10年ちょっと前、カリフォルニアのディズニーランドに行った時に、近未来の生活を紹介するアトラクションに立ち寄った。正確な名前は忘れてしまったし、スペースマウンテンやホーンテッドマンションに比べればはるかに地味だったけれども、かなり楽しめたのを覚えている。
ちょっと昔の人たちが思い描いた近未来の生活
このアトラクションのコンセプトは、カリフォルニアに住むごく普通の4人家族がさまざまな形で日常生活にIoTを取り入れていく様子を物語仕立てで見せるというものだった。ホンダの二足歩行ロボットASIMOも登場し、司会や家族役のキャストたちと絶妙な間のかけあいをするくだりもあって、予想外の見応えがあった。
あったら便利だろうな、というものが次から次へと紹介される。手を叩くだけでオン/オフの切り替えができるテレビやライト。テレビ電話機能がついた冷蔵庫。キーボードで打ち込むのではなく、音声だけで稼働するインターネットブラウザ。
そして今、このアトラクションで見たいくつかのテクノロジーはすでに実用化されている。しかも、想像をはるかに超える完成度で。
シリコンバレーのホットな話題
2014年、アメリカのシリコンバレーで大きな話題になったものがふたつある。ひとつはペットボトル入りの緑茶、もうひとつはアマゾンが発売したスマートスピーカー、“Echo”だ。ディズニーランドのアトラクション体験が響いていた筆者は、このエコーという新しいガジェットにものすごく惹かれた。
アメリカ三大ネットワークの夜のニュースや全米ネットの朝のワイドショー『Good Morning America』でもEchoの特集が組まれてスペックが詳細に紹介され、絶対に欲しいと思っていたのだが、当時はまだ日本語対応タイプは売り出されていなかった。
そんな中、たまたま仕事でアメリカに行く機会があり、実際にEchoに触れることができた。アメリカではすでに大手家電チェーンやホームセンター的なお店でも販売されていて、しかもアマゾン以外のメーカーもこぞって後続機を開発する状態が生まれていた。
実際に触れてみてまず思ったのは、声の自然さだ。Echoから流れてくるのは、かつてCNNの看板アンカーパーソンとして活躍したコニー・チャンを思わせる、ちょっとハスキーな女性の声だった。
当時の筆者が知っていたのは、EchoがAI搭載のスピーカーということだけ。実際に触ってみると機械以上の存在であることは実感できたが、これで何ができるのか? そして、何がどのくらい便利になるのか? こうした疑問にピンポイントな形で答えてくれる本がある。