大人でも怖い、失敗。過去には戻れないと知っていると余計に緊張してしまって、大事なところで失敗してしまうなんてことは多々ありますよね。日常のちょっとした失敗から仕事などでの大きな失敗まで、普通に生きていたら「私、失敗しないんで」なんて言える人はごくわずか!
『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』(大野正人・著/ 文響社・刊)は、漢字にフリガナがふられているので10歳以上なら楽しく読める一冊です。子ども向けと侮るなかれ。大人でも学べる偉人たちの失敗をたくさん教えてくれます。今回はそんな中から「あぁ〜これ子どものころに知っていれば報われてたわ!」というお話をご紹介していきます。
夏目漱石は、ロンドンで「ひきこもり」になった
夏目漱石といえば、多くの日本人に親しまれ、「先生」と呼ばれるような偉大な人ですよね。小説家としての印象が強いですが、実は英語の先生としても活躍していました。しかし、英語の勉強をするために渡ったロンドンで自分の英語が通じず、引きこもりになってしまったのです!
英語を研究するために、国からお金をもらい、わざわざイギリスまで行ったのに、結局何もできずに帰国した漱石。まさに、大失敗でした。
(『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』より引用)
その後、「小説を書くように」と友人から勧められ、心のモヤモヤを表現させて小説家として成功します。ロンドンから帰国後、ずっとモヤモヤしていたら、お札になるような偉大な人にはなれていなかったかもしれませんね。機転を利かせて、シフトチェンジできる「心」が大切だと教えてくれます。ちなみに夏目漱石のクセは、小説を書きながら鼻毛を抜くこと……! 当時の編集者さん、辛かっただろうな(笑)。
孔子は73歳まで生きたけど、生きている間は失敗続きだった
様々なビジネス書でも『論語』での名言が取り上げられている孔子ですが、この『論語』は本人が執筆したのではなく、3000人の弟子たちと長い旅をしていた際に話した言葉を、孔子の死後、弟子たちが一冊にまとめたものでした。
『三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る』とか『好きなことを仕事にすれば、一生働かなくてすむ』とか一度は聞いたことがある名言があるでしょう。しかし、孔子が生きている時には、政治家としても活躍できず、50歳を過ぎたころにチャンスが巡ってきても失敗してしまったのです。というのも、「正しい心によって国を作ることが、幸せになれる」と、戦争しまくっている中国で理想が高すぎることを唱えていたから。
孔子が目指す高い理想をもった国作りなどできるわけもなく、わずか3年で、国を追い出されてしまったのです。その後は、弟子たちとともに、新しくやとってくれる国を求めて旅を続けました。
(『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』より引用)
できるなら生きている時に評価してもらいたいけど、孔子の死後、300年たってから『論語』をもとにした「儒教」という教えが作られ、教育の軸となって今でも語り継がれているのです。
生きている間は「変なおじさんだな」と思われていたかもしれない人も、思いを貫いていくことで、何年も何千年も世界中で愛される人になれるって本当すごいこと。そんなことを思いながら、改めて『論語』を読んでみたいなと思ったのでした。
野口英世やピカソ、スティーブ・ジョブズなどが紹介されています
『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』には、他にも黒澤明監督から恐竜まで(笑)24名以上の失敗が掲載されています。ちなみに恐竜の失敗って! と思った方もいると思うので、ちょろっとご紹介しますね。
大きな体で、地球のしはい者となった恐竜ですが、ぜつめつというまさかの大失敗もまた、体の大きさによって、まねいてしまったのです。
(『失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!』より引用)
確かに(笑)。
小さい動物たちは、寒さをしのげたので、地球の氷河期を乗り切ることができましたが、身を隠す場所も餌もなくなってしまった恐竜は滅びることしかできなかったんですよね。うーん…切ない…。
また最後に、愛しすぎる失敗をしているという「お父さん・お母さん」も紹介されています。この章は、あらかじめ言っておきますが、めっちゃ泣けます!!! 30代半ばの私にはまだ子もいませんが、将来のことを思ってウルウルと涙を流してしまいました。どうして怒ってしまうのか、という子どもにとっての一番の疑問を心を揺さぶりながら教えてくれます。子どもが生まれる予定はまだまだありませんが、将来絶対読ませるんだ! と、そんな気持ちにさせてくれる一冊でした。
すでにお子さんをお持ちのお父さん、お母さん。お孫さんにメロメロなおじいちゃん、おばあちゃん。ぜひお子さんへのプレゼントとしていかがでしょうか?
【書籍紹介】
失敗図鑑 すごい人ほどダメだった!
著者: 大野正人
発行:文響社
多くの伝記では「英雄」「成功者」として紹介されている、いわゆる偉人たち。でも、彼らは、ずっと成功し続けてきたわけではありません。理想が高すぎた、孔子。成功にしがみついた、ライト兄弟。考えすぎて引きこもりになった、夏目漱石。天才ゆえに死にかけた、ダリ。新しすぎて理解されなかった、ピカソ。今に名を残すすごい人も、たくさん失敗をしてきました。だから、「失敗しないと人生損だよ!」くらいの気持ちでどんどん新しいことにチャレンジしてほしい。そのための「勇気の書」が本書です。