少し前の話ですが、『エスキモーに氷を売る』や『100円のコーラを1000円で売る方法』というタイトルの本が話題になりました。難問の答えを知りたいので、つい読んでみたくなりますよね。
商品を「便利だ」「欲しい」「買いたい」と思わせるには、ちょっとした工夫やアイデアが必要です。たとえば、「満腹の人でも食べたくなるカレーライス」というものが実在します。どんな方法で作られたものか、あなたは答えることができますか?
なぜそのカレーは満腹でも食べたくなるのか
回答例として、「最高級のスパイスと具材を使っている」があると思いますが、不正解です。「三ツ星シェフが作っている」も不正解。また、「完食すれば1万円がもらえる」といった回答も不正解です。
正解は、『ひらめきスイッチ大全』(サンクチュアリ出版・著/サンクチュアリ出版・刊)という本に収録されているので紹介します。
ある大学で、学生たちをあつめて実験がおこなわれました。教室には、大量のカレーライスとそれを作ったという見知らぬ女性が待っていました。「このカレーを食べたい人は?」と聞くと、誰も「食べたい」とは答えませんでした。
なぜなら、学生たちはお昼ごはんを食べたばかりだったからです。ところが、カレーを作った女性にいろいろ質問をしていくうちに「アメリカで野球をしている『一朗』という名前の息子さんがいる」ことが判明します。
カレーを作ったという見知らぬ女性は、イチロー選手(本名:鈴木一朗)のお母さんだったのです。満腹だったはずの学生全員が「そのカレーを食べたい!」と前言撤回しました。
考えて作ったものだけがいいわけじゃない!
一生懸命に考えたからといって、優れたアイデアが思い浮かぶとはかぎりません。
あるものに注目し、「どうしたら良くなるだろうか」「どんな工夫ができるだろうか?」と詰めて考えていく。
すると、その反動からか、注目していない部分がおそまつになってしまうことがあります。(『ひらめきスイッチ大全』から引用)
たとえば、フロントホックブラは、1978年にワコールが発売して大ヒットしました。これはワコールにとって意外な結果でした。ブラジャーのフロントホック機構は、宣伝ポスターのうしろ姿を美しくみせるために開発されたからです。
当時は、非売品。つまり「売りたい」と考えずに作ったものが、年間280万枚も売れたわけです。ブラジャーのデザインや素材や従来のホックを改良することばかり考えていては、「フロントホック(前留め)」を思いつくことはできません。
驚くほど簡単に問題解決するアイデアとは
大都市の駅には、乗車キップを確認するための自動改札機があります。改札機の電子マネー対応は、まさに革命的でした。あのスムーズさには快感すらおぼえます。いまでも自動改札機に電子マネーをかざして通過するのが「楽しい」と感じている人は多いのではないでしょうか。
電子マネーの「Suica(suica)」「PASMO(パスモ)」を普及させようというとき、ある問題が浮上しました。
電子マネー対応の改札機は、ピッとかざしたほんのわずかな間に複雑な運賃計算をしているのですが、路線が入り組んでいる駅ではとくに計算が難しく、時間がかかってしまうんだそうです。(『ひらめきスイッチ大全』から引用)
コンピューター処理が追いつかなければ、エラーが発生して、ゲートを通過できず、電車に乗り遅れてしまいます。もしも、あなたが自動改札機の開発者だったら、どうやって解決しますか?
自動改札機の台数を増やす? コンピューターを高性能なものに交換する? 処理用ソフトウェアを改良する?
もっと簡単な方法があります。「改札機を長くする」です。自動改札機の読み取りセンサーからゲートまでの距離を長くすることによって、処理時間を稼げるというわけです。「問題解決の本質」を学ぶことができるエピソードだと思いました。
(文:忌川タツヤ)
【参考書籍】
ひらめきスイッチ大全
著者:サンクチュアリ出版
出版社:サンクチュアリ出版
ダ・ヴィンチ、エジソン、ジョブズから任天堂、ユニクロまで、古今東西のあらゆるアイデアのひらめき方を一冊の本に集めました。アイデア出しに行き詰まったとき、直感にしたがって好きなページを開いてみてください。あなたは考えもしなかったひらめきを得ていることでしょう。この本は、「アイデア論」ではなく、「その場ですぐに試せるひらめき方」だけを225個、集めた本です。手元に1冊あるだけで、限りない勇気をくれます。
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