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2016/1/11 11:25

50年間受け継がれるボーズサウンドの起源は「感動」の再現だった【歴代モデル年表付き】

家庭用のみならず、ショッピングモールやカフェ等のさまざまなロケーションで心地よいサウンドを提供してくれているボーズのシステム。その誕生には、一人の天才エンジニアのロマンがありました。

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1929年米ペンシルべニア州フィラデルフィアに生まれたアマー・ボーズは、家計を助けるべく、ラジオ修理で10代を過ごします。苦学の後にMITで満額の奨学金を手にし、電気工学の科学学士と科学修士の課程に進みました。2013年逝去。

目指したのはコンサートホールの完全再現

ボーズがユニークなのは、その生い立ち。1964年に米マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授であったアマー・G・ボーズ博士が、研究開発を主たる業務としたボーズ・コーポレーションを学内に設立したことに始まります。「コンサートホールの臨場感と感動を、一般家庭でどう再現するか」という理念を実現するべく、室内音響学だけでなく、人間の音響心理学をも組み入れた様々な研究開発をこの50年間、連綿と追求してきたのです。

草創期のモデル901は、11.5cm口径のスピーカーを前面に1個、後面に8個搭載し、アクティブイコライザー回路を組み合わせて壁や天井に音を反射させることでスピーカーからの直接音と間接音を巧妙にブレンドさせ、コンサートホールの雰囲気を再現していました。当時そのような考え方に基づくスピーカーは皆無でした。

実はボーズは株式会社でありながら、株を市場に公開していません。それは、株主の利益や会社の利潤追求のために製品を生み出すのでなく、利益はあくまで研究開発に投資すべきというポリシーにあります。その証拠に、ボーズ氏の持ち株は、その逝去後にほとんどがMITに寄贈され、ボーズ社の利益が大学の研究費として活用されています。その恩恵を受けた学生がまたボーズに入社して利益を生むという好循環を生み出しているのです。

独自の音響理論に基づく多数の特許技術を保有

こうした背景もあって、ボーズがこれまで築いてきた数々のテクノロジーは、非常に独創的なものが多く存在します。例えば「アクースティマス」理論は、小型エンクロージャーでいかに強力な低音再生を可能とするかというもの。独自の計算式に基づいて共振と共鳴の理屈を組み合わせ、低歪み/高ダイナミックレンジを獲得しました。

ボーズ本社は、ボストン近郊のフラミングハムに在り、多くの優秀な技術者が新しい音響技術や理論構築に日々取り組んでいます。筆者はかつて二度ほど、その小高い丘〝ザ・マウンテン〞に建てられた本社やR&D塔を訪れていますが、天地を90度回転させた(つまり両壁が床と天井になる)部屋には度胆を抜かれました。これは、クッションや家具が微妙にズレてリファレンスが変化することを避けるため、それらを固定して不変の環境を配備し、常に同じ条件で計測ができるようにしたもの。

それほどまでにシビアなポリシーを打ち出すボーズから生まれる製品が悪かろうはずはないのです。

ボーズ50年の歩み

1964年

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MIT内に設立されたボーズ社は、日中は政府機関や米軍の仕事を請負い、研究は夜間におこなっていました。

1966年

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民生機第1号のモデル2201は、高価な上に営業面の不慣れから大失敗に終わります。

1968年

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2機目のモデル901は、販売店での製品説明とデモンストレーションに注力して大成功。

1989年

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欧州の旅の途中で考案したノイズキャンセリングヘッドセットの実用化に成功。

1993年

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特許のアコースティック・ウェーブガイド技術をラジオに導入し、既成概念を一新します。

2000年

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アコースティック・ノイズキャンセリング・ヘッドフォンの民生機第1号を発表。

2004年

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iPod専用スピーカーとして、いち早くSoundDockミュージックシステムを手掛けます。

2009年

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QuietComfort15ヘッドフォンでノイキャンヘッドフォンに再び革新を起こします。

2010年

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スピーカー16個をテレビモニターの背面に搭載した、ユニークなVideoWaveシステム。

2013年

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初のインイヤー型となるQuietComfort20は、周囲の音が聞こえるモードも装備。

2013年

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手のひらサイズで強力かつダイナミックなサウンドを奏でるSoundLink miniが大ヒット。

50周年を記念するに相応しい2大モデル

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ボーズ

QuietComfort 20 Acoustic Noise Cancelling headphones

実売価格3万7800円

ハウジング外側に備わったマイクでは外部騒音を計測し、内側に配置したマイクで侵入するノイズを検知。独自の演算回路でそれらノイズを相殺する逆相信号を作り、快適なノイズレスサウンドを提供します。

SPEC

●入力プラグ:3.5mmミニプラグ

●ケーブルの長さ:130cm

●電源:充電式リチウム電池

●電池寿命:約16時間

●付属品:StayHear+チップ(S/M/Lサイズ各1ペア)、充電用USBケーブル(24cm)、キャリングケース

●カラー:ブラック、ホワイト

●サイズ/質量:W27×H38×D17mm(片側、Mサイズチップ装着時/44g)

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ボーズ

SoundLink Mini Bluetooth speaker II

実売価格2万7000円

アルミ製の小型ボディには、小口径ドライバーと共に磁気回路を持たない楕円形状の振動板「デュアル・オポージング・パッシブラジエーター」を向かい合わせに搭載。そのサイズから信じがたい分厚いサウンドが繰り出されます。

 

SPEC

●外部音声入力:3.5mmステレオミニジャック×1

●付属品:充電クレードル、電源アダプター、USBケーブル(1m)

●カラー:カーボン、パール

●サイズ/質量:W180×H51×D59mm/0.67kg