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2017/7/23 17:00

夜景写真家が教える“夜更かし写真のススメ”――夜景撮影で知っておくべき4つのポイント

夜景は空が澄みやすい冬に撮るものだと思われがちだが、過ごしやすい気温で日没時間が遅い夏に撮るのもおすすめだ。天候さえ見極めれば、きれいな空のトワイライト夜景を撮ることができる。ここでは、夜景をきれいに撮るための4つのポイントを紹介する。夏の夜に、寝ているヒマはないぞ!

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【ポイント1】

三脚を使って低感度で撮る

夜景撮影は三脚を使って、ISO感度を100~200の低感度に設定して、長時間露光するのが基本となる。最近の一眼カメラやレンズは優秀な手ブレ補正機能が搭載されているため、ISO感度を上げてシャッター速度を速くすれば、手持ちでも夜景は撮れる。しかし、どうしてもノイズが多くなってしまう。一眼カメラならではの高画質を生かすためにも低感度で撮影しよう。

 

撮影モードは、絞り優先オート(AまたはAvモード)やシャッター速度優先オート(SまたはTvモード)などの自動露光を使えば、失敗が少なくて確実だ。

 

三脚がないからといって、柵や台の上にカメラを置いて撮るのは、構図の自由度が下がるのであまりおすすめしない。夜景用の三脚は特にないが、昼間の撮影にも使用できるので、1本備えておこう。その際、小さな三脚ではカメラの重さを支えきれずにブレの原因となるので、迷ったら少し大きめを選ぶこと。

 

そして、長時間露光中のカメラの振動は写真のブレの原因なので、カメラや三脚には一切触らないこと。シャッターは指で押すのではなく、ケーブルレリーズ(リモートコード)やカメラ用のリモコン、スマホアプリを使って切ること。また、手持ち撮影時には有効な手ブレ補正機能はOFFにする。手ブレ補正をONにしていると誤作動でブレが発生してしまうこともあるので注意しよう。

↑下の写真はISO32000で撮影したもの。ノイズリダクションを効かせてかなり低減させたが、それでも低感度のISO200で撮影した上の写真に比べたら画質の差は明らかだ
↑下の写真はISO32000で撮影したもの。ノイズリダクションを効かせてかなり低減させたが、それでも低感度のISO200で撮影した上の写真に比べたら画質の差は明らかだ

 

【ポイント2】

夜景撮影にベストな時間帯は日没から約30分後

夜景撮影でぜひ狙ってほしいのが、夜空に夕刻の色合いが残ったトワイライト(マジックアワー)の時間帯だ。太陽が沈んで30分ほどたった空は、夜景写真にとっていちばんフォトジェニックなのである。それを過ぎると日が完全に暮れて、真っ暗な空になり、空の色彩は望めない。

 

カメラで捉える光景は肉眼に比べて明暗差が狭くなるので、トワイライトの夜景を撮る際はタイミングに注意したい。目で見てきれいなころに撮ると、空に比べて街は暗すぎるため、露出アンダーとなって街は暗く写りやすい。なので、肉眼では空が真っ暗になる少し手前で撮るのが、写真的にはちょうどよい明るさになる。

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↑上の写真は、目で見て空がきれいなころに、空に露出を合わせて撮ったもの。街は暗く写り、華やかさはない。それから13分後に撮ったのが下の写真。街は明るく写し出され、空の描写も申し分ない。両者とも適正露出で撮れた
↑上の写真は、目で見て空がきれいなころに、空に露出を合わせて撮ったもの。街は暗く写り、華やかさはない。それから13分後に撮ったのが下の写真。街は明るく写し出され、空の描写も申し分ない。両者とも適正露出に写っている

 

【ポイント3】

暗いだけの空は極力カットする

目の前に広がる広大な夜景は、ついついそれを左右に広くフレーミングしがちだ。しかし、それでは上下に無駄な暗い空間ができてしまう。構図の中に暗い夜空を広く入れると夜景の印象が弱まるので、気になった箇所をアップで大きく切り取ろう。暗い夜空をなるべく少なくすれば、画面いっぱいに光があふれて印象的に仕上がる。切り取る箇所は、有名なビルや塔、橋など、多くの人が知っている建築物を狙うのがおすすめだ。

 

ビル群の街明かりを撮る際は、窓の明かりが多い平日に撮ろう。休日にもビル夜景は撮れるが、窓の明かりが少ないので寂しい夜景になりやすい。平日でも窓の明かりが多いのは22時ぐらいまで。どうしても休日にしか撮れない場合は、ライトアップされた建築物やにぎわう繁華街など、会社や官庁と関係ない被写体を狙うといい。また水辺のビル群なら、水面に映り込んだ街明かりも狙い目。風のない夜なら水面が鏡のような水鏡になり、実像とシンメトリーな世界を撮ることができる。

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↑上の写真は、暗いだけの空が画面の半分を占め、夜景の印象は弱い。下の写真は、空をカットして、そのぶん地上の明かりを入れた。暗い部分が減ると、画面いっぱいに光があふれる
↑上の写真は、暗いだけの空が画面の半分を占め、夜景の印象は弱い。下の写真は、空をカットして、そのぶん地上の明かりを入れた。暗い部分が減ると、画面いっぱいに光があふれる

 

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↑上の写真は平日の夜に撮影。ビルの窓に明かりが灯り、きらびやかなビルの夜景写真に仕上がった。下の写真は休日に撮影。ライトアップされた東京駅は印象的だが、背後のビルは明かりが少なくて寂しく感じる。このようなときは、東京駅だけをアップで狙ったほうがいい
↑上の写真は平日の夜に撮影。ビルの窓に明かりが灯り、きらびやかなビルの夜景写真に仕上がった。下の写真は休日に撮影。ライトアップされた東京駅は印象的だが、背後のビルは明かりが少なくて寂しく感じる。このようなときは、東京駅だけをアップで狙ったほうがいいだろう

 

【ポイント4】

夜景撮影時のカメラの基本設定

■「撮影モード」 使い慣れたモードでOK

絞り優先オート、シャッター速度優先オートなど、使い慣れたモードでOK。絞り値、シャッター速度、ISO感度の組み合わせを調整して、1秒より長い露光で撮る。マニュアル露出やバルブは露光制御が手動なので、夜景撮影に慣れてから使えばいい。

 

■「絞り&シャッター速度」 レンズの開放値から2~3段絞る、シャッター速度は1秒以上

構図の隅々までピントを合わせ、細かな街明かりもシャープに描写するために、レンズの開放値から2~3段絞り込む(開放値がF4ならF8~F11)。画質重視で低感度に設定するので、その結果、必然的に露光は1秒以上になるだろう。

 

■「露出」 基本は補正ナシ

補正ナシで撮影して、背面モニターで明るさを確認し、自分のイメージと違えば露出補正を施して撮り直す。その際、補正幅が1/3段では小さいので、2/3段や1段以上の補正でもよい。街灯やビルの窓など極端に明るい箇所は白とびしても大丈夫だ。

 

■「ホワイトバランス」 白色蛍光灯モードがおすすめ

都会の夜景は「白色蛍光灯」モードの色合いが似合うが、トワイライトのころは「太陽光(晴天)」でもきれい。ライトアップされたレトロな建物は、赤みを強調して「日陰」や「くもり」でも撮ってみよう。夜景はイメージが重要なので、肉眼と違った色合いでもOKだ。

 

■「仕上がり設定」 基本は風景モードに

ホワイトバランスほどではないが、仕上がり設定でも色味は変わる。基本は、派手な色合いの「風景」がおすすめ。ただ、赤や青が多い被写体だと色飽和を起こしやすいので、そのようなときは「スタンダード」や「忠実設定」を選ぼう。

 

■「階調補正」 ON(標準)がおすすめ

光が当たって明るい箇所や反対に陰になった暗部なども、よく見れば被写体の模様などが隠れているので、潰してしまったのではもったいない。階調補正をON(標準)にすることでそれらも描写できるので、使用するといいだろう。

 

■「ノイズ低減」 撮影状況で使い分ける

「長秒時ノイズ低減機能」をONにすると露光時間と同じ時間をかけて処理を行うので、どうしても待ち時間が長くなる。それを避けたいときはOFFかオートにしよう。また高感度で撮るときは、「高感度ノイズ低減機能」は「高」にしてノイズを減らそう。

 

■「ピント合わせ」 自動選択でOK

1点AFなどの狭い測距ゾーンを使うと、夜空に測距ゾーンが重なった場合にピントが合わないので、測距ゾーンが広い「自動選択」がおすすめ。夜景撮影は被写体の多くが遠くにあるので、どの被写体にピントを合わせるかをあまり気にしなくてもシャープに撮れる。

絞り優先オート F11 6秒 ISO100 WB:白色蛍光灯 仕上がり設定:風景 長秒時露光のノイズ低減:自動 
絞り優先オート F11 6秒 ISO100 WB:白色蛍光灯 仕上がり設定:風景 長秒時露光のノイズ低減:自動