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2017/8/10 19:10

やっぱりアナログレコードって楽しい! 歌謡曲をこよなく愛する4人のアーティストが“レコード愛”を語り尽くす

デジタル全盛の時代に、レコードやカセットテープなどのアナログメディアに再び注目が集まっています。メーカー各社からはレコードプレーヤーの新機種が続々登場し、新譜をアナログ盤でリリースするアーティストも増加するなか、アナログならではの音質や利便性も再評価されています。また、CD化や音楽配信されていないレアな音源を探すという、アナログならではの楽しみも。そこで今回は、レコードをこよなく愛するアーティスト/DJの方々に集まって頂き、お気に入りの1枚をかけながらレコードについて語って頂きました。

 

今回、集まって頂いたのは、GetNavi webでコラム連載も行っている歌手のギャランティーク和恵さんと、シンガーソングライターの町あかりさん、クラブで歌謡曲をかける和モノDJとして活躍する永田一直さんと中村保夫さんの4人。ギャランティークさんがママを務める新宿・ゴールデン街のスナック「夜間飛行」にて試聴会を開催しました。

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↑ギャランティーク和恵さん(左)と、カウンター奥から永田一直さん、中村保夫さん、町あかりさん

 

レコードの再生に使用したのは、ティアックから7月に発売されたターンテーブルのエントリーモデル「TN-100」(実売価格2万円前後)。手ごろな価格ながら本格的なMM型カートリッジを搭載し、フォノイコライザーアンプやUSBデジタル出力も備えるなど、基本的な機能はしっかり押さえたはじめてのレコードプレーヤーに最適な1台です。

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↑ティアック「TN-100」

 

どうしても聴きたくて買ったレコード

ギャランティーク和恵さん(以下、和恵):誰のレコードからいきましょうか。まずはこのなかで1番若い町さんから行きますか?

 

町あかりさん(以下、町):はい、わたしはザ・チェリーズというグループの「?Question」という曲です。高校生のころに「レッツゴーヤング」という昔の歌番組の再放送をしてて、それで初めて耳にしたんですけど、ザ・チェリーズの作品はあまりCD化されてなくて、でもどうしても聴きたくてネットオークションでレコードを購入したのがこの曲です。

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↑町あかりさんはザ・チェリーズの「?Question」を持参

 

和恵:町さんて高校生のころにレコードプレーヤー持ってたの?

 

町:持ってました。両親もレコード持ってなくて、ウチにはプレーヤーなかったんですけど、CDで聴けない曲を聴くためにレコードプレーヤー買いました。このザ・チェリーズは3人組で、キャンディーズのフォロワーっぽいんですけど、曲は宇崎竜童さんですごくカッコイイんですよ。

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和恵:あ、なんかキャンディーズの「その気にさせないで」あたりのソウルフルなところを踏襲している感じ。

 

永田一直さん(以下、永田):作詞は篠塚満由美さんですね。

 

和恵:あら、「パパはもうれつ」の“しのづかまゆみ”ね。あの曲、クラブでかかると盛り上がるのよ~。

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町:いいですよね、聴きたい! 誰か「パパはもうれつ」のレコード貸してください!

 

アイドル初のレゲエは山口百恵?

和恵:曲が終わりましたね。次は誰がかけます?

 

永田:では、先ほどの曲から宇崎竜童つながりで百恵ちゃんの曲を。79年のシングル「愛の嵐」のB面の「シニカル」という曲です。

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↑DJの永田一直さんは山口百恵の「シニカル」をチョイス

 

和恵:A面の「愛の嵐」は吹き荒れてる感じなのに、B面はすごいのどかな曲調ですね。

 

永田:これ、レゲエのリズムなんですけど、歌謡曲でレゲエを取り入れた曲としてはかなり早いほうだと思います。アレンジャーは当時、歌謡界で売れっ子だった萩田光雄さんです。調べたら、79年あたりはボブ・マーリーの曲が日本でも聴かれ出したりして、第1次レゲエブームがあったみたいなんでよね。それで業界の耳の早い人たちが萩田さんにレゲエを聴かせて、こういう曲調でってオーダーしたんじゃないかなと想像しています。

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中村保夫さん(以下、中村):アイドルとしても初じゃないですか?

 

永田:日本では、キャロルのギタリストの内海利勝さんが、75年にソロでレゲエの曲を出しているですけど、アイドル・歌謡曲ではこの曲が最初じゃないかな。岡崎友紀さんが加藤和彦と組んだ「ドゥー・ユー・リメンバー・ミー」のB面で、「ジャマイカン・アンフェアー」という曲をやっているんですけど、それは翌80年ですからね。

 

中村:当時のシングルのB面って、アルバムに入ってなかったりしてCD化されていないことも多いですよね。

 

永田:そうですね、人気のある歌手ならボックスなんかで全音源が復刻されたりしますけど、そうでないとB面やアルバムの曲なんかは音源探すのが大変になっちゃいますね。

 

中村:僕らはクラブでB面をかけることが多くて。A面はヒットを狙った曲なんですけど、B面は自分たちが作りたい曲を作っているって感じがして、作家の趣味性が高いんです。

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和恵:百恵ちゃんってアルバムやB面に遊んでいる曲多いですよね。引退前にはテクノやったりしているし。

 

永田:そのときはYMO全盛でしたからね。でも、何をやっても百恵ちゃんの曲になるのはさすがです。

 

夏に盛り上がる鉄板曲

中村:僕は夏ということで、岩崎宏美さんの「夏に抱かれて」です。

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↑中村保夫さんは岩崎宏美「夏に抱かれて」がお気に入り

 

和恵:中村さん、よくかけていますよね。

 

中村:夏の鉄板曲です。サンバというか、ラテン・フュージョンかな。

 

和恵:あたし、歌詞が好きなんです。ちょっと怖い女の歌ですよね。

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中村:僕は歌詞のなかの“海小屋”っていう表現が好きなんです。“海辺でリゾート”的な感覚がまだない時代だったのかなって。

 

町:どのあたりの海のイメージなんですかね? 葉山とか?

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永田:葉山だとリゾート感ありそうじゃないですか。もっと庶民的ですよ。大洗とか、九十九里とか(笑)。

 

和恵:漁師町なんだけど、無理矢理リゾート気分にしてるっていうね(笑)。そういえば、わたしが5月に出したレコードのジャケットが、誰かに「夏に抱かれて」を意識してますよね、って言われたことがあったの。似てますか?

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↑ギャランティーク和恵さんの7インチアナログ「茅ヶ崎メモリー」のジャケット

 

中村:上の余白の感じですかね。でも、こっちはトランクに入ってますからね。

 

ライブならではのアレンジが光る1枚

和恵:わたしはLPなんですけど、郷ひろみさんの78年のライブ盤「PHOENIX -HIROMI IN BUDOKAN-」です。当時のライブ盤ってCD化されにくいので、よく買うんですよね。このなかから、宇崎さんつながりでもあるんですけど、シングル曲の「禁猟区」をかけたいと思います。

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↑ギャランティーク和恵さんの1枚は郷ひろみのライブ盤「PHOENIX -HIROMI IN BUDOKAN-」

 

町:声援がすごいですね。ライブ盤って感じ。

 

和恵:わたし、自分のライブはバンド演奏で歌うから、こういうライブのアレンジがすごく参考になるんですよね。実際、この曲のこのライブアレンジをやったことがあるんです。ビッグバンドで。

 

町:ジャケットもかっこいいですね。中の紙はどうなっているんですか?

 

和恵:どうだろう。あ、ポスターみたいになってる。プリズムのなかから登場って感じかな。

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町:あれ、曲の終わりかたが違う!? こんなにスパッと終わる感じでしたっけ?

 

和恵:これレコーディングとはアレンジが違うの。

 

中村:もとはフェードアウトでしたっけ?

 

和恵:もともとはもっとゆるーく終わるんだけど、こっちの終わりかたもいいでしょ。

 

町:いいですね、好き!

 

放送禁止になったあの有名曲

和恵:ところでシングルもいっぱい持ってきたんだけど、町さん、このなかで聴きたい曲ある?

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町:あ、「トーキョー・バビロン」(由紀さおり)がある。ジャケットってこんな感じなんだ。キレイ~。こっちはイラストですね。

 

永田:高見知佳さんの「くちびるヌード」だね。元祖ヘタウマで知られる、キング・テリーこと湯村輝彦さんのイラストですね。

 

和恵:じゃあ「くちびるヌード」を聴きましょうか。この曲の作詞・作曲はEPOさんですね。

 

永田:アレンジは清水信之さんというかたなんですけど、YMOの坂本龍一さんと親交があって、「い・け・な・いルージュマジック」で教授がテレビに出たときはバックバンドみたいな形で一緒に出演されたりしてたみたいです。エレクトロを結構やっている人ですね。僕の青春時代のアイドルだった飯島真理さんの「愛・おぼえていますか」の編曲をしていたり、彼女の3rdアルバムのプロデュースも手掛けたりしています。

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永田:ところで、この曲、NHKでは放送禁止だったって知っていますか?

 

町:え、そうなんですか? ヌードだから?

 

永田:歌のなかで中国語やフランス語の部分があるんですけど、それが結構セクシーなことを言っているらしくて、それが原因だったみたいですね。

 

中村:資生堂のコマーシャルソングだから、っていう説もありましたね。

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町:勉強になります!

 

あのころ、レコードと

――みなさんがリアルタイムにレコードを聴いていた時代は、どういう感じだったのでしょうか?

 

町:わたしは高校生のころからレコードを聴いているんですけど、こだわりがあるわけじゃなく、レコードでしか聴けない音源があるから聴く、というスタンスです。

 

和恵:わたしの場合は物心ついたときにはもう家にレコードプレーヤーがなくて、大人になってはじめてレコードに触れましたね。

 

永田:僕らの時代は学校帰りに友だちの家にいって、普通にみんなでレコード聴いたりしてましたよね。「あのレコード買ったから、聴きにくる?」みたいな感じで。

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中村:「幻の名盤解放同盟」(※)の3人(漫画家の根本 敬、音楽評論家の湯浅 学、デザイナーの船橋英雄)なんかはまさにそれで、最初は仲良く集まってレコード聴いてて、それが仕事になっていったっていう。

※:廃盤レコードの復刻活動を行っている、昭和歌謡ブームの先駆けとなったユニット

 

永田:テープ持っていってダビングさせてもらったりしましたよね。録音と同じ時間かかるから、LP両面をじっくり聴いたり。

 

中村:当時の音楽の情報源は、ラジオとディスコでしたね。邦楽はラジオから、洋楽はディスコで知るという感じ。僕は中学の頃から歌舞伎町で遊んでたんですけど、当時は中高生が集まるディスコとかがあったんですよ。ドリンクとフードが用意されていて、食べ放題・飲み放題だったんです。誕生日にはケーキやプレゼントがもらえたりするんですけど、その確認が学生証だったりしましたから。

 

永田:いまはどんなクラブでもIDチェックがあるから、20歳未満は入場できないですもん。いい時代でしたね。

 

――町さんやギャランティークさんは現在進行形でレコードをリリースされていますが、それはどういった理由からなんでしょうか?

 

永田:町さんのCDはビクターさんから出ているんですけど、レコードはライセンスを受けて私のレーベルである「ExT Recordings」から出しています。レコードを出す理由は、単純に我々がクラブで曲をかけるときレコードを使うからで、かけたい曲をレコードにするという感じですね。町さんの7インチアナログ「最高のセットリスト」は、80年代のアイドルのレコードみたいにピンナップをつけたりしています。これもこだわりというか、洒落というか。LPだったら8面折のポスターつけたいですし。

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↑町あかりさんの7インチアナログ盤「最高のセットリスト」

 

町:そうなんです。自分で言うのもなんだけど、すごくかわいいんです!

 

永田:最近は僕らもCDでかけることもありますけど、やっぱりDJに曲を渡すならレコードがいいんですよ。つい最近も、この5月に出した和恵さんのレコード「茅ヶ崎メモリー」をとあるDJのかたに渡したら、曲をかけてくれたみたいで。それに、昨今のレコードブームで、お店も置いてくれるようになりましたし。

 

中村:特に7インチは人気ですよね。LPは場所取るし、重いし。僕らも9割くらいは7インチでかけますね。

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――最後にギャランティーク和恵さんのレコード「茅ヶ崎メモリー」を聴きながら。収録前にこの曲をテスト再生したとき、和恵さんが「レコードだと音が違う。歌が前に出てくる」とおっしゃっていたのが印象的でした。

 

和恵:そうですね。CDで聴くより声が聴き取りやすいというか。

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永田:レコードを切るにあたってイコライジングは変えていないんですけど、レコードだとハイ(高域)が少し落ちるぶん、中低域が前に出てくるのかもしれません。

 

和恵:デジタルで作った曲も、レコードに落とし込むことで質感が変わりますよね。

 

永田:なので僕らはレコードにしたいんですよ。実はこれから、町さんが和恵さんに初めて提供した曲、「夜に起きるパトロン」のカッティングも立ち会う予定です。8月23日からデジタル配信されるんですけど、アナログも出します。「CHERRYBOY FUNCTION」によるかっこいいリミックスも収録されるので、ぜひ期待してください!

 

――本日はありがとうございました。

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【インフォメーション】

2017年8月23日に、ギャランティーク和恵さんの久々となるオリジナル曲がリリースされます。タイトルは「夜に起きるパトロン」! 作詞・作曲に町あかりさん、サウンドプロデュースにKASHIFさん、リミックスではCHERRYBOY FUNCTIONさんをお迎えして、アダルトなニューウェイブ歌謡に仕上がっています。ジャケットデザインは和恵さんが大好きなアーティスト「20TN!」。

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「夜に起きるパトロン」/2017年8月23日より日本コロムビアから配信リリース(iTunes Storeほか)

01. 夜に起きるパトロン(作詞・作曲/町あかり サウンドプロデュース/KASHIF)
02. 夜に起きるパトロン ~ CHERRYBOY FUNCTION REMIX ~

 

永田一直、中村保夫、珍盤亭娯楽師匠などの和ラダイスガラージDJ陣をはじめ、砂原良徳、CRYSTAL、幻の名盤解放同盟も参加する和モノ・ディスクガイドの決定版! 和モノをダンスミュージックとして昇華させたDJ必携のバイブル。第2弾「珍盤亭娯楽師匠のレコード大喜利」も絶賛発売中!

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「和ラダイスガラージ BOOK for DJ」 永田一直監修/東京キララ社刊/2000円+税

 

純国産ダンスミュージックNO.1パーティー「和ラダイスガラージ」が、恒例の夏の終りの江ノ島OPPA-LAでの特別興行を今年も開催します! 夏の終わりを、太平洋〜江ノ島〜富士山を一望できる大パノラマ絶景スポットOPPA-LA で楽しみましょう!

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「和ラダイスガラージ〜さよなら夏の日〜」

日時:9月17日(日)15〜22時
場所:@oppala(神奈川県藤沢市片瀬海岸1-12-17 江ノ島ビュータワー4F)
DJ:永田一直/中村保夫/珍盤亭娯楽師匠/カズ/CHERRYBOY
LIVE:ギャランティーク和恵/町あかり
GUITAR DJ:KASHIF
http://waradisegarage.blogspot.jp/2017/08/blog-post_3.html‬

 

ビクターエンタテインメントから、町あかりさんの3rdアルバム「EXPO町あかり」が発売中。全曲の作詞作曲だけでなく、ほぼ全曲のバックトラックも本人が制作。カシオトーンのプリセットパターンとPCソフト「ガレージバンド」を駆使したローファイなサウンドに、町あかりの伸びやかなボーカルが炸裂。逆相をものともしないMADなミックスも聴きモノの全17曲収録!

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「EXPO町あかり」(ビクターエンタテインメント)/2315円+税

 

また、LOFT9 Shibuyaにて、町あかり主催イベント第3弾「あかりちゃんまつり3」が9月23日に開催されます。町あかりが多彩なゲストとともにお送りする歌あり、トークあり、そして、コラボありの楽しいひととき。詳細は町あかり公式サイトをご確認ください。

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チケット 前売2500円 / 当日3000円(税込・要1オーダー500円以上)

 

このほか、町あかりさんが全曲作曲・プロデュースを担当した、姫乃たまのフルアルバム「もしもし、今日はどうだった」が8月23日にリリースされます。こちらもぜひチェックしてみて下さい!