ベテラン自動車ライターの永福ランプとフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載。今回は、新たなデザインでスポーティ感が薄まったとも言われる新型スイフトを取り上げる!
※こちらは「GetNavi」2024年7月号に掲載された記事を再編集したものです。
PROFILE
永福ランプ(清水草一)
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。様々な自動車専門誌や一般誌、ウェブなどで、クルマを一刀両断しまくっている。初老となり運転支援装置の必然性を実感、クルマを評論する際に重要視するように。
安ド
元ゲットナビ編集部員で、現在ではフリーエディター。妻子を抱えても愛車はMTにこだわる。
安ド「殿! 今回はスズキのスイフトです!」
永福「そうか」
安ド「スイフトと言えば、ターボエンジンを積んだスイフトスポーツが大人気ですが、今回は普通のスイフトです!」
永福「うむ。先代モデルでは、スイフトスポーツの販売比率が半分近くを占め、普通のスイフトは影が薄かった」
安ド「そうだったんですか!」
永福「そこで今回スズキは、普通のスイフトをもっと売ろうということで、力が入っている」
安ド「デザインも一般ウケするよう、あまりスポーティに振らなかったみたいですね」
永福「らしいな」
安ド「先代モデルのデザインのほうが好きっていう人が多いみたいですが、新型はボンネットの特異な形状が印象的で、カッコいいと思います!」
永福「実物を見ると、お魚の顔みたいで親しみが沸くな」
安ド「スイフトスポーツがどんなデザインになるか楽しみです!」
永福「結局クルマ好きの興味は、スイフトスポーツに集中しておるわけだ」
安ド「はい。どうしてもそうなります!」
永福「ところがこの普通のスイフトが、猛烈にいいクルマでビックリなのだ」
安ド「そうなんですか!?」
永福「外観もインテリアも地味でパッとしたところはないが、ヘタすると、スポーツはいらないと思うくらい走りがイイ!」
安ド「僕も最初、新しい3気筒エンジンはあんまりパワーがないし、全体的にいまひとつかなと思ったんですが、スポーティに走るとかなりいいことに気づきました!」
永福「うむ。新型は先代の4気筒エンジンより馬力はダウンしているが、実用トルクは増しているし、CVT、つまりオートマのセッティングが大変良くなっているので、先代よりむしろ軽快に走る。しかも驚くほど静かだ」
安ド「乗り心地はどうでしょう」
永福「やや硬めだが、古き良きヨーロッパのコンパクトカーのようにビシッと安定しておる」
安ド「そのあたりが殿の高評価の理由ですね!」
永福「クルマ好きなので、どうしても走りの良いクルマの評価が高くなってしまうな」
安ド「インパネはクセがなくて少し退屈な印象ですが、ディスプレイや安全装備など最新装備が満載になって、旧型スイフトから乗り換えるオーナーは、大満足じゃないでしょうか!」
永福「今回の試乗車は最上級グレードだけに、最新装備がテンコ盛り。これならトヨタ車にも負けまい。ただ値段がだいぶ上がっている。もはや値上げは当たり前の世の中だが、先代モデルの登場時に比べると、40万円くらい高くなった印象だ」
安ド「ゲゲッ! 貧乏な僕にはキツイです!」
【今月のGODカーは】SUZUKI SWIFT
スズキ/スイフト
SPEC【HYBRID MZ・2WD・CVT】●全長×全幅×全高:3860×1695×1500mm●車両重量:950kg●パワーユニット:1197cc直列3気筒エンジン+モーター●エンジン最高出力:82PS(60kW)/5700rpm●エンジン最大トルク:108Nm/4500rpm●WLTCモード燃費:24.5km/L
172万7000円〜233万2000円
【その①】クラシックな趣きを感じる、ボンネット
ボンネットフードが盛り上がっていて、まるでクラシックカーのようなレトロな雰囲気があります。また、すき間の大きいボンネットの境目ラインは、そのままボディサイドにつながり、ボディを一周していて、ファニーな雰囲気が演出されています。
【その②】“マイルド”たる所以はここに。マイルドハイブリッド
新型エンジンが搭載されていて、「HYBRID」グレードでは、ISG(発電機)が組み合わされてさらに低燃費化が図られています。カタログ燃費値は約1㎞/ℓしか変わりませんが、ハイブリッドのネームバリューは強みになります。
【その③】ドライバー重視の姿勢が見て取れる、インパネ
インテリアは先代モデルよりデザインの印象が弱くなりましたが、先進的な雰囲気にまとめられています。なお、よく見ると中央部分が若干ながら運転手側に傾いており、このあたりはいかにもスイフトらしいスポーティ感が表現されています。
【その④】スズキはスポーティさを忘れない。CVT
軽量化された新開発CVTがエンジンの高効率化を助けて、燃費性能だけでなく静粛性も高めています。ハイブリッドには5速MTも設定されていますが、これはスズキ初。ニッチなカーマニアにも優しいスイフトです。
【その⑤】安全性はクラストップレベルに! 衝突被害軽減ブレーキ
単眼カメラとミリ波レーダーを備えた「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」を搭載しています。従来型より検知エリアが拡大されて自転車や自動二輪車も検知対象となるなど、一気にセーフティレベルが上がりました。
【その⑥】特徴だった部分をあえて消す、Cピラー
先代モデルまでデザインのポイントになっていたCピラー(リアウインドウとサイドウインドウ間の柱)が、新型では完全にブラックアウトされています。スポーティ感は薄れましたが、一般向けに間口を広げた感じです。
【その⑦】カメラはここから見ています。モニタリングシステム
ディスプレイの右上にあるマルは、「ドライバーモニタリングシステム」のカメラです。運転者の顔をチェックして、眠気や脇見などを確認したら警告してくれます。スズキ初にして新型スイフトのみ搭載する装備です。
【その⑧】ブタのようにも見えるけど好印象な表情。フロントグリル
フロントマスク中央の丸型グリルのせいで、なんだか蚊取り線香を炊く容器のブタのようにも見えます。しかし見慣れてくるとこれが愛嬌のある表情に思えてきて好印象に。メッキパーツはちょっとチープな感じもします。
【その⑨】先進性が高められてもここだけはアナログで! 2眼メーター
先進的なデザインと装備でまとめられたインテリアですが、メーターはデジタルディスプレイではなく、昔からあるアナログなメーターでした。やはりアクセルに合わせて針が動く感じがスポーティでいいですね。
【これぞ感動の細部だ!】しなやかかつ軽やかにスポーティさは健在!足まわり
プラットフォーム、つまりボディの骨格は先代モデルと同じものが使われていますが、スタビライザーの仕様やストローク量など細かな改良が施されています。運転してみると、乗り心地も悪くないですし、ボディ剛性についても強度が高められたとのことで、操縦安定性が高く、コーナーを軽やかに走り抜けることができます。