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2020/2/9 19:30

マランツが音質を徹底追求した“OSE”の実力は? ペア70万円の新「12シリーズ」を聴いた

オーディオマニアの心をくすぐるキーワードに「SE」(Special Edition)があります。クルマでいえばGT-Rでしょうか。通常モデルをベースに極限まで性能を追求したメーカー純正のチューンナップモデルがSEなのです。

 

オーディオメーカーのマランツでは、頭にOriginalを付けてOSEと呼んでいます。ほかのメーカーからSEモデルが乱発されたとき、差別化するためにOを付けたそうです。

 

基本的にポテンシャルの高いモデルを選んでOSE化がおこなわれ、限定生産になることが多いのですが、今回は通常モデルの後継機としてSACDプレーヤーの「SA-12 OSE」と、プリメインアンプの「PM-12 OSE」が2月21日に登場します。価格はどちらも35万円(税別)で日本市場専用モデルとなります。

↑左がSACDプレーヤー「SA-12 OSE」、右がプリメインアンプ「PM-12 OSE」

 

↑フロントパネル右上にはOriginal SEの刻印が彫り込まれています

 

5万円アップしたチューンナップの内容とは

オーディオ機器の音質を変える要素は、構造、回路、部品といわれます。マランツが今回OSEモデルに行ったアプローチは、回路には手を付けず素材や部品をより高品質なものに交換していくというもの。目玉は「銅メッキシャーシ」の採用です。ハイエンドモデルの「SA-10」「PM-10」に使われている銅メッキシャーシは、見た目のインパクトが強いだけでなくS/N感の向上に貢献してくれるはずです。

↑銅メッキシャーシを採用して、リアパネルも赤銅色になりました

 

天板も5mm厚のアルミ板に変更されました。音質設計を担当した尾形好宣氏は「開発中の試聴機はすぐにセッティングを変更できるように天板を外していることが多く、いい音が出たなと思って天板を置くと音が変わってしまうことがある」と語ってくれました。そんな体験から非磁性体のアルミを使った重量級の天板を採用されたそうです。筐体を支える脚の部分もアルミダイキャストからアルミ削り出しに変更されています。

↑サウンドマネージャーの尾形好宣氏

 

↑5mm厚のアルミ製天板にアルミ削り出しの脚を採用しています

 

部品交換の定番に電源部の電解コンデンサーの交換がありますが、音色が変わってしまう可能性があるため、今回は見送られました。その代わりに抵抗が高品質部品に交換されました。

↑コンデンサーは交換せずに、高品質な金属被膜抵抗を使います

 

次世代を担う「SA-12 OSE」と「PM-12 OSE」

そもそも「SA-12 OSE」の元になった「SA-12」はどんなモデルなのでしょうか。ディスクを回転させてデータをピックアップするためのドライブメカはハイエンドモデルと同じSACDM-3を使っています。このドライブはマランツオリジナルのメカで高剛性がウリ。ドライブメカを自社開発するのは大変で、現在ではSACDのドライブメカを作っているメーカーは数社しかなく、ここにも同社のこだわりが感じられます。

 

デジタル信号をアナログ信号に変換するDACは、ESS、Burr-Brown、CSなど、国産では旭化成エレクトロニクスのAKから始まる型番のDACチップが有名です。しかし、マランツは他社製のDACを使うことを嫌ってオリジナルのMMM(Marantz Musical Mastering)と名付けたDACを開発しました。これによってマランツが目指す音をDACでも追求でき、チップを使っていない回路では、こだわりの高音質パーツも自由に使えます。

 

さらにデジタル回路とアナログ回路を分離してノイズを遮断するという独自機能も搭載。デジタル回路は入力部分からシールドケースに収められアナログ回路にノイズを飛ばさないようになっています。アナログ出力端子は純銅の削り出しのニッケルメッキタイプを使うなど、隅々まで音質にこだわったモデルに仕上がっています。

↑SA-12 OSEの重厚感のあるフロントパネル、ゲイン切り替え付きのヘッドホンアンプも搭載されています

 

↑背面にはアナログとデジタルの出力端子が並びます。特にアナログ出力端子は豪華です

 

「PM-12 OSE」のベースとなった「PM-12」にもマランツ独自の設計思想が盛り込まれています。まず、HDAM(Hyper Dynamic Amp.Module)SA3と呼ばれるモジュールを使ったプリアンプ部とクラスDのパワーアンプモジュールNC500を組み合わせて使っています。一般的なプリメインアンプでは、増幅回路にオペアンプなどのチップを使うことが多いのですが、マランツは独自設計にこだわり、他社のオペアンプを使わずに自社で部品を組み合わせた回路を作ってデジタルノイズから守るためにシールドケースに収めてモジュラー化しています。これがHDAMです。プリアンプ部はトロイダルトランスを採用した専用の電源回路から電源供給を受けています。

 

Hypex「NCore NC500」は、小型で大出力と強い駆動力が得られるクラスDアンプのモジュールです。これをLRで2基搭載して200W/4Ωの大出力を確保しています。音量調整にはJRCのボリュームコントロールICを採用。左右の音のバラツキをなくし、ゆっくり回すと細かく、素早く回すとググッと音量が上がる加速度検出システムにより、自然な感覚で使えます。

 

CD入力とフォノ入力には純銅削り出しの端子を採用。スピーカー出力端子にも純銅削り出しの大型端子を採用しています。

↑「PM-12 OSE」は視認性の高い有機ELディスプレイを採用

 

↑リアパネルは銅メッキされ、豪華な端子がズラリと並びます

 

↑どちらのモデルにもリモコンが付属します

 

情報量が増えて、音の輪郭がクッキリ、広がる空間

OSEモデルは通常モデルから5万円ほど価格が上がっていますが、回路はまったく同じで、素材と部品が変更されただけ。それで音はどこまで変化するのでしょうか。まず通常モデルのSA-12とPM-12を組み合わせて、アレクサンドル・スクリャービンのピアノソナタ第1番/中野慶理、ヴィバルディのチェロ協奏曲/トーマス・ダンフォード指揮、アンソフィスティケイテッド/キャンディス・スプリングスを試聴。その後、SA-12をSA12 OSEに変更して順番に再生していきます。

↑試聴はB&Wの800 Series Diamondでおこなわれた

 

ピアノの音はSA-12 OSEに変更されると、音が地味で控え目になったと錯覚するほどS/N感が向上して、静けさが増しています。チェロは弦の細かい響きが増えて存在感が出てきました。ボーカルの音像はシャープに、音にツヤが乗ります。

 

続いて、アンプもPM-12からPM-12 OSEに変更し、OSEモデル同士の組み合わせで再生すると、ピアノは輪郭がクッキリとして奥行き感が出てきました。チェロ協奏曲では音色がなめらかになり、空間が左右に広がります。ボーカルは生き生きとして明るい音色になり、ベースの制動力が増して低音が下まで伸びました。

 

ペアで70万円と考えるとかなりいい音に思えますが、試聴に使ったB&Wのスピーカーがハイエンドなので、実際のシステム価格は400万円を超えています。しかし、35万円のプリメインアンプで1本200万円のスピーカーをいい音で鳴らせる事実が驚き。普通ならセパレートアンプと組み合わせるべき相手なのですが、それをドライブできる実力を持っています。これならPM-12 OSEにどんなスピーカーを接続しても安心でしょう。SACDプレーヤーは最近、新製品が登場していなかったので、トランスポートとしても貴重で、本機のデジタル出力を他のDACに接続できます。

 

今回の試聴で、デジタルの時代になっても、オーディオは素材をグレードアップしたりパーツを高品質のものに変えたりすることで、確実に音質が向上することを実感できました。オーディオシステムを買い替えようと検討している方は、OSE仕様のマランツ12シリーズをぜひチェックしてみて下さい。

 

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