ロボットが家事をする世界はもうすぐそこまで来ている!欧州最大家電見本市「IFA 2025」で見た近未来

ink_pen 2026/1/23
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ロボットが家事をする世界はもうすぐそこまで来ている!欧州最大家電見本市「IFA 2025」で見た近未来

欧州最大の家電・IT見本市「IFA2025」から見えてきた、世界の家電トレンドをプロが徹底解説。国内特有のニーズに合わせて独自進化を遂げてきた日本の家電と比べ今、グローバル市場ではどんな家電が注目を集めているのか。

【教えてくれたのは…】

家電プロレビュアー・石井和美さん
家電や日用品を中心に情報を発信。家電をレビューするための一軒家「家電ラボ」を開設し、大型家電のレビューも行う。

最新ロボット掃除機は「片付け」可能なアーム付き

2025年9月に開催された「IFA 2025」では、AI技術を搭載した家電が数多く登場しました。日本では長年、使い勝手の向上や高性能化を重ねてきましたが、世界ではそれに加えてAIやロボティクスを活用し、人の生活リズムや行動に寄り添う“適応型の家電”が次なる潮流となっています。「人が家電に合わせて使う」時代から、「家電が人に合わせて動く」時代へ——そんな未来がすぐそこまで来ています。

なかでも会場でひと際盛り上がりを見せていたのが、ロボット掃除機の新モデルです。近年、多機能化が進むカテゴリですが、今回も中国メーカーを中心に革新的な進化を遂げていました。

最初に目を奪われたのは、ロボット掃除機シェア世界1位のRobrockと5位のDreameが発表した“アーム搭載型ロボット掃除機”。床に落ちたおもちゃや靴下を器用につまみ上げ、所定の場所まで運ぶ姿に、思わず足を止めました。これまでロボット掃除機と言えば「ゴミを吸う」「水拭きをする」ものでしたが、ついに「片付ける」領域に踏み出したのです。

↑片付けを可能にしたアーム搭載型ロボット掃除機Roborock「Saros Z70」は最大300gまでのモノを持ち上げられる。
↑Dreameのアーム搭載型ロボット掃除機「Cyber10 Ultra」は最大500gまでのモノを持ち上げられる。

アームの動きはとても自然で、周囲の障害物や人の動きを認識しながらスムーズに動作。少し動きは遅いものの、カメラとAIによる画像認識を組み合わせたマルチモーダル制御で、落ちている物体の形状や素材を判断し、つかむ力を自動で調整しています。小さな靴下を優しくそっとつまむ仕草は、まるで人の手のよう。これは、ハードの進化だけでは成し遂げられなかった動作です。AIによる判断が正確になり、このような難しい動きも可能になりました。

ロボット掃除機の課題である「上下移動」も実現間近!

もうひとつ印象的だったのが、階段を昇り降りできる“昇降機能付きロボット掃除機”。こちらもDerameやMOVA、Ankerといった中国メーカーが開発しています。

↑Dreame「Cyber X」はトレッド(車輪)が回転して昇降。

会場では、複雑なセンサー制御と機械脚を組み合わせ、階段を一段ずつ昇り降りするデモが行われていました。ただし、現時点では階段そのものを掃除することはできず、あくまで「上下階を移動できる」という段階です。それでも、ロボット掃除機にとって長年の課題であったフロア間の移動が可能になったのは、大きな進化と言えるでしょう。

↑MOVA「Zeus 60」は伸縮する2つのアームで昇降する。

これが実用化されれば、1階と2階に別々のロボット掃除機を設置する必要がなくなり、家庭での利便性は格段に高まります。階段の角度や段差をミリ単位で把握しながらスムーズに動く姿に、来場者からも驚きの声が上がっていました。

↑Anker「Eufy MarsWalker」はロボット掃除機用階段昇降キャリアで、「Omni S2」を格納して使用する。

そのほか、日本の住居環境ではなかなか普及しそうにない、ユニークな家電も数多く展示されていました。例えば、ロボット掃除機と一体化したドラム式洗濯機や、広いカーペットを丸ごと水洗いできるクリーナーなど。掃除関連の分野は今後も、暮らしの多様なニーズに応えるイノベーションが期待できそうです。

↑Roborock「4-in-1 Household Cleaning Combo」は、省スペース設計の洗濯乾燥機一体型のロボット掃除機。洗濯・乾燥・掃除・水拭きの一台4役だ。
↑Tineco「Carpet One Cruiser Vacuum Cleaner」はカーペット専用のコードレススティッククリーナー。水で洗いながら吸い込み、乾燥まで行う。

家事の負担を減らすロボットとAIの融合

次世代オーブンレンジ「wan AI chef」は、まさに“考えるレンジ”と呼べる製品でした。赤外線センサー、顔認識カメラ、本体内部の天井カメラなど、多数のセンサーを搭載。食材を入れると前面の液晶画面に映し出され、庫内の状態がひと目でわかります。

↑NVIDIAのJetson Orin Nanoを搭載したオーブンレンジ「wan AI chef」。庫内の食材の判別や、調理する人の健康チェックを行い、レシピや食事プランを提案してくれる。

入れた食材をAIが画像認識し、似た食材を判別してレシピを提案。さらに、顔認証で利用者を識別してBMIや代謝率をチェックし、その結果から個々の健康状態や嗜好に合わせた食事プランまで提案してくれるそうです。AIと調理家電が一体となり、ユーザーひとりひとりの好みや健康状態に合わせた調理を自動で行うまでに進化していました。

新しい時代の到来を強く感じさせたのが、家事支援用のヒューマノイドロボットです。Midea(マイディア)が展示した「Mira」は、洗濯物をたたむ、掃除をする、調理を補助するなど、日常の家事をサポートすることを目的としたモデル。「人と家電の共存」をテーマに掲げるMideaらしい発想で、美しく洗練されたデザインの人型家事ロボットです。

↑Mideaが開発している、家事支援用の人型(ヒューマノイド)ロボット「Mira(ミラ)」のコンセプトモデル。二足歩行型ではなく、台車で移動する。

IFAで見られたトレンドの方向性は、日本の家電が大切にしてきた“精密さ”や“高品質”とは少し異なります。日本が「使いやすさ」や「安心感」を磨き上げてきたのに対し、海外ではAIやロボティクスを活用した「行動を先読みする」家電が進化の軸になっています。どちらも目指すのは暮らしをより豊かにすること。そのアプローチの違いに、国や文化ごとの価値観が映し出されています。

IFAとは?

IFAは1924年にベルリンで始まった世界最大級の国際技術展示会。世界のコンシューマーエレクトロニクス製品や最新テクノロジーが披露され、毎年世界中から注目されるイベントだ。

↑2025年9月5日から9月9日(現地時間)に開催された「IFA2025」。来場者数は延べ約 20万人を超えた。

※「GetNavi」2026年1月号に掲載された記事を再編集したものです。

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