AI(人工知能:Artificial Intelligence)の進化は加速する一方だ。
子ども用の玩具にAIを搭載しているロボットが登場し、AI家電と呼ばれる商品も劇的に増えてきている。完全なる自動運転の車が登場するのも、時間の問題だろう。
そんな中で、将来的にAIが私たちの仕事をすべて奪ってしまうのでは……などと危惧する声もある。私たちの暮らしは、AIによってどのように変わっていくのだろうか。
私など凡人の頭では到底想像ができない。ここはひとつ、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授と、前人未到の永世七冠の称号を得た羽生善治棋士との対談をまとめた話題の一冊『人間の未来 AIの未来』(講談社・刊)から、天才2人の考えを覗いてみよう。
棋士という職業はなくなってしまうのか?
昨年、将棋ソフト「PONANZA(ポナンザ)」が佐藤天彦名人に2戦2勝したニュースが大きな話題となった。AIの強さは、我々の予想を超えているようだ。だが、結果だけ見るとAIの圧勝だが、実際の対局の流れなどを見て、何か違和感などは生じないのだろうか。
「人間同士が対戦した棋譜と、コンピュータが対戦した棋譜に、人間から見て面白さとか自然さとかの違いはあるんですか?」という山中教授の問いに、羽生棋士はこう答えている。
現在のAIは、まだ時系列では処理していない、つまり対局の流れではなく、一手ずつその場面に応じた最も良い手を指していく。そこに流れがないため、人間にとって不自然さや違和感が生じることになる。羽生棋士いわく「AIが対戦した棋譜は美しくない」と感じるのだそう。ただし、最近では時系列をもAIに学習させようとする試みがあり、戦い方も洗練されてきているのだという。
また、AI同士が1日24時間対局し続けているサイトがあり、そこからどんどんと新しい棋譜が生まれている。そのため、もしも将棋ファンが「AI同士の対戦の方が面白い」と思うようになったら、棋士という職業もなくなる危険性があると羽生棋士。人間同士の対局をより魅力的なものとし、(将棋を指す上での)美意識を磨いていくこと、AI対局以上の価値を作り出していけるかが、今後の大きな課題なのだそうだ。
一方、山中教授がいる研究者や医師の世界では、AIをどのように位置づけているのだろうか。