マーク・ザッカーバーグ(Facebook創業者)。セルゲイ・ブリン、ラリー・ペイジ(Google共同創業者)。マイケル・デル(DELL創業者)。共通するのは、かれらが「ユダヤ人」であることだ。
世界経済はユダヤ人に支配されている!?
ユダヤ人は「商売がうまい」とよく言われる。たしかに、ロスチャイルド財閥を筆頭に、世界的な大企業の創業者が「ユダヤ人」であることは多い。
わたしたちの身近なところでは、コストコやスターバックスの創業者がユダヤ人だ。映画業界ではワーナー・ブラザーズ、ユニバーサル、20世紀フォックス、パラマウントの上位4社がユダヤ人創業者の企業だ。ウォルト・ディズニーはユダヤ人ではないが、創業者亡きあとの社長を務めたマイケル・アイズナーはユダヤ人であり、深刻な業績不振を改善した中興の祖として名が高い。
ついでに言うならば、映画監督のスティーブン・スピルバーグやスタンリー・キューブリック、スパイダーマンやアイアンマンの原作者であるスタン・リーもユダヤ人だ。
アパレル業界ではリーバイスやGAP、化粧品業界ではマックスファクターやヴィダル・サスーンなどが挙げられる。ちなみに、有名なドモホルンリンクルはユダヤ企業ではない。再春館製薬所のブランド名であり、創業者は熊本県民だ。
ユダヤ人が生き延びられた理由
ユダヤ人は、アダムの末裔であるアブラハムを父祖とするが、特定の人種ではない。歴史的な経緯により、かれらの目の色や肌の色、遺伝する身体的特徴はさまざまであるからだ。
「日本人」「中国人」と言うときには、たいていは国の出身者を指す。しかし「ユダヤ」は国の名前ではない。イスラエルはユダヤ国家だが、1948年に建国されたばかりなので、世界各地に生きる約1300万人のユダヤ人(ユダヤ系○○人)の多くはイスラエル出身者ではない。
そもそも、ユダヤ4千年の歴史のうち、前半の2000年間については多くの時を被支配階級としてすごし、ローマ帝国に滅ぼされてからイスラエル建国にいたる後半の約2000年は、国家をもたない「ディアスポラ(離散)」の民であった。経緯については割愛するが、いわゆる「厳格な教義ゆえの文化衝突」や「金貸し業に対する蔑視」などによって、ロシアやヨーロッパ全土のキリスト教徒から迫害を受け続けてきたが、かろうじて断絶せずに生き抜いた。
「人にトラブルが伴うのは、あたかも鉄がさび付くように避けられない」
“Trouble is to man what is rust to iron.”(『ユダヤ人ならこう考える!』から引用)
ユダヤ人とは何か? 理不尽な迫害、農地所有の禁止、移動や職業の制限、ひときわ高い人頭税の義務などの不利な立場にありながらも、かれらが「ユダヤ人」としてのアイデンティティを保ち続けられたのは、どのような境遇にあっても「律法(トーラー)」「安息日」「コーシェル(食の禁忌)」を実践してきたからだと言われている。
ユダヤの格言を「英語」で覚える
ユダヤ人にとって、お金は自分たちの安全を確保して生存し、生き延びるための欠くことができない手段であり、自己防衛するための強力な武器でもありました。
(『ユダヤ人ならこう考える!』から引用)
16世紀に制定されたユダヤ法典には「富を求めるのは、人間の本質である」と書いてあるそうだ。『ユダヤ人ならこう考える!お金と人生に成功する格言』(PHP研究所・刊)の著者である烏賀陽正弘さんは、東レ株式会社で国際ビジネスに従事していたときに、商談の場でさまざまな「ユダヤの格言」を実際に耳にしたという。取引相手の注意をひいたり理解をうながすためには、気のきいた格言や警句が欠かせないからだ。
とくにユダヤの格言は、商売(カネ)や人間関係にまつわるものが多いので、繰りかえし覚えることによって自然とユダヤ式思考法が身につくかもしれない。著者の烏賀陽さんは、就活面接のときに「座右の銘を英語で答えなさい」と言われて不意をつかれたというから、つぎに紹介するものを覚えておいて損はない。
つねに疑え。人を信用するな
「鍵は正直者だけを防ぐ」
“Locks keep out only the honest.”(『ユダヤ人ならこう考える!』から引用)
金庫に鍵をかけても、悪党がその気になればいつか破壊されてしまう。つまり「鍵」というものは気休めにすぎず本来なんの役にも立たない。損をしたくなければ他人頼みにせず、念には念を入れて、用心を重ねすぎることはないという格言だ。
節約して貯蓄せよ
「ベーグルを全部食べてしまったら、穴しか残らない」
“If you eat up your bagel, you will have nothing left but the hole”(『ユダヤ人ならこう考える!』から引用)
好物といえども一気に食べてしまってはいけないという、日々の倹約をうながしている格言だ。
ちなみに、ベーグルはユダヤ人のパン屋が考案したという説が有力だ。19世紀末にヨーロッパ大陸からやってきたユダヤ移民たちが北アメリカに持ちこんだという。
自信こそが生きる原動力
ユダヤ人のビジネスマンに対して「神様は、なぜ、ユダヤ人ではない人をつくったのだ」ときいたら、
「おれたちの売っている物を買う人が、どうしても必要だからさ」
(『ユダヤ人ならこう考える!』から引用)
と答えたという。それくらい気負って相手をのみこむつもりで商売をすべきという格言であって、すべてのユダヤ人が他人を見下しているわけではない。
「うぬぼれなければ、一体、誰がほめてくれるのか」
“If we did not flatter ourselves, nobody else could.”(『ユダヤ人ならこう考える!』から引用)
(文:忌川タツヤ)
【文献紹介】
ユダヤ人ならこう考える!お金と人生に成功する格言
著者:烏賀陽正弘
出版社:PHP研究所
財界から学者、医師、弁護士まで、各界で台頭するアメリカ・ユダヤ人たち。彼らの成功の陰に、民族特有の思想というべき格言があった。「信仰」「商売」「交渉」「教育」「金持ちと貧乏」「賢者とバカ」など、人生やビジネスの難問を、どう考え、いかに対処するのか。例えば、「金儲け」について。「お金が全てではないという連中に限って、お金が貯まらない」「貧乏は50の疫病にかかっているより悪い」など、リアリズムに徹するユダヤ人らしい格言である。一方で、「神を信じるのはSEXと同じほど必要だ」など、信心深い側面もうかがえる。さらに、ウィットとペーソス溢れる名言の数々が、あなたを強く、賢く、磨きあげる。「アイディアに税金はかからない」「10回尋ねるほうが迷うよりまし」「返答しないのも立派な返答」……長年、国際ビジネスの現場で彼らと折衝してきた著者だからこそ知り得るユダヤの格言を、エピソードたっぷりに紹介。英語表現も覚えて、今日から座右の銘に!