近年、ネットメディアでも「対談」記事が気軽に読めるようになり、Youtube等でも対談をメインにしたコンテンツなどが増えてきましたよね。ひとつのテーマを二人で語り合ったり、語り手と聞き手に別れて意見を交わすことがメジャーですが、三人で語り合う「鼎談(ていだん)」をご存じですか?
手元の辞書で意味を調べてみると、『三人が向い合いで話をすること。その話。』とありました。なんとなく重みのある、格式高い言葉に感じてしまいますが、そんな鼎談をめっちゃカジュアルに、「よっ! 鼎談!!」なんて言いたくなるくらい満足度高く表現している本が『三人寄れば無礼講』(清水ミチコ・著/中央公論新社・刊)です。清水ミチコさんと親交ある著名人の方2名をゲストに三人でお話ししているだけの内容なのですが、三人だからこその会話の魅力が存分に引き出されている一冊なのです。
めっちゃ豪華! 清水ミチコさんと鼎談する人たち
この本は、『婦人公論』(2017年4月25号〜2018年9月25号)で連載されてる原稿に加筆・修正した内容で、18の鼎談が掲載されています。著者である清水ミチコさんが「今」会いたい人と一緒にテーマなしのアドリブで語り合う内容で、三人の共通項を見つけるところから始める人や、何気ない会話から勝手にテーマが決まっていったり、どの鼎談から読んでもクスっと笑ってしまう箇所が絶対あります。
どんな人と鼎談をされているかちょっとご紹介すると、記念すべき1回目のメンバーはがタレントのYOUさんとイラストレーターで書籍『本人伝説』『本人遺産』でもお馴染みの南伸坊さん。デーモン閣下と脳科学者の中野信子さんと一見正反対なお二人をお迎えしたかと思えば、お笑いコンビナイツのお二人が登場したり、さらに、どんな話になるか検討もつかない蛭子能収さんと五月雨ケイ子さんが登場したりと読み応えもたっぷり。一度読み始めると止まらなくなってしまい、私も1日三鼎談まで! と決めて読むくらいハマってしまいました(笑)。
読めば読むほど鼎談の世界にハマってしまうのはもちろんなのですが、清水ミチコさんの人柄が垣間見え、一冊読み終わるころには、本を読んだというよりもラジオ番組を聞いたようなそんな身近な存在になる一冊でした。
小さいころのみっちゃん
私が好きなエピソードをひとつ紹介しましょう。
脚本家で映画監督の三谷幸喜さんと女優大竹しのぶさんとの鼎談の中で、モノマネは練習するのか? という話になり、大竹しのぶさんから、小さいころの清水ミチコさんについて聞かれてこう答えたところがありました。
清水 ふざけて周囲にウケるのが、大好きな子ども。よっちゃんていう可愛い女の子がいてね、その子にとにかくウケたかった。ところが、よっちゃんの笑いに対する目がだんだん肥えてきて、バレーボールやりながらオットセイのポーズとかしても、笑ってくれない(笑)。で、自分は「やりすぎ」はダメなんだと学んだ。
(『三人寄れば無礼講』より引用)
それから閃いたことをサッとやるようになったそうなのですが、特訓したモノマネよりも自分が普段から好きな人だと思う人のモノマネの方が上手にできると語り、鼎談の中でも大竹しのぶさんのモノマネも披露されていました(文字だけなので似ているかはわかりませんが(笑))。
三谷さんと清水さんは、10年近く一緒にラジオをやっていた仲、三谷さんと大竹さんも舞台で一緒だったのはもちろんですが「世界中で僕を一番好きなんじゃないか?」なんて勘違いしてしまったほどなんだとか。清水さんも大竹さんと仲良しで、三人の濃い関係性の話がじっくり聞けて、ファンはもちろん普段の三人を垣間見られて、話の中に入り込ませてくれるような楽しさがありました。
結局「小木」について語っちゃう、三人
もうひとつ、森山良子さんとおぎやはぎの矢作さんとのお話。どんな話をしていても結局「小木」の話になってしまう回もオススメです。森山良子さんの娘さんと結婚したおぎやはぎの小木さんとその相方の矢作さん。最初は、森山さんと矢作さんが久しぶりに会ったというところから小木さんの話になり、新婚の矢作さんの結婚生活の話になるのですがまた小木さんの話になり、こんな会話が始まります。
清水 その調子で小木と喧嘩したら、どんな感じになるの?
森山・矢作 しない。
清水 わ、ハモった(笑)。喧嘩しないんですか、娘さん夫婦は?
森山 見たことない。
矢作 絶対しないと思う。
清水 どうして?
矢作 相手が小木だから。あいつとは高校からのつきあいだけど、一度も喧嘩したことない。そもそも、小木が人と争うシーンを想像できないです。あれ? またいつの間にか、「小木はいいやつ」みたいな話になってません?
森山 話題変えましょうよ。(笑)
(『三人寄れば無礼講』より引用)
全員が呼び捨てにしている「小木」エピソードも楽しいのですが、二人で語る対談と違い「この場にいない人」の話で盛り上がることが鼎談には多く存在していて、『三人寄れば文殊の知恵』なんて昔の人はうまいこと言うな〜と、勝手にひとりで納得してしまっていました。
聞き役・話し役などそれぞれの役割を気にせずに、思ったことを語り合う、そんな魅力が「鼎談」には含まれているんだと感じます。どこから読んでも、いろんな発見があり、喫茶店で隣の人の会話を盗み聞しているような楽しさも鼎談にはあるのだと感じました。まだ鼎談を読んだことがないという人もおすすめの一冊ですので、清水ミチコさんの魅力、そして鼎談の魅力に触れてみてください。
【書籍紹介】
三人寄れば無礼講
著者:清水ミチコ
発行:中央公論新社
2人×18回、“今、会いたい人”を招いて繰り広げられる、ざっくばらんで愉快な鼎談。『婦人公論』好評連載の書籍化。