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2021/1/12 6:30

國學院大學駅伝部の強さの秘密は「すき家の牛丼」!?−−『歴史を変えた挑戦』

毎年1月2日、3日に開催される、東京箱根間往復大学駅伝競走。通称「箱根駅伝」。毎年楽しみにしている人も多いことだろう。今年は復路でトップの創価大学と3分以上の差を付けられていた駒澤大学が、最終10区で大逆転をして総合優勝を勝ち取った。非常に熱いレースだった。

 

僕は駅伝経験はないが、スポーツ観戦が好き。そのなかでも、この箱根駅伝は毎年楽しみにしている。テレビで予選会をチェックするくらいには好きだ。そして、ここ数年はさらに箱根駅伝熱が高まっている。なぜなら、僕の母校である國學院大學が安定してシード権を獲得する常連校になってきているからだ。

 

國學院大學飛躍の要因は監督にあり

箱根駅伝が好きな人は、第88回大会(2011年1月2日、3日)の「寺田交差点」事件を覚えていることだろう(詳細は各自調べていただきたい)。あの事件で一躍有名になった國學院大學は、その後も安定してシード権を獲得できる常連校になり、2020年の第96回大会では、総合3位に入る躍進を見せた。2019年は三大駅伝のひとつ出雲全日本大学選抜駅伝競走(通称「出雲駅伝」)で優勝しており、同大学にとっては2019〜2020年のシーズンはまさに飛躍の年となった。

 

第88回大会まで数度箱根駅伝に出場はしたことがあるものの常連校と呼べるようなレベルではなかった國學院大學が、めきめきと力を付けた理由のひとつが現監督である前田康弘氏の就任だろう。監督就任時は2009年。まだ31歳という若さだったこと、駒澤大学の大八木監督の下で箱根駅伝の優勝経験もあることなどから当時注目されていたが、そんなにすぐに結果を出すとは思われていなかった。

 

しかし、監督就任3年目で初のシード権獲得、翌年は「寺田交差点」事件がありながらも連続シード権獲得。その後も安定して箱根駅伝に出場しているなど、きちんと実績を残してきている。その前田監督の著書が『歴史を変えた挑戦』(前田康弘・著/KADOKAWA・刊)だ。

 

選手の部屋で一緒にゲームをする監督

本書は、前田監督が陸上を始めた経緯、駒澤大学入学、就職、現役引退、そして指導者への復帰から國學院大學陸上競技部の監督就任に至るストーリーや、2019年から2020年の大躍進の年の様子、そして指導者としてのポリシーなどが書かれている。駅伝ファンは普段あまり見られない指導者の裏側が知れてたいへん興味深い。

 

前田監督は31歳という若さで監督に就任したこともあり、上の世代の指導者とは違う考え方を持っていたようだ。大学の体育会系というのは、上下関係が厳しく、監督なんてめちゃくちゃ怖いんだろうなというイメージだったが、前田監督はまったくそんなことはないようだ(テレビなどで見ている印象も全然怖そうではない)。

 

コーチ時代は、選手の寮の部屋に遊びに行って一緒にゲームをしたりするなど、できるだけ選手と距離感を近くすることで監督と選手の間を取り持つことを心がけていたよう。現在はそこまで近くはないものの、選手との距離感は大事にしている。

 

私が大事だと思うのが人と人との“距離感”や“間”だ。(中略)選手とのコミュニケーションでも、自分の得意な“間”に持っていくことはポイントだと思う。

(『歴史を変えた挑戦』より引用)

 

一番意識しているのは「選手から話しかけやすい存在であること」。コーチ時代ほどではないが、監督になってからも選手の部屋に遊びに行くことはあるようだ。

 

たまに日曜日などに息子を連れて、学生の部屋で彼らと一緒にゲームで遊ぶこともある。ただ、彼らは私に忖度をしているのか、対戦ゲームでは私を攻撃してこないが……。

(『歴史を変えた挑戦』より引用)

 

選手たちとしては、きさくな監督が遊びに来てくれるのはうれしいが、ゲームでボッコボコにしてしまうのは躊躇してしまっているという感じだろうか。まあ、いい距離感ではないだろうか。

 

勝負メシは「すき家の牛丼」

箱根駅伝に出場する場合、1月1日の午後から移動し、往路組はスタート地点の大手町近くのホテルに、復路組は芦ノ湖近くのホテルに宿泊するのだが、その際に前田監督が気を付けているのが「近くにすき家があること」なんだとか。

 

すき家の牛丼が、國學院大學の勝負メシになっている。出雲駅伝で優勝した際にも、ホテルで出される夕食はとらずに、みんなですき家で食べた。私も選手と一緒に夕食をとるので、インカレなど数日間に渡る試合の時には、連日牛丼が続くのだが……。

(『歴史を変えた挑戦』より引用)

 

栄養学的にはあまりよろしくないのだろうが、それよりも験を担ぐことを優先し、選手が気持ちよく走ることを重視しているとのこと。近くにすき家がない場合はテイクアウトして食べるというくらいだから、かなりのこだわりだ。ちなみに、なんですき家を食べるようになったのかは不明。でも、そういう験担ぎやルーティンがあるというのは、精神的に落ち着くものなのかもしれない。

 

物足りなさを感じるのは強くなった証拠

2021年の第98回大会、國學院大學は総合9位とシード権は取れたものの、昨年の成績から比べるとちょっと物足りない印象だった。

 

しかしよく考えてみると、10年前はシード権を取っただけで大喜びしていたのに、今や9位でちょっと悔しいというのは、それだけ國學院大學の駅伝が強くなっているということだろう。

 

前田監督が監督に就任してから、國學院大學の陸上が変わったのは明らか。これからも、その明るさと熱さで大学陸上界をかき回していってほしいと思う。そして、数年内は箱根駅伝総合優勝を手にすることを願っています。

 

【書籍紹介】

歴史を変えた挑戦

著者:前田康弘
発行:KADOKAWA

2019年出雲駅伝優勝&第96回箱根駅伝3位。やる気を引き出し、窮地でも勝てるチームづくりの舞台裏とはー就任11年目の躍進を支えたのは現代の若者と真摯に向き合いその特徴を見抜く力。

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