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カメラ
2018/2/2 20:00

20年前の古いデジカメを今使うとどうなる?【ナックルの挑戦状】

最近のデジカメって、エントリーモデルでも高画素で高画質な写真が撮れますよね。ちょっと奮発して一眼レフを購入すれば、素人のお父さんでも立派なアマチュアカメラマンになれちゃう近年のデジカメ事情。

 

ふと思うのが、いまでこそ最新テクノロジーの結晶のようなデジカメですが、ここに来るまでに紆余曲折の技術革新があったはず。そう言えば、デジカメが普及し始めたころってどんな仕様だったっけ? とオジサンなりの懐古にふけった次第であります。

 

そこで、20年前に発売された初期のデジカメをいま使うとどうなるのかを検証してみました。

 

 

20年前のデジカメなんてどこにあるんだ!?

20年前といえば筆者も20代の半ば。ご多分に漏れず、自作PCやら携帯電話にハマり、ガジェット大好き人間と化していました。デジカメも購入した記憶はあるのですが、当然手元にはありません。もちろん、アキバあたりの中古ガジェット屋さんにもジャンク屋さんにも完動品の20年前のデジカメなんて置いてありません。

 

そこで、古いデジカメを入手すべくメーカーさんにすがることに。今回、協力して頂いたのは国内最大手のキヤノンさんです。ワラをも掴む思いで、広報さんに泣きついたところ、どうも古いデジカメを資料として保管してあるらしい。

 

なんとか手配して頂いたのがコレ。

 

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↑キヤノン PowerShot 600N。もはやオーパーツ!

 

キヤノン「PowerShot 600N」は1997年3月発売のモデルで、発売当時の時価は、なんと11万8000円。現在であれば、フルサイズ一眼レフのエントリーモデルが買えそうな価格です。

 

PowerShotは、現在でも同社の人気シリーズで、その系譜は20年経ったいまも脈々と受け継がれています。600Nはキヤノンのコンデジのなかでも2代目にあたり、コンデジ創世記の遺物といっても過言ではありません。主なスペックは、1/3型CCDで57万画素。1MBの内蔵メモリーを搭載し、ファインモードの解像度は832×608ドットで、内蔵メモリーに記録できるのは4枚のみ。勘違いしないで頂きたいのは、メモリーは1メガバイトですよ、ギガバイトではありません。レンズは、7mm F2.5(35mmフィルム換算50mm)の単焦点。ズームなしのコンデジなんて……と思うかもしれませんが、フイルムカメラ時代は当たり前の仕様でした。

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↑見よ、この厚み(58.8mm)を! 弁当箱に通ずるものが……

 

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↑もちろん背面液晶なんてありません

 

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↑ファインダーはレンジ式。若い人には「写ルンです」でお馴染み

 

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↑専用バッテリー。ニカド式を採用

 

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↑記録メディアは……。ん? なんだコレ?

 

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↑そうです、昔懐かしのPCMCIAカード形状のアダプターにコンパクトフラッシュを接続するタイプ

 

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↑「カメラステーション」と呼ばれる、ドック形状の充電台。データの転送もコレで可能なのだが……

 

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↑なんと、インターフェースはパラレルポート。こんなの接続できるパソコンなんて持っていません!

 

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↑現代のカメラと並べてみました。左からPowerShot SX730HS、今回のPowerShot 600N、α7II

 

このPowerShot 600Nのサイズ感をお伝えするために、現代のデジカメと比較してみました。600Nの寸法は本体のみで159.5×92.5×58.8mmで、重量は約420g。最新のPowerShotであるSX730HSが276gなので、約1.5倍の重さ。本体のサイズだけでなら、フルサイズミラーレスのソニーα7IIよりもデカい!

 

さて、600Nのディテールをご覧頂いたワケですが、さすがに年代を感じさせます。筆者にとっては、PCMCIAやパラレルといった過去のインターフェースに感慨深いものがあり、双方とも現代のパソコンには搭載されていません。デジタル機器の進歩は、転送速度の進歩といっても過言ではなく、現代においても次々と新しい伝送規格が生まれ続けているのも頷けます。

 

幸いにして、パラレルはなくてもコンパクトフラッシュは読み込める環境がありますので、なんとか撮影したデータを皆さんにお見せすることはできそうです。

 

 

見せてもらおうか、20年前のデジカメの性能とやらを!

では、早速このPowerShot 600Nを使用して作例を撮影してみたいと思います。今回は、比較用に最新のPowerShot SX730HSも使用して、PowerShot新旧対決と洒落込んでみました。

 

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↑PowerShot SX730HS。光学40倍ズームを搭載した2030万画素機

 

まずは風景を撮影しようと、ロケの準備をしていたところ、致命的な問題が発生! なんと、さすが20年前のモデルだけあって、バッテリーが経年劣化により死亡寸前……。いくら充電しても、にわかに起動はするものの、起動した瞬間に「LB(Low Battery)」の表示が。

 

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↑スゴくシンプルな操作部。12時間充電したバッテリーで起動するも液晶には「LB」の表示が……

 

さすがの筆者もコレには困り果てました。こんな20年前の専用バッテリーなんて入手困難だし、乾電池を入れるアダプターもありません。本体にACアダプターを直結して電源を確保すれば動作するのですが、それだと屋外ロケが不可能に。そこで、筆者は最近、巷を賑わせているアイテムのことを思い出しました。それがコイツ。

 

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↑cheero「Energy Carry 500Wh」

 

この巨大なモバイルバッテリーは500Whもの容量を誇り、家庭用コンセントも使えるという代物。スマホなら50回はゆうに充電できるほどの性能を有しています。しかし、その容量がゆえに、重さが5.4kgと無差別級。しかし、600Nで撮影するためには「重い」なんて言ってられません。

 

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↑こんな状態でロケを敢行。まるでプロカメラマンが使用するストロボ用のジェネレーターでも接続しているかのよう

 

これで600Nに命が吹き込まれました。早速、撮影してみます。再度おさらいになりますが、600Nは57万画素、SX730HSは2030万画素で、その差は約35倍! さてどうなることやら……。

 

まずは六本木ヒルズ。天気は晴天でしたが、夕暮れ直前というシチュエーション。同じ地点からワイド端(最広角)で撮影したもの。まずは画角の違いに驚きを隠せません。昔のコンデジといえば、風景やスナップを撮影するために単焦点とは言え、もうちょっと広角に撮れるもんだと思っていましたが、換算値50mmというのは中望遠の域なので、こんなもんでしょうか。

 

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↑600N

 

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↑SX730HS

 

光学機器のカメラと言えども、デジカメともなるとデジタル機器としての色合いが強い。レンズの性能はともかく、センサーや画像処理エンジンなどもやはり20年前のもの。見劣りするのは仕方ありません。とは言え、ビルの窓などを見るとなかなかの解像感です。

 

次に公園にて、逆光を試してみました。このシチュエーションでは最新カメラがさすがとしか言いようがありません。600Nもなんとか撮影できていますが、まるで使い捨てフイルムカメラの写真をスキャンしたような画像になっています。

 

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↑600N

 

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↑SX730HS

 

素早い動きをする動物や子どもはシャッタースピードが命となるわけですが、600Nの仕様は1/30~1/500秒。しかもマニュアルで設定できないのでカメラ任せとなるワケです。下記の写真は何枚も撮影して唯一ブレが少なかった作例。アングルが滅茶苦茶です。

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↑猛烈に嫌がっているところを決死の覚悟で撮影しました

 

ブツ撮りはご覧の通り。さすがにインスタ映えには程遠いですが、落ち着いてシャッターを切れる環境であれば、そこそこ撮れることが解りました。ただし、背面液晶や電子ファインダーに甘えっぱなしの筆者は、レンジファインダーでの撮影に四苦八苦。パイナップルの葉っぱが見切れてしまうという、非常にお恥ずかしい写真に。

 

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↑600N

 

さて、作例を見る限り、20年前とはいえそこそこ撮れることが解ったと同時に、現代の技術のスゴさを改めて知る結果となりました。

 

 

写真をパソコンに取り込んだ時どうなる?

なんとか撮影できたのは良かったのですが、気になるのが57万画素という低い画素数の写真をパソコンに取り込んだ時にどうなるのかということ。今回は解りやすく、PCに取り込んで4Kモニターで表示してみました。

 

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↑はい、これが等倍で表示した57万画素です

 

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↑比較としてPowerShot SX730HSで撮影した2030万画素の等倍を並べてみました

 

「ちっさ!」という感想が聞こえてきますが、確かに等倍表示でこれだと小さく感じますね。20年前にはコレよりも低解像度のデジカメがいくつもありました。しかし、当時のモニターも低解像度のものが主流だったため、この画素数でも十分だったのです。

 

一説によると、カメラの起源は約1000年前にさかのぼるそうです。また、300年前には世界初となるコンパクトカメラが発明されたとのこと。日本でも坂本龍馬や西郷隆盛など、幕末を生きた人の写真が残っていることを考えると、100年以上の歴史があることが解ります。

 

しかし、デジタルカメラはまだ数十年。これからも日進月歩で進化し続けて行くことでしょう。今から20年後に、今回の600Nと最新デジカメの比較ができることを楽しみにしている筆者なのでした。