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2019/4/19 16:15

完全新作なのに“しっくりくる”! パナソニックの「フルサイズミラーレス」に感じた“王道カメラ”感

フルサイズシステムとして新たに登場したパナソニックのミラーレスカメラ「LUMIX S」シリーズ。LUMIX(ルミックス)といえば、すっかりマイクロフォーサーズというイメージだが、なぜ今回新たにフルサイズミラーレスを市場に投入したのだろうか? 本稿では、パナソニックの狙いやフルサイズミラーレス市場で先行する他社との違いについて考えてみたい。

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↑3月に発売されたばかりのLUMIX S1(右)とS1R(左)。ボディの実売価格はS1が33万8990円、S1Rが50万990円。外観デザインは正面のモデル名の刻印以外同じだが、S1は有効画素数2420万画素、S1Rはおよそ倍となる4730万画素というように、センサーが異なる。特にS1Rは、フルサイズならではの高画素機といえるだろう

 

パナソニックはなぜフルサイズ機を登場させた?

ミラーレスならではの小型軽量をウリにするのなら、既存のマイクロフォーサーズシステムに分がある。ゆえに、今回のフルサイズ「Sシリーズ」の投入は、そのままのサイズ(=マイクロフォーサーズ)で8K対応できるのか? さらなる高画質化はどうするのか? そんな未来の問への答えと見てもいいだろう。

 

LUMIX Sシリーズ初号機となるS1/S1Rのサイズ感を見ても、小型軽量を目指していないことは明らかだ。この大柄で無骨なスタイリングに驚いた人も多いだろうが、やはりメインの狙いどころはプロユースだろう。そしてハイアマチュアが憧れを抱くような存在にしたい、そうした層を取り込みたい、という思惑もうかがえる。

 

カメラ本体に加え、レンズの展開を考えるとちょっと上に置かれた存在の印象を受ける。特に「Certified by LEICA」と刻まれるLUMIX S PROシリーズのレンズ群は性能、価格共に実際にワンランク上の存在だ。ファミリーユースに食い込む、という雰囲気は、いまのところ全く感じられない。かなり硬派なシステムとして、スタートを切ったといえるだろう。

LUMIX S1/S1R_02
↑ボディと共に登場した「LUMIX S PRO 70-200mm F4 O.I.S.」。三脚座をアルカスイス互換にするなど、使い勝手もいい。実売価格は20万4120円

 

LUMIX S1/S1R_03
↑無駄のない、無骨なデザインは最新型ながら、どこかクラシック感も伴う。カメラファンには保守的なデザインを好む人も多く、すんなり受け入れられそうだ

 

先行他社との違いは?

やや先行してフルサイズミラーレス市場に参入したキヤノン、ニコンと大きく異なるのは、既存のレンズ資産がないというところだ。他社はマウントアダプターによって既存レンズ(一眼レフ用)が使用でき、とくにEOSは、アダプターによるスペースをフィルターやコントロールリングに使うなどフル活用している。既存ユーザーの乗り換えもスムーズに行えるだろう。

 

その点、LUMIX Sシリーズは、Lマウントアライアンス(※)よる互換が活用できるものの、既存のLUMIX Gシリーズとレンズの共用はできない。現状は限りなくゼロからのスタートに近い状況といって差し支えないだろう。逆にいえば、大きなフォーマットで、しがらみのない新しいシステムでチャレンジできるメリットと考えることもできる。

※ライカLマウントを軸とした、ライカ、パナソニック、シグマの戦略的協業のこと
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↑フルサイズセンサーよりもひとまわり大きなLマウント。元々ライカが採用していたマウントで、初採用は2014年登場のAPS-C機「ライカT」。フルサイズも踏まえてのサイズだが、こういった背景は、ソニーEマウントにも近いところ。マウント内径は51.6mm(ソニーEマウントは46mm、キヤノンRFマウントは54mm、ニコンZマウントは55mm)

 

レンズのラインナップは早期に潤沢になる!?

S1/S1Rの登場と同時に3本のレンズが登場したが、2020年末までの2年間に10本以上をラインナップするとのこと。シグマが11本、ライカも18本導入予定ということで、そのラインナップに不安はないだろう。

 

初回登場の2本のLUMIX S PROシリーズのレンズ、そして現状で発表されているロードマップを見ると、この2年間は性能、価格、そして大きさに関しては、ハイレベルな製品が中心となりそうだ。

LUMIX S1/S1R_06
↑ロードマップでは、今後大三元ズームの標準、望遠、マクロレンズや超望遠レンズも登場予定。シグマによるLマウント対応もあるので、ラインナップは比較的早々に潤沢になる予想だ

 

初回に登場した「LUMIX S PRO50mm F1.4」を見てみると、絞り開放から高解像、そして前後への美しいボケを得られる描写力は高く、さらに近接撮影能力や近接描写力、動画撮影にも対応できる軽いAF動作など、新システムのポテンシャルの高さをうかがい知ることができる。単焦点だけでなく、大三元ズームなども登場が近いので、そちらにも期待したい。

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↑既存の50mmレンズとは一線を画す設計の「LUMIX S PRO50mm F1.4」。その大きさには度肝を抜かれるが、画質の良さはもちろんのこと、MF時の使い勝手も抜群

 

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↑キットレンズとなるのが、この「LUMIX S 24-105mm F4 MACRO O.I.S.」。S PROシリーズではないが、全域で高画質を狙えるレンズだ。レンズラインナップが揃うまで、まずはこのレンズが主体となって活躍してくれるだろう

 

あえてこの大きさにして使いやすさを求めた

S1/S1Rは外形寸法が約148.9×110×96.7mm、重さが約1017g(S1Rは約1016g)と、ミラーレスカメラとしてはかなり大きく、重い。しかし、実際に使ってみるとわかるが、その大きさのおかげもあって操作がしやすい。ボタン類は非常にスタンダードな配置で明確、迷いづらい印象だ。

 

フォーカス関係も、ジョイスティック、フォーカスモードダイヤルとAFモードボタンを搭載し、これまた迷いなく操作しやすい。前面のボタンには表記はないが、こちらは見て操作することはあまりなく、逆にボタンに凹凸を付けるなど、感触の差でわかるように工夫されている。こうしたインターフェイスの作り込みにもうまさを感じる。

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↑背面操作系は、使いやすいレイアウト。マイクロフォーサーズ上位機種でも表記されているFnの文字がなくなり、各ボタンの基本設定名称のみとなったことで、シンプルにわかりやすくなっている(カスタマイズは可能)。ジョイスティック、コントロールダイヤルも搭載され、操作は快適。ボタン類の分離もよく、押し間違えもしにくいだろう

 

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↑上部のステータスLCDは、キヤノンやニコンが小さな有機ELパネルを採用するなか、スタンダードなタイプを採用。非常に見やすい

 

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↑ボタンイルミネーションも採用され、暗所での操作もラクラク。ナイトモードも搭載している

 

システムの充実次第では超コンパクト機の登場もありうる!?

S1/S1Rは大きくなったが、これはあえてこのサイズを採用したと見るべきだろう。忘れてはいけないのが、LUMIXはマイクロフォーサーズではあの1番小さいGM1を生み出したということ。システムとして成熟し、要望があればエントリータイプのコンパクト機を展開させることは、それほど想像に難くないだろう。

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↑S1とGM1を並べたところ。GM1はS1のモニターサイズよりも小さく見えるほど。GM1はマイクロフォーサーズだが、このようにコンパクト化に対しては、いつでもアプローチできる技術を持っているのがパナソニック。システムが充実した暁には、EOS RPを越えるほどのコンパクト機の登場もあり得るかもしれない

 

ただ、そのときには、それにマッチしたコンパクトなレンズも必要になる。各社、コンパクトなボディのわりに大きいレンズばかりが登場し、バランスに欠けている部分もあるので、コンパクトさと画質の良さを兼ね備えたマイクロフォーサーズの「G VARIO12-32mm F3.5-5.6」のようなレンズのフルサイズ版が登場してくれるとうれしいところだ。

↑「LUMIX S 24-105mm F4」(左)とマイクロフォーサーズの「G VARIO12-32mm F3.5-5.6」(右)。もはやレンズキャップほどの大きさだが、常用レンズとしてフルサイズ対応したこのような沈胴コンパクトな標準ズームが1本あると、スナップなどでも気軽に持ち歩きたくなるだろう

 

ある意味“一眼レフ機”に近いミラーレス

真っ新なシステムだが、使ってみるとその操作感は極めてスタンダードで扱いやすい。この使いやすさは、実はキヤノン、ニコンの「一眼レフ」に似た感触を感じる。逆に両メーカーのフルサイズミラーレス機はコンパクト化によりその感触が減っていて、既存の一眼レフに長年親しんでいるユーザーは乗り換えを迷っているようにも感じる。

 

その点、S1/S1Rには一眼レフユーザーもすんなり馴染むこともできるだろう。もちろんLUMIXシリーズを使い慣れたユーザーであれば、ステップアップはしやすい。特にマイクロフォーサーズでは満足できないという高画質派であれば、4730万画素を誇るS1Rは狙い目の1台だ。

LUMIX S1/S1R_14
↑持った感じは、一眼レフに最も近いフルサイズミラーレス機といえるかもしれない。システムとしては、ミラーレスから抱くようなコンパクトなイメージのシステムではないが、重さを気にしない人、より高画質を新しいシステムでチャレンジしたい人には魅力的なカメラだろう