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2019/8/20 21:45

医学者からロボット研究者までが注目!「タコ」が人類の鍵を握っている!?

タコ。日本、いや世界の人のほとんどが知っているであろう、海に住む無脊椎動物。マダコやミズダコ、イイダコなどは食べたことがあるという人も多いことだろう。

 

このタコ、実は無脊椎動物の中でももっとも賢いと言われているのだ。そんなタコについて、さまざまな角度から紹介しているのが『タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物 』(キャサリ・ハーモン・カレッジ・著、高瀬素子・訳/太田出版・刊)だ。

 

タコの身体は液晶ディスプレイ!?

タコが頭がいいというのは、なんとなく知っている方もいるだろう。ビンのふたを開けてエサを採ることができ、自分の巣穴の位置を覚えていて帰ってくることができる空間認識能力も持ち合わせているとのこと。人を識別し、エサをくれる人にはおねだりをする一方、気にくわない人間には水を吹きかけたりもする。

 

足が8本あるのはよく知られているが、心臓は3つあり、3億年前にはすでに海にいたそうだが、実はタコそのものは謎に包まれている部分が多い生き物なのだ。

 

たとえば、タコの皮膚。タコは皮膚の色や明るさ、そして質感までも背景に似せて身を隠すことができる。岩や海藻などに身体を似せて身を隠すことで敵から身を守ったり、時には待ち伏せをしてエサを捕まえたりするのだ。

 

これはカメレオンが周囲の色に同化したり、昆虫が枯れ葉に擬態するといったこととは根本的に違う。タコは色だけではなく、光の反射性や質感、明るさの要素まで変えることができる。

 

液晶ディスプレイといった先端技術の恩恵を受けなくても、タコの皮膚には生まれながらに何百万個もの色素胞という高解像度ディスプレイが取り付けられている。

(『タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物』より引用)

もっと仕組みは複雑なのだろうが、簡単に言えば体中が液晶ディスプレイのような感じで、脳から命令がいけばその通りに身体の表面を変えることができるというわけだ。それだけではなく、質感すらも変えられるのだから海中でタコを見分けるのは至難の業。そのため、捕獲が困難で研究が進まないといった側面もあるようだ。

 

身体のメカニズムに関してはアメリカの海軍研究所が巨額の助成金を提供して解明しているらしい。体色の変化が何かしら役に立つのだろう。

 

さまざまな業界から“引っ張りダコ”

タコはその8本の腕が特徴的だ。実はこの腕は独立して動いている。

大脳で完全に制御されているわけではなく、一本一本の腕の先まで神経が通っているので、脳とは半ば無関係に動かせる。

(『タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物』より引用)

吸盤も、それぞれが独立して動かせるようだ。この構造は、ロボット研究者を虜にしている。通常のロボットとは違う柔らかい腕が、脳を介さずにそれぞれ自律して動かせるというのは、かなりすごい。タコのメカニズムを解明し、自律型ロボットへ応用しようという研究が進められている。

 

また、ほとんどのタコには毒がある。体重25gほどのヒョウモンダコは、成人10人分の致死量に相当する猛毒を持っている。ただし、ほとんどのタコの毒は、特定の生物にのみ効果を現すもの。何百年何千年という時間をかけて、ほかの種の神経系を解読して身に付けたものなのだ。

 

そして現在、この毒を人間の薬として応用できないかという研究が行われている。もしかしたら、タコ由来の薬というものが未来には現れるかもしれない。

 

まさにさまざまな業界から“引っ張りダコ”の状態といえる。

 

 

人類の未来はタコにかかっている?

日本だけでなく、ヨーロッパや韓国などでもタコは食材として人気だ。ただし、日本のタコ好きは群を抜いているようで、世界のタコの漁獲量のうち、半分は日本で消費されているという。

 

魚屋やスーパーに行けばいつでも買えるタコ。しかし、生きているときのタコについて、我々はどれだけ知っているだろうか。

 

水族館に行けば生きている姿を見られるが、それほど人気があるというわけでもない。でも本書を読めば、タコがどれだけ神秘的で興味深い生き物かわかるだろう。

 

まだまだ謎が多いタコだが、海洋生物学者だけでなく、各分野の科学者やロボット研究者、医学者までも注目している。もしかしたら、21世紀の科学や医学の進歩は、タコが鍵を握っているかもしれない。

 

【書籍紹介】

タコの才能 いちばん賢い無脊椎動物

著者: キャサリン・ハーモン・カレッジ(著)、高瀬素子(訳)
発行:太田出版

8本足に3つの心臓をもち、変幻自在に皮膚の色を変えられる不思議な生物タコ。太古の昔から人間はタコに魅了されてきた。長年の研究にもかかわらず、その生態はいまだ謎に満ちている。狩りの達人であり、人の顔を見分け、過去の行動を記憶し、パズルを解くこともできる。タコの奥深い才能は、いったいどこまで広がるのか?謎に迫るタコの生物学、驚くべき能力に着目した科学研究、4000年におよぶ人類との歴史、そして世界各地の文化を網羅。タコのすべてがわかる「タコ学」決定版。

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