僕は長いこと写真撮影を趣味にしていたり、仕事にしていたりする。写真を始めたころはフィルムだったが、今はほぼデジタルカメラでの撮影だ。若い人たちには、フィルムで撮影したことがないという人も多い。
デジタルカメラ全盛期だが、SNSなどを見ているとフィルムっぽい雰囲気の写真が人気を集めていることがある。デジタルカメラとは違う、なんとなく色味が転んでいてノスタルジックな感じがいいのだろう。
僕も一時期、デジタルカメラで撮影した写真をフィルムのように編集していたことがある。世の中には、フィルムっぽくしてくれるフィルターなどもあるので、そういうものを使ってフィルム調にして楽しんでいた。
しかし、根本的にフィルム、特にネガフィルムとデジタルカメラの写真がどう違うのかということはあまり考えたことがなかった。
フィルム調にする5つのプロセス
『デジタルでフィルムを再現したい』(嵐田大志・著/玄光社・刊)は、デジタルカメラの写真を、RAW現像ソフト「Adobe Lightroom Classic」を使ってフィルム調に仕上げる方法を解説している。本書によると、そのプロセスは5段階ある。
Step 0 仕上がりをイメージする
Step 1 写真を整える
Step 2 基本補正を行う
Step 3 カラーを調整する
Step 4 効果を調整する(『デジタルでフィルムを再現したい』より引用)
もともとネガフィルムは、フィルムの現像時に人の手、または機械により調整されているので、その作業を自分でやろうという感じだ。
ポイントはコントラスト、色味、ホワイトバランス
それぞれの作業のポイントは本書を読んでいただくとして、どうしたらフィルムらしいと感じられる写真になるのかについて、かいつまんで解説する。
まずはコントラストの調整。ネガフィルムはコントラストが弱めという特徴がある。デジタルの写真に見慣れていると、全体的にメリハリのない写真に見えるが、これがノスタルジックな雰囲気を醸し出すひとつめのポイントだ。
次は、色味。デジタルカメラの写真は、どちらかというと派手目で現実の色をちょっと強めにした感じがある。一方フィルムは銘柄によっても異なるが、やや暖色系または寒色系に色転びしていることが多い。なので、青い空がちょっと緑がかっていたりするのだが、それを再現するとフィルムらしさがアップする。
最後にホワイトバランス。先ほどの色味と似ているが、こちらは全体的な色合いの調整。もともとホワイトバランスは、白いものを白く表現するためのものだが、フィルム風に仕上げるにはホワイトバランスをわざと変えて、写真全体の色味を変えるのだ。
これに、場合によりノイズ(粒状感)を加えたりすることでフィルムらしいデジタル写真になるというわけだ。
■あえてデジタルでアナログな雰囲気を楽しむ
本書を参考にしながら、昨年夏に鎌倉で撮影した写真をフィルム調にしてみた。
もともとちょっと古いコンパクトデジタルカメラで撮影していたので、どことなくノスタルジックな雰囲気だったが、調整をしてさらにフィルムっぽい感じにしてみた。「写ルンです」で撮ったような写真を目指したのだが、どうだろうか。
デジタルカメラの写真は見栄えがよく万人受けする感じだが、気に入った写真をフィルム調に仕上げていくと、自分の好みが反映されておもしろい。デジタルカメラの撮影にちょっと飽きてしまったという人は、フィルム調にチャレンジしてみてはいかがだろうか?
【書籍紹介】
デジタルでフィルムを再現したい
著者:嵐田大志
発行:玄光社
Instagramで人気の著者がフィルムルックの写真に編集するためのノウハウを公開したガイドブックです。Adobe Lightroom Classicを使って個性的でノスタルジックな雰囲気に仕上げる方法をさまざまなシチュエーションでの実例で解説していきます。第1章で解説しているフィルムルックに編集するための「ベースプリセット」を無料ダウンロードできるサービス付きです。
楽天koboで詳しく見る
楽天ブックスで詳しく見る
Amazonで詳しく見る