キヤノンのミラーレス一眼の現行モデルは、EVFを内蔵したEOS M5と小型でEVFを外付けにしたEOS M6、エントリーモデルのEOS M100、EOS M10の4機種がラインナップされている。このうち、中核モデルとなるのがEOS M6で初級ユーザーから中級ユーザーに人気のモデルとなっている。そこで、このEOS M6と旧モデルとなるEOS M3の画質や連写性能、価格などを比較し、その進化点や実力の程を吉森信哉カメラマンや永山昌克カメラマンの意見を交えつつチェックしてみた。前編となる今回は、そのスペックや操作性、画質を中心にチェックした。
![↑EOS M6(左)とM3。M3発売から2年が経ち、M6では像面位相差AF「デュアルピクセルCMOS AF」や映像エンジン「DIGIC7」採用などにより、大幅スペックアップ。その差やいかに](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/20170829_kohno1_003.jpg)
【基本スペック比較】AFや連写でM6が優れる
EOS M6は、一眼レフのEOS 9000Dなどと同等の撮像センサーや映像エンジン「DIGIC7」を採用。また、AFも最新の像面位相差AF「デュアルピクセルCMOS AF」に対応している。対するEOS M3は、映像エンジンに「DIGIC6」、AFに「ハイブリッドCMOS AF III」が採用されており、M6と比べると一世代前の印象。とはいえ、画素数は両機とも約2420万画素。映像エンジンやAFの差の程度が気になるところだ。
「EOS M3を持っていますが、画素数の不満はありません。ただ全体のレスポンスは、今となっては良いとは言い難いのが実情です。M6は、そうした点がかなり改良されているのが魅力。ただ、M3も大きさや質量の面では優れています」(吉森)
「最新のデュアルピクセルCMOS AFは、AF速度が速いのが魅力です。常用最高感度が1段アップし、連写枚数も格段に増えているので、M3と比べるとM6は使いやすい印象です」(永山)
価格差はあるが、スペック上はM6が一歩リードだ。
EOS M6とEOS M3のスペック比較
![↑目を引くのは、連写速度の差。EOS M6は約9コマ/秒でM3は約4.2コマ/秒だ。しかも、連写枚数も3倍以上の差がある。このほかでは、常用ISO感度が1段アップ。画質面でもM6が有利といえる。大きさと質量はM3が高さが2㎜低く、24g軽い。わずかな差ではあるが、携帯性はM3が有利か](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/170829_kohno_a.jpg)
![↑両機ともWi-FiやNFCに対応しているが、EOS M6は、Wi-Fiに加えてBluetoothでの通信にも対応。Bluetoothでペアリングしておけば、その後のカメラとスマホの連携がスムーズに行える。SNSへの画像アップロードが素早く行えるほか、Bluetooth経由でのカメラのリモコン操作も行える](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/170829_kohno_b.jpg)
【吉森信哉さんの基本スペックの10段階評価】
EOS M6:8/10
EOS M3:7/10
映像エンジンの進化か、M6ではカメラ全体のレスポンスが向上している。ISO 感度1段分の差はそれほど気にならないが、連写速度と枚数の差は大きい。
【永山昌克さんの基本スペックの10段階評価】
EOS M6:8/10
EOS M3:6/10
デュアルピクセルCMOS AF採用のM6に注目したい。M3は、画素数が同じで携帯性には優れるものの、連写枚数が少ないなど使い勝手の面で差を感じる。
【操作性を比較】サブ電子ダイヤルで露出調整しやすいM6
外観上の差は、電源スイッチの位置や動画撮影ボタンの配置などにも違いは見られるが、いちばん大きな差は右手側にある露出補正ダイヤル部。EOS M6では、この露出補正ダイヤルの下部にサブ電子ダイヤルが用意され、露出調整などが行いやすくなった。
「M6では、シャッターボタン部分のメイン電子ダイヤルとサブ電子ダイヤル、背面のコントローラーホイールの3つが用意されたことで、露出などの設定変更がかなり行いやすくなっています。サブ電子ダイヤルの位置もよく、少ない手の動きで露出調整が行えます」(吉森)
「基本的なボディ形状は同じで、ボタン配置が微妙に異なっています。EOS M6は動画撮影ボタンがコントローラーホイール側に移動し、少し押しにくくなったようです」(永山)
![↑EOS M3はサブ電子ダイヤルがなく、電子ダイヤルとコントローラーホイールの2つで設定を行う。露出補正ダイヤルは、指がかりがよく操作しやすい。EOS M6は、露出補正ダイヤル下部にサブ電子ダイヤルを用意。ただ、露出補正ダイヤルの操作性は少し後退した。オプションの外付けEVFも刷新され、小型化されている](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/170829_kohno_c.jpg)
![↑EOS M6の露出補正ダイヤル(上)とM3の露出補正ダイヤル。M6はダイヤルの下部にサブ電子ダイヤルを備え、露出設定などが行いやすい。だだし、露出補正ダイヤルの操作性は、M3のほうが操作しやすい](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/20170829_kohno1_012.jpg)
![↑M6の登場に合わせて用意された、外付けの新型EVF、EVF-DC2(参考価格/2万2440円・写真はEVFキット限定色)。M6では従来のEVF-DC1も使用可能](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/20170829_kohno1_009.jpg)
【吉森信哉さんの操作性の10段階評価】
EOS M6:8/10
EOS M3:7/10
サブ電子ダイヤルのあるM6のほうが露出調整はしやすいが、露出補正を親指1本で変更できるM3も使いやすく感じた。M6は、親指と人指し指の2本だと回しやすい。
【永山昌克さんの操作性の10段階評価】
EOS M6:8/10
EOS M3:7/10
EOS M6はオプションのEVFが小型化され、すっきりとしたデザインになったのも◎。これなら、EVFを付けてもカメラのデザインがあまり崩れない。
【画質を比較】解像感や色再現にわずかな差
画素数は両機ともに約2420万画素で基本的な解像力は同じはず。だが実際に撮影してみると、わずかながらEOS M6のほうが解像感の高い写真が撮れた。色再現もM6のほうが色が鮮やかめで、立体感のある写りが得られた。
「画素数は同じですが、映像エンジンなどが新しくなったことで、M6は見栄えのする写りになっているのではないかと思います。大きな差ではありませんが、M6がそれだけ進化しているということかと」(吉森)
「予想していたよりも差が出ていますね。M3の写りが気になる場合は、ピクチャースタイルなどを調整するといいかもしれません」(永山)
高感度撮影についても結果は同様で、EOS M6のほうが解像感が高めだった。「高感度もM6の写りに比べるとM3の写りは、わずかにぼやけた印象です。ただ、どちらもノイズはほとんで目立たないので、写りとしては悪くありません」(吉森)。
低感度での画質比較
![↑いずれも、ホワイトバランスなどはオートにして、18~150ミリレンズの24ミリを使用して撮影した。全体を見るとM3のほうが明るめの印象だが、拡大してみるとM6のほうが解像感が高めで、色も濃く再現されている。今回撮影した結果を見る限り、どちらも写りの印象は悪くはないが、大きくプリントする場合などは、M6のほうが見栄えがするだろう](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/170829_kohno_d.jpg)
高感度での画質比較
![↑EOS M3の常用最高感度であるISO12800で撮影。ともにノイズはさほど感じられないが、解像感はM6のほうが高く、質感描写なども優れている。また、低感度時同様に色の鮮やかさもM6のほうが良好に感じられる。ただし、これはかなり大きく引き伸ばした場合の結果だ](https://getnavi.jp/wps/wp-content/uploads/2017/08/170829_kohno_e.jpg)
【吉森信哉さんの画質の10段階評価】
EOS M6:9/10
EOS M3:7/10
色再現はEOS M6のほうがボクの好みの色。M3ユーザーとしては悔しいところだが、解像感も含めて2年間の差が出た部分だ。高感度は、どちらも印象は悪くなかった。
永山昌克さんの画質の評価
EOS M6:8/10
EOS M3:6/10
見栄えのする色再現という意味でEOS M6を評価したい。ただ、解像感が低めに見えるM3も画素数は同じなので、RAW形式ならM6に近いパフォーマンスを持っている。
後編では連写性能や価格についてチェックしていく。