発売以来、大きな話題を集めている前代未聞の図鑑『学研の図鑑 キン肉マン「超人」』は、どのように制作されたのでしょうか。企画・編集をした学研の芳賀、杉田の両氏に、“友情パワー”溢れる裏話を聞きました!
【関連記事】
キン肉マンの超人を「学研の図鑑」が大真面目に解説したら…単なるコラボレベルじゃない図鑑が出来上がりそう
特盛りの初出し情報満載!原作者・ゆでたまご先生も太鼓判『学研の図鑑 キン肉マン「超人」』がついに店頭に並ぶ日が来た
「肉ファンが集まり友情パワーが爆発して完成できました」……芳賀
「超人の特徴的な笑い声も記載するなど最後まで『図鑑らしさ』にこだわりました」……杉田
【2017年6月以前】 企画発案は芳賀の入社時にまで遡る
芳賀…そもそも企画の発端は、僕が子どものころから「キン肉マン」が好きだったことです。
杉田…芳賀さんは、小学生のころに「超人募集」(「キン肉マン」に登場する超人を募集する企画)に応募して、超人として採用されたこともあるんですよね。
芳賀…それくらい好きで、作中の超人を見ては「ステカセキングとミスター・VTRは似たなかまだな」とか、何気なく分類することばかり考えていました。一方、学研にいるからには「キン肉マン」の図鑑をやれたら面白いだろうと入社以来、ずっと考えていましたが、企画が具体化したのは約4年前です。そこにちょうど「キン肉マン」40周年が合致したんです。
杉田…企画が先にありきで、ちょうど学研の図鑑が来年アニバーサリーイヤーの創刊50周年。何かの思し召しだと思いましたね(笑)。
【2017年6月】 嶋田先生とやりとりが始まり、企画が本格的にスタート
芳賀…この企画アイデアを、嶋田先生(「キン肉マン」原作担当)と食事をしたときに話したんです。後日、改めて企画書を送ったら、「面白い企画ですね。集英社(「キン肉マン」の出版元)との兼ね合いがあるけど前向きに検討します」とお返事をいただいて。その10日後にはOKをいただきました。
杉田…僕は「キン肉マンⅡ世」ドンピシャ世代で、「キン肉マン」が好きでした。そこで芳賀さんから「それなら一緒にやろう」と声をかけてもらいました。このとき、“友情パワー”が編集部内で生まれました。
【2017年8月(~11月)】 超人をリストアップし分類作業がはじまる
杉田…ちょうど、僕は入社以来、「動物」や「乗り物」などの図鑑を作ってきました。その経験があったので、「キン肉マン」の図鑑を作るにあたり、まずは膨大な数の超人をリストアップし、分類する作業から始めました。
芳賀…その分類を下敷きに2人で考えていったのですが、簡単にはいきませんでしたね。例えば当初は「世界遺産のなかま」という分類がありました。でも、絵を並べてみると、世界遺産には自然遺産や文化遺産がある。超人の見栄えに図鑑らしい誌面の統一感がなくなっちゃうんです。
杉田…うまく分けられないこともありましたね。どの超人をどこの分類にするのか、最後まで悩みました。
【2017年8月】 表紙の選定が始まり、アトランティスが候補に!!
芳賀…「学研の図鑑」の外装ケースは、1枚絵でドンと出すのが定番で、それを大事にしよう、と。当初はアトランティスを選びました。動物っぽいし、あの顔がどアップで出たらカッコいいと思ったんです。でも、抵抗がある人もいるかなと思い、それなら人気のロビンマスクのほうが図鑑らしさが際立つのかな、と。
杉田…それでアトランティスは図鑑本体の表紙に。主役のキン肉マンは、キャラクターブックの色が濃くなるので予定になかったですね。これはあくまで図鑑なので。
【2017年10月(~2018年12月)】 700超人すべてのイラスト作成
芳賀…分類と同時に進めていったのがイラストです。図鑑に使っている絵は基本的には中井先生(「キン肉マン」作画担当)が描かれたものをベースに彩色していますが、イラストレーターさんには彩色を細かくオーダーする必要がありました。
杉田…テリーマンならモデルとなったプロレスラーの肌の色とか。リアリティが出るよう、写真資料をつけた指定紙を、約700超人1体1体、すべて作って。
【2017年11月(~2019年2月)】 イラストチェックが始まり色合いなどを修正
杉田…こうしてできた絵は、もちろんゆでたまご先生にチェックしていただきました。
芳賀…中井先生のチェックはさすがというか……。例えば、「屍魔王(しまおう)」という悪行超人がいるのですが、資料によっては身につけているベストが赤なのでその色で指定したら、「これはアリザリンレッド(赤紫色に近い色)です」と。
杉田…微妙な色合いまでこだわっているんだと知ることができて、チェックが入ると逆にうれしかったですよね(笑)。
【2017年11月(~2019年2月)】 同じタイミングで原稿チェック開始
芳賀…嶋田先生は本文の原稿をすべて見てくださいました。これまで設定のなかったところに設定付けを行った部分もあるので、そのあたりもしっかりと。こちらを信頼してくださり、あまり修正は入りませんでしたが……。
杉田…むしろ入ったほうが安心できましたね(笑)。ただ、ルビ(読みがな)にはチェックが結構入りました。「阿修羅バスター」を「あしゅら」としていたら、アシュラマンだから阿修羅はカタカナ、とか。
芳賀…あと大きな部分では超人強度とか身長・体重。これまで設定付けがなかった超人にもすべて入りましたので。そこはこの図鑑でも画期的なところだと思います。
【2018年10月】 肉ファンに向けた描き下ろし初回限定版ケースの依頼
芳賀…でも、作っているときに不安にかられたんです……。図鑑とはいえ、「キン肉マン」の本。それに、ゆでたまご先生が描き下ろした絵がひとつも載っていないぞ、と(笑)。
杉田…このままでいいのだろうか、と(笑)。それで肉ファンに向けて、ゆでたまご先生描き下ろしの初回限定ケースを付けたい、ということになりました。
芳賀…急遽、中井先生に依頼しました。でも、キン肉マン40周年イベントが立て込んでいて、「無理だ」と言われたんです。ところが、嶋田先生から、「せっかく学研で出すのだから、線画までは描いて彩色は学研さんのほうでどうか」、とご提案いただきました。こんなにありがたいことはありません。「ぜひ、それでやらせてください!」ということになりました。
杉田…ところがイラストが届いてびっくり。線画だけのはずが、彩色済みだったんです(笑)。「キン肉マン」の実況風に言えば「あーっと、色が付いている~!」。ありがたいどころか歓喜でしたね。
【2019年4月】 約2年の歳月を経てついに図鑑が完成!
芳賀…僕らだけでなく、図鑑の制作スタッフも大の肉ファン。というのも、いいものを作るには絶対的なモチベーションが大事というのが僕の編集方針。「キン肉マン」であれば肉ファンを集めるのが一番いいだろう、と。社内外からそういう人をとにかく巻き込んだ結果、みなさんが高いモチベーションでやってくれました。制作を進めていくなかでみなさんからいろいろな意見をもらい、最後まで変更を加えながらブラッシュアップしていきました。
杉田…例えば、変身する超人なら、代表的な変身体をいくつか入れればいいと思っていましたが「あれは入れないのか?」「これがない」といった指摘をいただいて、最終的には全部入れようとか(笑)。
芳賀…企画をスタートさせたときは192ページ500超人の予定でしたが、最終的には276ページ約700超人ですからね。
杉田…当社の、「鳥の図鑑」には鳴き声が載っているので、それにならって「超人」も特徴的な笑い声を追加しました。最後まで図鑑らしさにこだわりましたね。
芳賀…気がつけば制作期間に2年もかかっていて(笑)。でも、熱意のあるスタッフが集まり、まさに“友情パワー”が爆発したからこその完成ですね。熱狂的な肉ファンも必ず納得いただける出来になっていると思います。ぜひ楽しんで読んでほしいです。
【関連記事】
キン肉マンの超人を「学研の図鑑」が大真面目に解説したら…単なるコラボレベルじゃない図鑑が出来上がりそう
特盛りの初出し情報満載!原作者・ゆでたまご先生も太鼓判『学研の図鑑 キン肉マン「超人」』がついに店頭に並ぶ日が来た
文/こざきゆう、ゲットナビ編集部/村田 卓(go relax E more)