パパにとって、子育てや家事は「足かせ」ではありません。成長するチャンスです。
『新しいパパの働き方』(NPO法人ファザーリング・ジャパン・著/学研プラス・刊)という本があります。イクメンよりも実質本位な、「育キャリ」という働き方について解説しています。
「育キャリ」という働き方
何よりも仕事を優先する「バリキャリ」や、子どもが小さいうちはキャリアにこだわらない「ゆるキャリ」とは違うキャリアのあり方として、「仕事にも育児にも精一杯全力で取り組むことを目指すキャリア」を「育キャリ」と名づけました。
(『新しいパパの働き方』から引用)
内閣府がまとめた男女共同参画白書によれば、第一子が生まれたあとに「仕事を辞める」ことを希望する女性が約26%に対して、実際には約40%が退職しています。つまり、共稼ぎをしたいママが「出産後の望まない退職」をしている現実があります。
おなじく、第一子が生まれたあとに「収入を増やしたい」と希望している男性が約56%に対して、実際に増えたのは約19%だった……という厳しい現実もあるようです。ママが子育てのために仕事を辞めれば、世帯収入が減る。そして、パパの収入が増えなければ、ますます生計が苦しくなります。
第一子を授かったあとも共働きをやめなくて済めば、女性の自立性や職業キャリアは失われることがなく、余裕のある世帯収入を維持することができます。男性が積極的に家事・育児に関わる「育キャリ」のメリットです。
「上昇志向パパ」型の育キャリ
「自身のキャリアアップに積極的で、子育てを理由に仕事の成果を落としたくないと考えているパパ」のことです。
(中略)
仕事を効率化し、すき間時間をつくっては、その時間を育児・家事に充てて、毎日フル回転で頑張っています。(『新しいパパの働き方』から引用)
上昇志向パパは、定時退社にはこだわらないが、なるべく早く帰るために仕事をこなします。なぜなら、18時から21時のあいだを「子育てのゴールデンタイム」と定めているからです。一緒に晩ごはんを食べて、会話して、お片づけして、お風呂に入って、子どもを寝かしつけることは、育キャリパパの喜びです。
子育ての「ゴールデンタイム」に間に合うように帰宅するためには、徹底したスケジュール管理と優先順位づけを心がけます。育キャリを意識することによって、仕事の能率がアップします。
勤務先では、自分が育キャリパパであることをアピールします。ただし、それを理由にして仕事のパフォーマンスを落とさない。そうすることで「デキる人間」として社内評価が上がります。良いことばかりです。
「家庭志向パパ」型の育キャリ
子どもとパートナーを何より優先し、子育てや家事など、家庭の役割の多くを自分が担っていきたいと考えているパパです。
家庭志向パパは、我が子が通う学校のPTA活動や、地域のパパサークル、ボランティア活動などにも積極的に参加します。
(『新しいパパの働き方』から引用)
家庭志向パパは、定時退社にこだわります。有給休暇の多くを、子どもの行事参加のために使います。キャリアよりも家族にまつわるイベントを優先します。
子どもや妻にまつわる不慮の事態にそなえるため、仕事の「みえる化」を徹底します。家族のために早退したり休暇を取ったりするとき、同僚に引き継ぎをおこないやすくするためです。普段から「自分にしかできない仕事をなくす」ことによって、業務の属人化を防ぎます。育キャリの推進は、業務効率化や最適化にもつながるのです。
家庭志向といっても「仕事よりも家庭を優先する」のではありません。「得意先の接待」と同じくらいに「子どもの授業参観」を重要視します。夫として、父親として、ひとりの人間として誠実な生き方です。
育キャリがはかどる「3種の神器」
育キャリパパは忙しいです。家事と育児と仕事をうまくこなすためのマストアイテムを使いこなしましょう。
【最新家電】
多くの育キャリパパが使いこなしているのは、洗濯乾燥機、食器洗い乾燥機、ロボット掃除機です。自動で完結するので、忙しい毎日のスケジュールに組み込みやすくなります。料理が好きな育キャリパパは、スチーム式のオーブンレンジ、電気式フライヤー、ホームベーカリーなどを使いこなします。すべての生活家電と料理家電を揃えたとしても数十万円です。コストパフォーマンスの高い投資なので惜しむべきではありません。
【手帳・スマートフォン】
子どもの行事に欠かさず参加したり、積極的に家事をこなしたりする育キャリパパは「スケジュール管理」や「優先順位」をいつもチェックしています。使いやすい手帳やスマホのカレンダーアプリを活用しましょう。
【パパ友ネットワーク】
人脈(コネクション)が助けになるのは、ビジネスシーンだけではありません。良い医者のいる病院、すぐれた学習塾やスポーツ教室などの情報をキャッチアップしたければ、ママ友・パパ友ネットワークがいちばんです。なかにはシングルファーザー家庭で「育キャリ」を頑張っている人もいます。そんな人にとっては、気軽に情報交換したり相談できたりするパパ友ネットワークは、安心できるサードプレイスやセーフティーネットの役割を果たします。
子育てがしやすい世の中ではありませんが、理解のある民間企業や自治体はすこしずつ増えています。育キャリという働き方は、家族だけでなくパパ本人のワークライフバランスの質を高めるものです。お試しください。
【著書紹介】
新しいパパの働き方
著者:NPO法人ファザーリング・ジャパン
出版社:学研プラス
「家庭を大切にしつつ、仕事でも上を目指したい!」「仕事をおろそかにせずに、家庭重視の生活をしたい!」など、「育児と仕事の両立」を目指すパパのためのガイドブック。パパを取り巻く現状を解説しながら、「仕事も育児もあきらめない働き方」を提案する。