アクションカメラの代表格として名高いGoPro。最近ではYouTubeの撮影はもちろん、映像作品の制作でも使われることが増えており、撮影シーンの幅を広げてくれるカメラとして注目が高まっています。みなさんも街中でGoProを持って撮影している人を見かけることが増えたのではないでしょうか。
そんなGoProシリーズから、2023年9月に「GoPro HERO12 Black」(以下、HERO12)が新しく発売されました。販売価格はGoPro公式ECサイトで税込み6万2800円です(2023年11月1日現在)。
今回はGoProさんから製品を提供してもらい、作例多めでレビューをしていこうと思います。
Bluetooth対応、手持ちの三脚が使えるなど利便性が向上
まずは概要をみていきましょう。
GoPro HERO12 Black | GoPro HERO11 Black | |
サイズ | 幅71.8×高さ50.8×奥行き33.6mm | 幅71.8×高さ50.8×奥行き33.6mm |
本体重量 | 154g(カメラ本体+マウントフィンガー+バッテリー) | 154g(カメラ本体+マウントフィンガー+バッテリー) |
イメージセンサー | 1/1.9インチCMOS | 1/1.9インチCMOS |
防水性 | 10m(保護ハウジングありの場合60m) | 10m(保護ハウジングありの場合60m) |
マウント | マウントフィンガー、1/4-20UNC(三脚ネジ) | マウントフィンガー |
動画解像度 | 最大5.3K | 最大5.3K |
静止画解像度 | 最大27.13MP(5568×4872px) | 最大27.13MP(5568×4872px) |
前モデルからのアップデートに、HDR撮影が可能になったことや10bitカラーによるLog撮影ができるようになった点、またBluetoothでのオーディオ拡張によってアップルのAirPodsやBluetoothイヤホンをワイヤレスマイクとして利用できるようになった点が挙げられます。
これによってカラーグレーディングの柔軟性向上や、外部マイクを使っていたユーザーにとって利便性が増したといえるでしょう。
HERO12からは新たに、本体底部に三脚を取り付けることができるマウント(1/4-20UNC)も搭載されました。一般的な三脚にも取り付けられるようになったことで、すでに手持ちの三脚とも組み合わせて使えます。
また本体はこれまでのブラックカラーと異なり、濃いグレーのカラーにGoProのロゴと同じ水色の斑点のようなものが散らされているあしらいになっています。使っているとどうしてもついてしまう擦り傷が目立ちにくいカラーは、個人的に気に入っています。
HERO12と旅に出てみました
今回香港へ旅行に行く予定があり、一緒に持っていくことにしました。
本格的な映像機材となると荷物も嵩張りますが、HERO12はコンパクトに鞄に入れて持ち運べるので便利です。あとは元々の設計がアクションカムとしてタフなのも、vlogカムにはない特徴。もちろん破損などないように持ち運びますが、「丁寧に扱わなければ……」と気疲れすることがないのは気持ちが楽になりますね。
【マンション・市場の動画】
↑左右からそびえ立つマンションと商店
HERO12には4つの画角モードがあり、広い方からHyperView(12mm)、SuperView(16mm)、広角16〜34mm)、リニア(19〜39mm)が選択できます。
まずは、街の様子をHyperView(12mm) の広角で撮影してみました。高い建物が多く、標準画角のレンズでは収まりきらない景色もHERO12ならラクラク撮影できます。
香港の国土は東京都のおよそ半分ほどの大きさ。そのうち約6割を山地が占めており、わずかな広さの市街地に約700万人が集積して暮らしています。そのため建物は必然的に高層化を余儀なくされており、一般的なマンションも10階建ては当たり前。大型スーパーを建設する余裕もないことから、食料品や日用雑貨のお店は住宅マンションの1階部分に入居していることが多いです。
【露店の動画】
↑高い目線からの映像撮影も片手でラクラク
純正アクセサリの「Shorty」を使って、目線より高いところでカメラを構えてみました。ジンバルに載せた一眼レフやvlogカムは、その重さから高いところでの撮影はなかなか難しいですが、GoProは軽さと機動性のよさゆえに人間の目線では見られない画角で撮影ができるのもおもしろいポイントです。
ところで街を歩いていて気づいたのですが、香港の建設現場では鉄骨の代わりに竹を組んで足場を作るところが多いようです。崩れたりしないのか心配ですが、どこも同じやり方で足場を組んでいたのできっと大丈夫なんでしょう。
【高い建物をぐるりとする動画】
↑超広角で高い建物を撮るとダイナミックに
旅行先では観光地巡りも楽しいですが、その土地の暮らしを追体験できるような過ごし方もおもしろいものです。動画を撮りながら街を歩き、自宅に戻った後に録画を見てみると、現地で歩いているときには見えなかった景色が見えるのもあり結構よいです。
【市場の中の動画】
↑現地に暮らす人たちが集う場所へ
【野菜の動画】
↑野菜は基本的に量り売りが多いみたい
【街角の動画】
↑香港のスクランブル交差点も、人で溢れている
街中などの明るい場所であれば、夜間の撮影に際してもノイズは気にならない程度です。写真と異なる映像のいいところは、音声も一緒に撮影できる点だと感じられました。動画内で聞こえてくる「カチカチカチ」という音は信号の音です。この音を聞くと香港を思い出す! という人もいるくらい特徴的な音で、自宅に戻った後もその音を聞けるのは懐かしい気持ちになりますね。
実際に使ってみて、ここがよかった4つのポイント
ここまで作例をいくつか見てきましたが、使っていてよかったポイントもお伝えします。
1.バッテリー性能の向上
HERO12では5.3K60fpsの設定の場合、フル充電のバッテリーでは約70分間の撮影が可能とされています。前のモデルであるHERO11は約35分だったため、およそ2倍の撮影に耐えうるようになりました。常に最高画質で撮影したい! というユーザーばかりではないかと思いますので(私もそのうちの一人です)、5.3K30fpsなら1.5時間以上、1080p30fpsであれば2.5時間以上連続で録画できることを申し添えておきましょう。
筆者の場合は1日を通して動画の撮影をするというわけではなく、写真を撮ったり・動画を撮ったりとバランスよく使っていたこともあり、1日を通してバッテリーの心配をする必要はありませんでした。
2.手持ちでの安定さ
【市場の中の食堂の動画】
↑片手に荷物を持ちながらの撮影でも、この安定さ
やはりアクションカムに求められるのは、ハードな動きにも耐えられる安定さ。スマートフォンで撮影できる動画も高画質化が進んではいますが、片手で持ちながら撮影した際の安定感は、まだまだHERO12に軍配があがりそうです。
とはいえ、広角で撮影する際には歩行に伴う縦揺れもみられます。本体を直接手持ちで撮影する際には撮影モード「リニア」で揺れを抑えるなどするとよさそうです。
3.スマートフォンでの操作も可能に
記事内でご紹介した動画は、すべてGoPro公式のアプリである「GoPro Quik」を使って編集しました。スマートフォンへBluetooth経由で動画を転送でき、アプリ内で編集まで完結することができます。
動画のバックグラウンドに音楽を乗せることもできますが、ライブラリは全体的に海外感のある楽曲が多かったため、必要に応じて別アプリでの編集を組み合わせるなどで満足度の高い映像制作ができそうです。
アプリ機能の中で最も便利だと感じたのが、あとからフレームを選択できる機能。ひとまずHyperViewで超広角の映像を撮影しておきながら、あとから広角でエクスポートをする、という手法を取れます。逆に広角で撮影しておいたデータからHyperviewへは変換できないため、この旅中はHyperviewで撮影することが多い結果となりました。
一般的なvlogカムや一眼レフカメラなどで焦点距離の異なる映像を撮りたかったら、レンズを交換して再度撮影する必要がありますが、GoProなら1回の撮影で済んでしまうというのは驚きです。
なお、アプリはGoPro公式が提供していることもあり、動画の最後に「GoPro」というロゴを入れることができるのは“公式感”が醸し出されて、格好いいなと個人的には感じています。
4.自宅でもWebカメラとしても活躍
「GoProは買ったけど、そんなに頻繁にお出かけや旅行に行くわけではない……」という方も安心です。
GoProから提供されている公式アプリを利用すれば、Zoomなどのweb会議でGoProを外付けカメラとして利用できます。
USB Type-Cのケーブル1本、バスパワーで動作するので接続も簡単です。今は大体のパソコンにWebカメラが搭載されていますが、ワンランク上の映像体験を楽しんでみてはいかがでしょう。
発熱は改善の余地あり。撮影し出すとアクセサリもほしい
これまでのモデルでも言及されていることが多かった排熱問題は、まだ解決までの道のりは長そうです。
今回お借りしている期間には最長10分ほどの撮影しかしませんでしたが、それでも撮影後は本体が熱を帯びている状況でした。また撮影時だけではなくスマートフォンアプリ(Quik)と接続して動画を転送している間やWebカメラとして利用している際なども発熱しており、この発熱が本体やバッテリーに及ぼす影響などが心配になりました。
もうひとつ、HERO12本体のみの購入では、手持ちに便利なロッドなどは付属してきません。本体をそのまま手持ちで撮影することもできますが、さまざまなアクセサリを組み合わせることでより快適に撮影できます。
ただし、HERO12からは三脚ネジが搭載されているので、通常のミニ三脚やゴリラポッドなどを組み合わせてもいいでしょう。このあたりの柔軟性の高さはうれしいところです。
筆者は旅先の景色を収めることを中心に想定し、純正アクセサリの「Shorty」(税込6400円)を購入しました。開けば三脚になる部分は閉じれば持ち手となり、グリップ性が増すことで安定して撮影ができるようになりました。
やはり間違いないモデル。初めての一台や別の製品から買い替えにピッタリ
連続撮影時間が前モデルと比べて2倍近くまで増加したことに加え、HDR撮影の搭載やLog撮影が可能になったことなど細かな点がアップデートされたGoPro HERO12 Black。前モデルを所持しているユーザーにとっては買い替えを決断するほどのビッグニュースはなかったかもしれませんが、これまで別のアクションカムを使っていたユーザーや、初めて購入を検討するユーザーにとってはGoProの楽しさを堪能させてくれる、そんな一台だと感じました。
これからの秋の行楽シーズンの思い出の記録に、またウインタースポーツの撮影を楽しむために、ぜひ手にとってGoProの楽しさを実感してみてはいかがでしょうか。
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