ある朝の奇妙な行動
ごくごく平穏な朝。ハッピーが朝の見送りのためにタクシーに乗り込んできた。ところが、いつまでたっても外に出ようとしない。
どれほど頭やの喉元を撫でても、ハッピーは助手席から外へ移動しようとしない。Oさんは抱きかかえて外に出そうとしたが、Oさんの体に爪を立てて離れようとしない。明らかに、いつもとは違う。必死の形相で踏ん張ろうとしている。
Oさんは、何が起こったのだろうと不思議に感じていた。
次の瞬間、起こった出来事
Oさんが駐車場でハッピーと格闘していた間に起こった、一瞬の出来事だった。目の前にある道路を、ブレーキが制御できなくなったトラックが猛スピードで走り去り、その先の塀に激突したのである。
Oさんは仰天した。
近所の人たちが、ざわつきながら外へ出てくる。すると、ハッピーは爪を立てるのをやめて、さっきの必死さが嘘だったかのように、いつものように助手席に座っていたという。このとき、Oさんは「ハッピーが自分を助けてくれたのではないか」と思ったそうだ。
もし、いつも通りに外に出ていたら、トラックに衝突され、事故に巻き込まれていたかもしれない。ハッピーが必死に自分を引き留めてくれたことで、九死に一生を得たのである。
動物の予知能力の謎は解明されるのか
ちなみに、ハッピーのお見送りの儀式は今も続いているという。
既に紹介したように、事件が起こることを知っていたかのような動物たちの奇妙な行動は、災害が起こるたびに報告されている。都市伝説と化しているものもある。迷信だと否定する人もいるが、果たして迷信の一言で片づけていいものだろうか。
そもそも動物たちの身体の仕組みは、解明されていないことの方が多い。猫は、人間にはない驚異の跳躍力をもつ。本書にも紹介されているが、とんでもない距離を歩いて飼い主のもとに帰った猫もいる。
いつしか、こうした数々の行動の謎が解明される日を期待したい。ひょっとすると、大災害や事故から、動物たちが多くの人間を救う日が訪れるかもしれないのだ。
【著書紹介】
猫にまつわる不思議な話
著者:宇佐和通
発行:学研プラス
猫にまつわる不思議で心温まるエピソードを集めた物語集。「宝くじの番号を当てた猫」「人間の会話を理解する猫」「何千キロも旅をして飼い主のもとへ帰ってきた猫」など45話を紹介。あなたの飼っている猫も、こんなことしてませんか。