華為技術(ファーウェイ)が中国市場向けに発表した最新のフォルダブルスマートフォン「HUAWEI Mate XT ULTIMATE DESIGN」を体験する機会を得ました。このデバイスは、世界初の「Z字状」3つ折り構造を採用した商用トリプルフォルダブルスマートフォンとして大きな注目を集めています。
内折りと外折りを組み合わせることで独特な形状を実現しており、折りたたんだ状態でも外側の画面が使用可能な一方、完全に開いた状態では大画面タブレットのように使用できます。この独自の構造により、ユーザーは状況に応じて1画面、2画面、3画面の使い分けが可能です。
興味深いことに、本製品は中国市場で約40万円という高価格帯で販売されているにもかかわらず、初回販売分は即座に完売しました。中国の消費者の最新技術への高い関心と、ファーウェイブランドの強さがうかがえます。
外装にはレザー風の高級感のある素材が使用され、精密に設計された2つのヒンジでスムーズに開閉できるようになっています。単に技術的に目新しいだけでなく、ユーザーの所有欲を満たすような質感も兼ね備えているわけです。
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3段階に”広がる”スマホ
閉じた状態での見た目は、一般的なスマホと変わりません。6.4インチの画面は縦長すぎることもなく、普通のスマホと同じ感覚でアプリを操作できます。
デバイスを一段階開くと、7.9インチの表示領域の2画面モードになります。タブレットとスマートフォンの中間的なサイズとなり、電子書籍の閲覧に最適です。スマホ向けアプリを左右に並べたマルチタスク操作にも便利でしょう。例えば、電車の中でメールを確認しながらウェブブラウジングを行うなど、立ったまま効率的に作業したいときに役立ちそうです。
そして、デバイスを完全に開いた3画面モードでは、10.2インチの大画面が広がります。この状態では、裏面にカメラモジュールが配置された3番目の画面も表示領域として活用されます。フルサイズのタブレットに匹敵するこの大画面は、動画視聴やドキュメント編集などの没入型作業に適しているでしょう。紙でたとえるならA5サイズに近いサイズ感で、プレゼンテーション作成や資料確認にも便利そうです。
実際に使用してみて、特に印象的だったのは画面切り替えのスムーズさです。開いた画面に応じてホーム画面がきっちりと再構成される様子には感心させられました。ファーウェイ独自のHarmonyOSがよく作りこまれているということでしょう。
Z字型の折りたたみ構造は、内側開きと外開きの組み合わせになっています。具体的には、1番目と2番目の画面の間のヒンジは外開き、2番目と3番目の画面の間のヒンジは内側開きになっています。
この設計は、スマホの使い方の幅を広げます。例えば、2画面モードの状態で外側の画面をスタンドのようにして自立させられるのです。キーボードを接続して文章を入力する際に便利そうです。なお、日本語入力については、一般的な日本語入力とは異なる操作感がありました。後述するように、そもそも日本での発売を想定していないモデルのため、しっかりローカライズがなされていないということなのでしょう。
高性能なカメラモジュールを3番目の画面の裏側に配置しており、デバイスを閉じた状態でも、完全に開いた状態でも利用できるよう設計されています。通常のスマートフォンのように手軽に撮影できるだけでなく、タブレットのように大画面で構図を確認しながら撮影することも可能です。今回の短時間の試用では十分な検証はできませんでしたが、トリプルカメラで最大50倍のデジタルズームや、F1.4~F4.0相当の光学可変絞りも備えるなど、スマホカメラとしては最高峰のスペックを備えています。
重量は、画面保護フィルムを含まない状態で298gです。これは一般的なスマートフォンほぼ2台分に相当します。3つの機能(スマートフォン、小型タブレット、大型タブレット)を1台に統合していることを考えれば、十分以上に健闘していると考えられるでしょう。ポケットに入れて携帯するよりは、鞄に入れて持ち歩くほうがこのスマホにはふさわしそうです。
日本発売が絶望的なのが残念でならない
HUAWEI Mate XT | ULTIMATE DESIGNは、フォルダブルスマートフォンの新たな可能性を示す画期的な製品です。タブレットと肩を並べる10.2インチは、折りたたみスマホのイメージを刷新する可能性を秘めています。
しかし、ファーウェイは数年前から日本でのスマートフォン投入を控えています。これは米国との対立により、Google Playの搭載が認められなくなったことが大きな要因です。残念ながら、このスマートフォンが日本で投入される可能性は極めて低いと言わざるを得ません。技術の粋を集めた製品でありながら、日本では利用できないのが残念です。