本・書籍
2015/6/5 0:00

人狼とSNSの意外な共通点とは?

人狼というゲームがある。10人前後のプレイヤーの中に、人狼が2-3匹紛れ込んでいる。人狼は人間を食べてしまうので、早く見つけ出して処刑しなくてはならない。毎日1人を選んで処刑しないとならない。さあ誰が人狼だ? 誰を殺す? ちゃんと人狼を殺さないと、今晩村人の誰かが食べられてしまうんだぞ……! かいつまんで説明するとこういうゲームである。

 

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私、嫌われてるの!?

 

私も友人らとこのゲームで遊んだことが2度ある。なぜか2度とも私は人狼だった。つまり見つけられると殺される立場なので、必死に村人のフリをしてその場を取り繕わなくてはならない。しかし2度とも初日に「お前がアヤシイ!」と皆に疑われて処刑されてしまった。皆に「お前を殺す!」と冷たい目で言い放たれたのが哀しくて悔しくていじけてしまった。

 

2度も初日処刑されたと言ったら、人狼が得意な男友達は意地悪くこう言った。

 

「それ、嫌われてるんじゃないの?」
「違うもん! ただのゲームだもん!」

 

そう言い返したけれど、実は私もそう思ってスネていた。私って、一緒にゲームしても面白くないから、皆にのけものにされちゃったんじゃないの? と……。

 

 

プロフィール設定が大事

 

そんな時「『人狼ゲーム』で学ぶ十億ウェブ時代の心理交渉術」という本を見つけて読んでみた。SNSと人狼は似たところがある、という興味深い内容である。著者のしんざきさんによると、SNSはプロフィールをきちんと設定していたほうが、信頼されやすいという。そして人狼ゲームもまた、自分の立ち位置を明白にしている人のほうが信頼されるのだと。

 

確かに、プロフィールは大事である。名前も顔も職業も伏せて「ひとりごとつぶやいてます」などとふわっとした自己紹介しかないアカウントだと、その人がどんな人かわからない。逆に「あれもこれもやってます。そして、あれもこれも好きです!」と羅列しすぎているアカウントも一体何が主軸なのかわからない。人狼でも「私はこういう人です」と言いきれる人ほど処刑されにくいのだという。

 

 

発信することの大切さ

 

私は人狼ゲームで何を言ったらいいかよくわからなくて、ただニヤニヤしてその場をごまかしていた。何も発言せずにヘラヘラしている者がいたら、確かにアヤシイ。だから処刑されてしまったのだ。「私は人狼じゃありません!」などと(たとえそれが嘘であっても)主張して、ゲームに勝つために論議に加わっていかなければならなかったのだ。

 

人狼ゲームでは「へたなことを言って処刑されるのが怖い」と逃げ腰になる人がいる。そういえばSNSにも「何を発信したらいいのかわからない。炎上が怖い」という人がいる。とはいえ、やみくもにひとりごとを書いても反応が来るわけではない。著者はこれに「とりあえず今自分がわかっていること、自分が見えていること」を発信しようと呼びかけている。自分には当たり前の光景が、他の人には新鮮な情報かもしれないからだというが、すごく頷ける。当事者の人が自分の立ち位置から発信するものにはたくさんの情報が含まれているから反応も大きいのだ。

 

 

嘘を見破る技術

 

人狼ゲームの面白さは、何人かが嘘をついているというところだ。一体誰が何の目的で嘘を言っているのか、それをじっくり観察し、僅かな手がかりを基に看破できた時の快感は、かなりのものだという。しかし口が達者なプレイヤーが嘘をついた場合、参加者の多くがそれに振り回され、ゲームが間違った方向に進んでしまうことも多々ある。著者はこれも、SNSにおけるデマの拡散に良く似ていると述べている。

 

確かに誰かが緊急情報をツイートしていたら、そのネタの裏も取らずに速攻でリツイートしてしまう人はとても多く、そのためにデマが拡散されていく。私は一応その人のプロフィールも調べ、信頼できそうな人である場合にしかリツイートはしないのだけれど。嘘つきを探す人狼ゲームに慣れれば、ネットのデマ情報も見破りやすくなるというのはその通りだろうなと思う。

 

しかしこの人狼ゲーム、面白いのだけど、やりすぎたり観すぎたりすると、人の発言の裏の裏まで読もうとするクセがついてしまって困ることがある。私には最近、仲良しの男の子がいるのだけれど、「彼は一体何が目的で私に近づいているのだろう。お金? それとも何?」などと勘ぐりまくってしまう。せっかく向こうが「ただ会いたいから会ってるだけだよ!」と言ってくれているというのに……。

 

 

(文・内藤みか)

 

 

【文献紹介】

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『人狼ゲーム』で学ぶ十億ウェブ時代の心理交渉術
著者:しんざき
出版社:デジカル(インプレス)

ミクシィ、ツイッター、フェイスブックを始めとしたソーシャルメディア上で私たちはどうやって信頼を、影響力を育てていけばいいのでしょうか? 「人狼ゲーム」は、欧米生まれのちょっとダークなカードゲーム。 話し合いと、騙しあい。説得する、説得される。信じる、信じない。 「会話」と「コミュニケーション」が中核になるプレステ3でもWiiでも味わうことの出来ない世界。 「人狼ゲーム」が上手くなるということは、まさに「コミュニケーションが上手くなる」 本書では、人狼ゲームに触れながら、人狼ゲームというテーマを通して、「ウェブにおける、上手なコミュニケーションの取り方」を突き詰めます!

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