジョ」で学べる“稼ぐ力”、そして令和のギャルマインドについて語ってもらった。
【赤荻瞳さん撮り下ろし写真】
ゆうちゃみを輩出した「egg」での経験から……「女の子の夢をサポートできる場所を作りたい」
──赤荻さんは、ギャル雑誌「egg」の復刊に携わり、編集長を務められていました。そして、23年4月に「渋谷女子インターナショナルスクール」の開校して、校長に就任されましたが、開校までの経緯を教えていただけますか。
赤荻 もともと19歳の頃に広告代理店に勤め始めて、そこのプロジェクトの一つとして「egg」のWEB版での再始動に関わりました。そこから2019年に紙媒体として復刊して、22年3月まで編集長を務めていたのですが、この学校を立ち上げたのには、「egg」での経験も関係しているんです。
というのも、「egg」って、もともと有名なモデルの子を起用してを盛り上げている雑誌ではなく、今まで芸能活動もそこまでしていなかったようなギャルの子たちにも出演してもらっているんですよ。ほんと名前のとおり“モデルの卵”たちですね。その子たちに「eggモデル」っていう肩書きも使って、夢や目標を叶えてもらって、次のステップが決まったら卒業するという媒体だと私は思っていまして。
──実際に「egg」からは人気のギャルタレントの子たちを多数輩出されています。
赤荻 そうですね。例えば“ゆうちゃみ(古川優奈)”は、今テレビで大活躍していますが、当時はそこまで有名ではなかったんです。でも、その頃から「将来毎日テレビに出るようなギャルタレントになりたい……なります!」ってずっと言っていて。他にも、いろんな夢を叶えている子たちを間近でサポートさせてもらって、自分としてもすごく楽しいなと思ったんですよ。
──なるほど。そこから今度は“学校”という新たな形でのサポートに至ったわけですね。
赤荻 はい。私が25歳になって、「egg」自体を次の世代にバトンタッチしようとしたときに、自分自身は次ステップアップするのに何をするか、と考えまして。そこで、ギャルの子たちだけじゃなくて、日本の女の子たちの夢や目標のサポートできる場所を作りたいと思い「シブジョ」の立ち上げに至ったんです。
──ご自身としても「egg」での経験からやりたかったことであると。
赤荻 そうですね。ですが、学校という場所と10代という一番大事な時期というか、女の子たちにとって高校3年間というのは、その先の人生を左右する貴重な時間だと思うんで、その時間をお預かりするっていう部分では、編集長時代もそうでしたが、より一層責任感を持って向き合わせていただいています。
昔のセンター街のように“リアルで集まれる場所”へ
「渋谷にはいろんなチャンスが転がっているから」
──校舎があるのは、渋谷の「東急プラザ 表参道原宿」という都心のド真ん中ですね。渋谷という場所を選んだのにも理由がありますか?
赤荻 私は、10代の頃は渋谷ギャルサーに所属して活動していたのですが、そこで多くの経験をして、さまざまな人との出会いもありました。その時に、渋谷はいろんなチャンスが転がっていて、大きな可能性がある街だなと思ったんですよ。実際にこの学校を立ち上げるのにも、渋谷で作ったコネクションで多方面から協力してもらいましたし、講師の方も渋谷の繋がりでご紹介いただいた方も多いですから。社会人になってからも当時の経験が役に立つことが多いですが、今の時代って、夢を持って、目標を叶えたいと思う子たちが“リアルで集まれる場所”が少ないなと思っていたんですよね。
──SNSの時代ですもんね。
赤荻 そうなんです。昔は、センター街に行けば誰かしらがいたような感じでしたから(笑)。そういった何者かになりたい、人生を変えたいと思う子たちが、リアルに集って高め合える場所を渋谷に作りたいと思ったのも理由の1つですね。
──実際に、今の10代の女の子たちと触れ合ってみて、ご自身の頃との違いや感じることは何かありますか?
赤荻 そもそも、この高校に入学しようと決意してくれるのって、当たり前ですが、中学生の時なんですよね。ここに自分の意志で入学してきてくれた子たちは、みんな将来の先の先まで見据えた選択ができている子ばかりで。事実、目標を聞くと「起業して自分のブランドを立ち上げたい」など、かなり明確な将来設計があって驚きます。自分が中学生の時なんて、全然そんなこと考えていませんでしたし、渋谷に行けばなんとかなるって思ってたんで(笑)。
──今の子たちは、人生設計がはっきりしている子が多いんですね。すごい……。
赤荻 逆に目標がしっかりあると、こちら側としてもサポートはしやすいですよね。株式会社が運営しているので、ビジネス面での実践経験や、他社との繋がりで通常の学校生活ではできないようなチャレンジを手助けすることも可能です。一人「推しのYouTuberさんと仕事をしてみたい」と夢を語ってくれていた子がいたんですが、「TGC teen」でのインターン体験授業があり、そこで夢が叶ってしまって……!(笑)
──おお! それは素晴らしい経験ですね。
赤荻 そういった形で、リアリティーある体験ができるのは本校の強みですね。もちろん、やりたい方向性は個々で全く違うので、どれだけ今いる子たち1人ひとりに向き合えるかっていうのは、私たちの課題でもあります。
ギャルサー時代からegg編集長の頃まで……「自分自身の経験したことが詰まったカリキュラムです」
──学校のカリキュラムには「ビジネス」「ファイナンス」といった実践的な授業も組み込まれていますね。
赤荻 私たちが大切にしているのは「生きる力」「稼ぐ力」という部分で、より現場的な技術や知識を学ぶことに重きを置いているので、自然とカリキュラムもより実践に近いものを組み込んでいますね。今、公立高校の先生方って、学校以外の一般企業に就職した経験のある人が5.5%しかいなくて。先生が悪いわけでは全くないですが、ビジネス面での稼ぐ力や、どうしたら活躍できるかといったマインドについては、現場を知る講師の方々が語れることが多いと思うので、そういった方々に講師のオファーをさせていただいています。
──もちろんインターナショナルスクールですから、英語の授業も多そうです。
赤荻 そうですね。渋谷から発信して、世界で活躍するような女の子をサポートすることは私の夢でもあるので、力を入れています。私自身としても、頭が柔らかいうちに英語学習はもっとやっておけばというのは、ちょっと人生の後悔ポイントではあるので(笑)。「egg」時代にも、もっと世界にアピールしたり、現地に行って営業できたかもしれないと思う部分もありますから。
──ご自身の経験が学校の方針にも反映されているんですね。
赤荻 むしろ、それが詰まってる感じです。これさえやっていれば、もっと稼げてたのかもしれないし、もっと日本以外でも活躍できていたかもしれない。実体験だからこそ、学んでもらいたいと思うことを落とし込んでいます。
逆に、当時自分が経験しておいて良かったと思うことも組み込まれていますね。ギャルサー時代にやっていたことが社会人になってから生きてきたりもしますし。あの頃、サークルの幹部になるために100人くらいの前でプレゼンとかもしていて(笑)。
──えー! それはすごいですね。
赤荻 当時、人前で自分の考えを話す機会なんてそうないじゃないですか。やっていて良かったと思いますね。実際に「egg」復刊の時に、スポンサーさんへの営業は自分でプレゼン周りしていたので、そういった意味でも、若いうちのリアルな体験は大切だなと思っています。
──最近は、10代、20代で起業するような子も増えていますが、ご経験から伝えたいことや、教えたいことは何かありますか?
赤荻 “周りの環境や繋がりを大事にして、初心を忘れない”ということですかね。ビジネスをスタートさせて、それが軌道に乗ったり、うまくいった後にどうするかが大切だと思います。周囲のサポートや協力があってこそ、今があると思うので。どうして事業を立ち上げることができたのか、というきっかけを忘れずに行動できれば、大失敗することはないと思いますから。
ギャルは、本物のギャルを見抜ける! ?「ダサいことをしたらギャルじゃないという意識が強くなった」
──赤荻さんが、大人になってから改めて気づいた、社会で生きる“ギャルマインド”って何かありますか?
赤荻 やっぱり好きなことを貫くことと、一生自分が主人公ってことですかね! 社会人になって、それこそコミュニケーションや人間関係がより重要ですが、自分の目標や考えは常に持っているべきだと思うので。あとは何か失敗しても「なんとかなるっしょ」の精神です(笑)。
──大事ですね。逆に、赤荻さんは、いろんなことにチャレンジされて成功されているので、イメージは沸かないのですが、失敗したなと思う瞬間はあるんですか?
赤荻 そうですね、ポジティブすぎて失敗したと思うことはないんですけど、全然ミスとかはありますよ(笑)。ただ、いい経験になったなって考えるタイプなので後悔していることもないですね。自分で経験した方が早く覚えられるとも思っているので。試行錯誤の繰り返しです。
──なるほど。プラスに転換することですね。まさしくギャルマインドが生きている感じがします。
赤荻 そうですね。ちなみに、今ってギャルの種類が増えて、昔と違って見た目の定義もないので、ギャルの“マインド”の部分がかなり注目されているなと感じますね。やはり中身がかっこよくないとギャルじゃないというか。昔はギャル自体のイメージが良くない時代もありましたが、今のギャルの子って明るくて中身もしっかりしている子が多いですし。
──たしかに、平成と令和のギャルでは全然イメージが違いますね。
赤荻 「egg」編集部時代も、ギャルのモデルの子たちには、絶対どこの現場に行ってもあいさつはしっかりして、ちゃんと自覚を持って行動しなさい、と話してはいました。でも、モデル同士でもそういった部分をちゃんと意識するようにしていて「そういうことはしない方がいい」とか「やり直した方がいいよ」とかお互いに指摘し合って仕事をしていたんですよ。
──すごいですね。普通は言いづらいことかと思いますから。
赤荻 そうなんです。そういった面からも“ダサいことをしたらギャルじゃない”という意識が、以前より強まっていると感じますね。それに、ギャル同士って相手が本物のギャルかどうか、結構見極められる力があるんで、すぐ分かっちゃいますね(笑)。
──え、そんな特殊能力的なことが……!
赤荻 フィーリングですけどね。どういった人かと言えば、やりたいことをしっかり人に伝えたり、自分の意見を言える人。周りに迷惑かけるようなことはしないけど、自分を持っていて、いろいろチャレンジできる人。好きなことを好きって言える人とかですかね。
──なるほど。どれも今の時代に必要なことばかりです。
赤荻 どれも少し意識するだけで、よりポジティブに生活できると思いますよ。ぜひギャルじゃなくても、ギャルマインドを身に着けてもらえたらと思いますね。
JK社長誕生の日も近い!「在学中の起業や海外での実践もサポートしていきたい」
──最後になりますが、今後の「渋谷女子インターナショナルスクール」の取り組みについて何かあれば教えてください。
赤荻 まずは、生徒の子たちの目標を叶えるために力を注ぎたいと思います。現在、起業をしたいという夢を持っている子が多いので、学校側でも在学中にスタートできるようにサポートしてあげたいと。
──シブジョから“JK社長”が誕生する日も近そうです。
赤荻 できる限りのことはしてあげたいですね。常日頃から話しているのですが、とりあえずやりたいことは何でも相談してもらって、失敗してもいいから行動に移してみようと。やはりチャレンジしないと、好きか嫌いかさえも何も分からないので。一人ひとりに寄り添って手助けができたらと思いますね。
──学校として、新たに挑戦したい事業などはありますか?
赤荻 今後は、生徒の皆さんが高校を卒業してからの進路についても、サポートできればと考えています。その一環として、海外にも分校や協力校を立ち上げられればと思いますね。18歳で卒業しても、もう少し専門的な分野を学びたいとなった場合に、現地での実習もできるような専門学校が設立できたらと。もちろん自分自身としても、もっと視野を広げられたらと思います。次なる目標ですね!
──今後もご活躍楽しみにしております。本日はありがとうございました。
渋谷女子インターナショナルスクールHP https://shibujyo.com/
構成・撮影/丸山剛史 取材・文/kitsune