お金の教育論あれこれ
村上氏は物心ついた頃から、お金について実にオープンに、わかりやすく親から教えてもらっていたのだそう。なんと10歳のとき、父親から村上氏が大学を出るまでのお小遣いをまとめて一度にもらい、そのお金で初めての株式投資をしたそうだ。本書には明確な金額は書かれていなかったが、別のインタビュー記事を読むと、その額は100万円だったとか! 10歳の子どもに100万円とは、なんともスケールの大きな教育だ。その後村上氏は、日経新聞や四季報を読み込み、学びながら楽しくお金を増やしていったのだそう。
そういえば最近、「10歳のときに親から10万円を手渡され、『これから自分でこのお金を管理しなさい。毎月のお小遣いは、持っている総額の1%だ』というマネー教育を受けた」という内容のツイートを見かけて、衝撃を受けたばかり。
また、生活評論家・町田貞子さんの本にも「家庭は家族で経営する共同事業のようなもの。当然、家計は家族全員に公開した」と書かれていた。なんでも、今月どれくらいの収入があって、支出はどのくらいで、何に対してお金が多くかかったかなどをすべて記した家計簿を、子どもたちにも公開していたそうだ。交際費や医療費、税金に至るまで家計簿に書かれているので、子どもたちは知らず知らずのうちに社会の仕組みを学んでいたという。
こうした話を聞くと、やはり子どもにお金について教えるには、変に隠したりせず、実際にお金に触れ、知る機会を与えないといけないようだ。
値札(プライスタグ)をチェックせよ!
我が家の場合、ゲーム大好きな息子は、大きな買い物をすると「この○○は、Switchいくつ分?」とか、「この○○をいくつ買うと、ゲームソフトと同じ値段になる?」といった具合に、ゲームと比較して物の価値をはかろうとする。この考え方も間違いではないだろうが、もう少し別の方法でお金の価値を教えたいものだ。
『いま君に伝えたいお金の話』の中で村上氏が薦めているのが、値札(プライスタグ)をチェックすること。
あらゆるものには値段がついていて、値札に書かれている。同じ鉛筆なのに、こっちは1本60円、あっちは1本100円。この40円の差は何なのか? 2本セットになると、単に2倍の値段ではなく、少し安くなる。また、お店が変わると同じ商品でも値段が変わる。去年100円で売っていたものが、今年は50円になったり、反対に200円になったりもする。
そんな、季節や気候の変化、工場の場所、素材、世の中の流行り廃りなど、あらゆる理由が複雑に関わり合って、目の前の商品の値段が決められている。
「モノの値段は、ただの無味乾燥な数字ではありません。それは、世界の秘密を解き明かすひとつの鍵でもある」と村上氏。そのための第一歩が、値札をチェックすることなのだ。
実に面白く、今日から子どもたちに薦められる方法ではないだろうか。
食事代当てゲームでお金に強くなる!
もうひとつ、お金について学ぶとても良い方法が紹介されている。それが、村上家でよく行われているという「食事代当てゲーム」。
なんでも、外食したとき、会計をする前に食事代の合計金額を家族全員で予想、実際の値段にもっとも近い人が賞金をもらえるというゲームなのだそう。勝者になるためには、お店に行ったらまずはメニューを熟読し、価格を記憶する。さらには、なぜその値段なのかを自分で考えることで、覚えきれなかったメニューの値段を推測するのに役立つ。(詳しいゲームのルールは、ぜひ本書を参照してほしい)そして、あらゆる要素を踏まえて、合計金額を予想するのだ。
このように、ゲーム感覚で値段に親しみ、食事やサービスの質と価格の関係を考えることで、お金に強くなるのだそう。これはぜひ、真似してみたいアイディアである。
『いま君に伝えたいお金の話』は、子ども向けにやさしく書かれている本だ。だが、実際は大人も改めて勉強になることばかり。将来お金で苦労しない、させないために、親子で読みたい一冊である。
【書籍紹介】
いま君に伝えたいお金の話
著者:村上世彰
発行:幻冬舎
誰よりもお金に詳しい著者が、15歳に向けて書いたお金の本。生きるために貯金はどのくらい必要? 投資は、いつから、何を始めればいい? 仮想通貨はこれからどうなっていく? お金を増やす秘訣はある? 先行きが不透明な人生100年時代に、どんなふうにお金と付き合えばいいかを易しく伝えます。