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2019/12/23 21:45

生き残りに必要なことは「完全区別化」と「情報戦略」。弱小プロレス団体・DDTが日本2位の団体になるまで

現在、日本で一番大きなプロレス団体と言えば新日本プロレスということに異論はないだろう。そのきっかけとなったのは、2012年にブシロードの子会社となったこと。それからメディアでの露出が大幅に増え、若い層のファン獲得に成功。現在の日本のプロレス業界を牽引する存在であることは間違いない。

 

では、日本で第2位の団体と言えばどこだろうか。それはDDTだ。

 

無名のプロレス団体がサイバーエージェントグループに

DDT(Dramatic Dream Team)の代表を努めるのは、高木三四郎。彼は学生時代から学生向けのイベントを仕掛ける、いわゆる「イベント屋」として有名な存在だった。その後、屋台村プロレス、PWCといった弱小インディー団体を渡り歩き、DDTを旗揚げ。1997年のことだ。

 

スター選手のいない弱小プロレス団体は、プロレス専門誌にも見向きもされない存在だったが、それが今では業界2位の規模までになった。その躍進のきっかけとなったのは、2017年にサイバーエージェントの子会社となったこと。これにより一気に団体の知名度および活動規模を拡大。晴れて日本第2位の規模のプロレス団体にまでのし上がった。

 

なぜそうなれたのか。それは『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』(高木三四郎・著/徳間書店・刊)で明らかにされている。

 

 

一流プロレスラーの条件は「文章力」

高木三四郎は、いわゆるプロレス業界の大雑把な経営を一切排除。そして、格闘技界にあった年功序列などにもこだわらない。一時期「文化系プロレス」と銘打っていたが、いわゆる体育会系ではなく、文化系の体質を取り入れていった。

 

選手に対しても、比較的自由にやらせたり、合理的な練習を積ませたりすることで、個性的かつ才能溢れる選手を輩出。飯伏幸太や、カナダからやってきたケニー・オメガなどは、その後新日本プロレスで活躍。そのほかにも、ゲイのキャラクターで数々の男性レスラーを堕としてきた男色ディーノや、試合にパワーポイントでのプレゼンテーションを取り入れたスーパー・ササダンゴ・マシン、人形プロレスラーであるヨシヒコ、オーストラリア生まれの女装レスラー、レディビアードなどなど、とにかく個性的なレスラーばかりが揃っている。

 

選手の自主性に任せるという方針のほか、高木の一流プロレスラーの条件というのもこれまでのプロレス団体にはないものだ。テレビや雑誌というマスメディアでの情報発信が難しい昨今、SNSでの各選手の情報発信の重要性を、かなり以前から考えていたようだ。

 

高木はレスラーにとって重要なのは「文章力」だと言っている。

一流のレスラーとは、お客さんが求めるもの知っていて、それに応えられるからツイートも一流。逆に、どれだけ身体能力が高くても、メッセージが弱いとお客さんから支持されないから、文章力が大切だ

(『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』より引用)

プロレスにとって勝負はもちろん重要。しかし、それ以外のストーリー作りやリング上での表現力、そして以前ならばテレビや雑誌でのインタビュー、今ならばTwitterなどのSNSでの発信力、それらも重要な要素であると言っているのだ。

 

選手に対しては、月間のSNS伸び率の高い選手に金一封を出すといったことも行っているとのこと。それだけ、高木がSNSでの発信というものを重要視していることがわかる。

 

 

強いだけでは生き残れない。クリエイトできるレスラーが必要

また、高木は従来の「強い」プロレスラーだけではなく、クリエイター気質のプロレスラーを育てていきたいとも述べている。

単純に「プロレスをやります」というのではなくて、プロレス自体をクリエイトできるレスラーをもっと増やしたい。

(『年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで』より引用)

「試合は一つの作品なんです」と、本書の中で高木は語る。プロレスというスポーツは、単に勝った負けただけではないもの。試合に至るまでのストーリー作りや、リング上での自分たちの見せ方、試合後のコメントなどなど、試合以外の部分の要素が大きいのが特徴だ。

 

ただ単に身体が大きくて強くても、プロレスラーとしては大成できないこともある。逆に身体が小さくても弱くても、「プロレス頭」があれば生き抜いていくことができる。自己プロデュースができないと、今のプロレス業界では生き残れない。それを高木は、かなり前から理解し実践してきた結果が、今のDDTと言える。

 

 

ビジネス書として読んでもおもしろい一冊

本書は、いわゆるこれまでのプロレス本とは違う。どちらかというと、ビジネス書、経営哲学に近い。それだけに、社会で働いている人にとっては、役立つような内容が多い。

 

経営者視点から見てもおもしろいと思うが、一個人事業主であるフリーライターの僕が読んでも、役に立つと感じた。つまり、「経営者はどんな人材を欲しているのか」がわかるからだ。

 

プロレスに興味のある人だけではなく、一般の人にとってもおもしろい一冊。特に、自分で企業をしたいという人や、企業をしたけれども伸び悩んでいるという人は、この本を読むといろいろはヒントが得られるだろう。

 

【書籍紹介】

年商500万円の弱小プロレス団体が上場企業のグループ入りするまで

著者:高木三四郎
発行:徳間書店

年商500万円の屋台村プロレスから始まったDDTは、両国、さいたまスーパーアリーナ、東京ドームへの進出も果たし、サイバーエージェント傘下になってますます快進撃。今や、あのメジャー団体に次ぐ興行規模に成長した。大社長こと高木三四郎氏が初めて明かす、22年の汗と涙の紆余曲折と、プロレス団体経営論!

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