年賀状シーズンということで、前回は「字が汚い族でも書きやすい筆風ペン」を紹介した。しかし、あのペンを使ったら「美文字が書けるようになる!」と思った人がいたら申し訳ない。それはちょっと誤解を生む書き方だった。
そもそもペンだけでは字の汚さを完全にフォローするのは難しい。というか、ペンを変えただけですぐ字がきれいになるなら、日ペンのバインダー式テキストもエーカンペン字マシンも必要ないだろう。ようするに前回の記事は、使い慣れない筆ペンだと普段の2倍以上汚い字になってしまうところ、書きやすい筆風ペンなら小マシ(1.15倍ぐらい)で済むよ、という話だったのだ。
じゃあ、“字が汚い族”はそれ以上は何をしても無駄なのか? 打つ手はないのか?……といっった話になるが、実はそうでもない。結局のところ美文字にはなれないけど、読みやすい字にすることはできるのだ。それも、ペラペラなプラ板を一枚使うだけで……。
セーラー万年筆 スットカケール 270円
「スットカケール」は、なんと販売からもう20年以上経つというロングセラー商品。一応は通年販売されているが、注目されるのはやはり年賀状シーズンのみ。店頭で見かける機会もこの時期だけということで、息の長いアイテムのわりにはあまり知られていないようだ。
これは、縦書きの宛名をきちんと揃えてバランス良く書くための専用テンプレートと思ってもらえばいい。使うときは、まず年賀状の宛名面に上からぱかっと被せる。スットカケールの裏は、ちょうどハガキがぴったりハマるように凹んでいるので、一旦被せてしまえばハガキがズレ動くことはない。
こういう状態になればもうおわかりだろうが、上の窓が郵便番号、あとは右から住所、名前、郵送元連絡先の3つの窓が空いている。この窓にきっちり収まるように住所や名前を書けば、文字がガタつかずキレイに整列してくれるわけだ。
そもそも悪筆に見える一因として“文字の並びが整っていない”というのがある。ガタガタと左右に並びがブレていたり、文字の大きさが前後で揃っていないと、元々の字のクオリティ以上に読みにくくダメな字に見えてしまう。
まず住所の窓の周りを見ると、フチに黒いマーカーが縦10段・横2列。つまり、マーカーを目安に20文字がこの中に入るという計算で書けばいい。
このとき、いきなり何も考えずに書いてしまうのはNGだ。先方の住所をじっくり確認して、2列10段のなかにきれいに収まるように改行の場所を決めるなどしておくことが必要だ(マンション名など、長いのを省略するかどうかも)。ともあれ、縦のラインと文字の大小が揃うだけで、かなり整った印象に感じられるはず。
名前用の窓のフチにも黒いマーカーが記されているが、バランス良く文字を書き込むには少しコツが必要だ。例えば、宛先の名前が4文字の場合、「4」と書かれたマーカーを目安に名前を書き、最後に「さま」のマーカー位置に「様」を書くと、美しく名前が書き上がる。同じような要領で、3文字なら「3」マーカー、5文字なら「5」マーカーを使うことでバランスが取れるようになっている。
最後の郵送元連絡先の窓は住所と名前欄の複合型なので、少し文字が小さくなるぐらいの感覚で書き込めばOK。住所部分はあらかじめ改行位置の確認をしておく、というのも同様だ。
実際にやってみればわかるのだが、文字が読みやすくなる以前に、スットカケールを使うと圧倒的に宛名が書きやすい。というのも、ハガキには罫線のような補助もなく、さらに普段から書き慣れない縦書きを迫られる。これはなかなかハードモードといえるだろう。
それなら、最初から「ここに文字を配置したらきれいに書けますよ」と教えてくれるガイドがあったほうが書きやすいに決まっているのだ。ハガキを書き慣れている人なら、だいたいの感覚で文字を配置できるからいらないだろうが、そうじゃない場合、スットカケールは絶対的にオススメである。テンプレートを置くだけで書きやすい&整った字が書けるのだから、これは使った方がいいに決まっているのだ。