10年ほど前に吉本興業の、とある若手芸人にハマった事がある。劇場に足繁く通うのはもちろん、ライブ後は出待ちをして、一緒に写真を撮ってもらい差し入れを渡すという、今思うと若気の至りとしか言いようがない熱量と行動力。アイドルの追っかけと、ほぼ変わらない事をしていたこの頃「芸人さんと結婚したいな~」なんて、軽い気持ちでよく思ったりしていた。だが、そんな10年前の自分に正座をさせて「おまえにその資格はない。これを読めっ‼︎」と言いたくなる本を見つけた。
タイトル名はズバリ『芸人の妻たち』(太田プロダクション芸人妻・著/太田出版・刊)。有吉弘行・土田晃之・劇団ひとりといった売れっ子芸人を多数抱える太田プロダクション。通称「太田プロ」所属の「売れっ子一歩手前な芸人」の妻たちによる、夫との出会いやデート、結婚生活など赤裸々なインタビューが収録された本だ。この本には、年齢も職業もバラバラな8人の芸人妻が登場しているのだが、いくつかの共通点を見つけた。お笑い芸人という特殊な職業の夫を支える妻たちの実態をみていこう。
お金
例えば、知り合いから「お笑い芸人と結婚した!」と聞かされて、そのお相手がコレといったメディアや舞台に露出していない場合、私は思わず「生活できてるの?」と聞いてしまう気がする。この本に登場している妻たちもそうだ。まわりの人によくお金の心配をされるらしい。でも、芸人妻の共通点として基本的に「お金のことは心配していない。なんとかなる!」と、みんな超楽天的なのだ。
もちろん夫の不安定な稼ぎで家計が苦しかったり、審査が下りずなかなか家が借りられなかったりと苦労話もあったりするが、どの妻もその事がキッカケで夫とケンカになる事はほぼ無いという。「売れっ子じゃないのだから、お金は無いのが当たり前」「子どもができて今よりお金がかかるようになったら、その時はその時」と、清々しいほどあっけらかんとしているのだ。
夫の浮気
今年に入って、芸能界のあらゆるところで不倫だなんだと騒がしいが、本著では太田プロの芸人妻それぞれに「(夫の)浮気の心配は?」といった質問をぶつけている。
ここでの妻たちの回答がスゴイ。8人中3人の妻が「浮気をしたらし返す」と答えているのだ。中には「倍返しでし返す」と回答した妻もいて、半沢直樹もビックリのたくましさを見せつけている。他の妻たちの回答も「できごころなら墓場までもっていってほしい」「浮気をするときはその直前に1本電話をかけましょうということになっている」「(浮気の心配は)ない!」と断言したりと、表現はそれぞれ違うものの、芸人妻としての芯の強さと夫への信頼が感じられる回答ばかりだった。
芸人婚のメリット
有り金を全て使って後輩と飲んできても、夫が風俗好きな先輩と夜の行動を共にしていても、芸人妻はブチギレることなく寛容に受け止める。その懐の深さは同じ女性として、尊敬に値する。
そして「夫が芸人」というのはマイナスなことばかりではないと妻たちは言う。「話術があるからか、両親との付き合いが上手。仲が良い」「仕事の時間が不規則なので、ひとりの時間が持てる」「日常に笑いがいっぱい。ずっと笑っている」と幸せなエピソードも本著にはてんこ盛りだ。「結婚」になかなか踏み切れない人に、ぜひ読んでほしい。
最後に、上記の「浮気の心配は?」の他にも「自分の夫は売れると思っている?」といった質問も芸人妻それぞれに投げかけているが、こちらは8人全員「(売れると)思っています。」「信じています」という内容の回答。
さすが芸人妻である。
(文:凧家キクエ)
【文献紹介】
芸人の妻たち
著者:太田プロダクション芸人妻
出版社:太田出版
◆金なし、地位なし、安定性なし。そんな男と、あなたは結婚できますか? ――芸人の妻たちが、実際の結婚生活を赤裸々に語るインタビュー集!◆結婚できない男女必読!「理想の結婚」のかたちが変わる本。