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2017/5/21 15:00

猫カフェで感じる「猫好きのジレンマ」とは?

ペットショップや猫カフェで、猫たちを「かわいい」と感じると同時に、狭いところに閉じこめられている状況を「かわいそう」と感じる。猫好きのジレンマという心理状態です。
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猫好きの苦悩

ジレンマ、ディレンマ (英語: dilemma) とは、
ある問題に対して2つの選択肢が存在し、そのどちらを選んでも何らかの不利益があり、態度を決めかねる状態。

(Wikipediaから引用)

 

ペットショップや猫カフェにおいて──

 

「かわいい」という享楽的な感情を優先することは、囚われている猫たちの現状を、見て見ぬふりをすることになります。ごまかしです。

 

つまり、猫を愛している立場でありながら、猫を裏切ることになるわけですから、猫好きであるがゆえに罪悪感が生まれます。

 

「かわいそう」という倫理的な感情を優先することは、猫好きにとって生きる楽しみを放棄することになります。絶望です。

 

つまり、猫と戯れたいという感情を押し殺し、心が満たされない日々を送るわけですから、猫好きであるがゆえに後悔が残ります。

 

猫好きは罪深い存在なのか?

神よ。告白いたします。

 

わたしは、猫カフェに遊びに行ったことがあります。

 

享楽を目的として、神の子であるニャンコたちが囚われている場所へと、足を踏み入れてしまったのです。

 

そして、あろうことか金銭と引き換えにして、神の子であるニャンコたちにお触りする権利を得ました。

 

はるか昔、神は猫好きの民たちに「地上の楽園」を与えると約束したといいます。

 

猫カフェは、まさに猫好きの民にとって楽園のような場所です。

 

旧約聖書に記述があるPromised Land(プロミスト・ランド)とは、現代日本における猫カフェのことかもしれません。

 

猫カフェのジレンマ

と、いうわけで。

 

猫好きであるがゆえのジレンマを乗り越えて、猫カフェに行ったのですが──。

 

わたしは、新たなジレンマに悩まされることになりました。

 

「猫を触りたいけれど、触れない」というジレンマです。

 

猫カフェのニャンコたちは、毎日のように見知らぬ人間に触られて、多大なストレスを感じているのではないか。

 

わたしが触ることで、つらい思いするのではないか。

 

猫好きを自認するならば、触るのではなく、ただ眺めるだけでガマンするべきではないか。

 

たとえ利用料金を支払っている立場であっても、そのような態度こそが、猫好き紳士あるいは猫好き淑女としてのノブレス・オブリージュではないだろうか。

 

このように考えて、わたしは猫カフェでニャンコに触ったことがありません。

 

しかし、猫カフェを運営している側も、その点についてはしっかりとした考えを持っているようです。

 

ニャンコが働ける場所。それが猫カフェ

『ねころび。』(学研パブリッシング・編集/学研プラス ・刊)は、東京都池袋の猫カフェ「Cat Cafe ねころび」で働いている13匹の猫スタッフたちの写真集です。

 

「Cat Cafe ねころび」では、猫はスタッフ(従業員)であると位置づけているようです。

 

写真集『ねころび。』を読むと、人間のスタッフがニャンコたちを決して「見せもの扱いしていない」ことがよくわかります。

 

その証拠に、「Cat Cafe ねころび」では抱っこ禁止です。

 

「お触り行為」についても、お客はかならず石鹸とアルコールで消毒することを義務付けられていますし、寝ているニャンコを起こしてはならないルールを徹底しているようです。

 

写真集『ねころび。』には、猫スタッフとして育てるために「子猫を引き取る」という記述があります。

 

じつは、環境省の調べによれば、殺処分される野良猫のうち75%が子猫であり、1年間で約4万5千頭の子猫が殺処分されています。

 

つまり、引き取られた子猫が猫カフェで働くことは、そのニャンコにとって不幸や苦役であるとは限らないわけです。

 

猫カフェで正規雇用の猫スタッフとして働くことは、身寄りのないニャンコたちにとっての自立手段なのかもしれません。

 

ようやく、わたしは「猫好きのジレンマ」から解放されました。

 

今度こそ、猫カフェに行ったときには、勇気を出してニャンコを触らせてもらおうと思います。

 

(文:忌川タツヤ)

 

【参考文献】

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ねころび。

著者:学研パブリッシング (編集)

出版社:学研プラス

※この商品はタブレットなど大きいディスプレイを備えた端末で読むことに適しています。また、文字列のハイライトや検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
東京・池袋にある猫カフェ「Cat Cafe ねころび」。そこでは猫スタッフ13匹が、ケンカしたり恋したり、感情豊かに毎日働いています。そんな彼らの日常写真に加え、撮りおろし写真を多数収録。ニヤリと笑えてホッコリできる「ねころび」初写真集。

 

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