書評家・卯月 鮎が選りすぐった最近刊行の新書をナビゲート。「こんな世界があったとは!?」「これを知って世界が広がった!」。そんな知的好奇心が満たされ、心が弾む1冊を紹介します。
筋トレって自己流になりがち……
こんにちは、書評家の卯月 鮎です。私は昔から運動音痴で、体育の成績は散々でした。習い事でバレエに通わされていましたが、自分でもわかるほどギクシャク、ドタドタ。白鳥ではなく、いいカモでしたね(笑)。
今思うと、頭のなかで体をどう動かすか、きちんと理解できていなかったのが敗因かと……。運動にもロジックが必要なようです。
今回の新書『ロジカル筋トレ 超合理的に体を変える』(清水 忍・著/幻冬舎・刊)は、正しい筋トレとは何か、効果的な筋トレ方法をわかりやすく教えてくれる1冊。
著者はトレーニングジム「IPF」ヘッドトレーナーの清水 忍さん。論理的な指導で、メジャーリーガーの菊池雄星選手など、プロアスリートのパーソナルトレーナーとして絶大な人気を誇っています。ウェブのインタビュー記事を読むと、中学時代に柔道場の隅にあったバーベルと出会ったのがトレーニングのきっかけとか。
ノルマの罠にハマってはダメ!
「一生懸命頑張っているのにもかかわらず、とんでもなく無駄な遠回りをしている人が多い」という清水さん。「なぜ」をしっかり考えることが効率のいいトレーニングへとつながるのです。
まず第1章「ロジカル筋トレとは何か」では、筋トレの意味を追求します。筋トレには中毒性があり、いつしかそれをすることが目的になってしまう、と清水さんは言います。ノルマの罠にハマり、やみくもにトレーニングしていると特定の筋肉に頼ってしまって筋肉の連動性が失われ、パフォーマンスが落ちる……。確かに私も、つい回数をこなそうと適当にスクワットをこなしてしまうことはよくあります。
第2章以降は、筋トレの理論と具体的な方法が部位ごとに説明されていきます。「ロジカル筋トレ」だけでなく「ざんねんな筋トレ」のイラストも比較として描かれていて、やってはいけないことが紹介されているのもいいところ!
「腹筋をいくらやっても腹は割れない」「腰痛解消のために腹筋をつけるは大間違い!」など、常識を覆すようなトピックも多く、なんとなくイメージしていた筋トレ像を打ち破ってくれました。
特に下半身の筋トレが説明されている第4章「下肢」は、足腰を鍛える重要さが語られ、適当ながら毎日スクワットをしている私にとっては興味深い内容。
「なぜ足腰を鍛えるのか?」。清水さんが出した答えは「地面をより力強く押せるようになるため」。足で地面を押すことは動作の基本中の基本で、足はあらゆる力を生み出す起点。地面を踏んだ反発力「地面反力」を意識すれば合理的な動作を行えるようになるというのです。
新書なのでカラーページや写真はありませんが、その分、文章で理論がしっかり説明されています。大判のいわゆる「筋トレマニュアル本」と違って、電車のなかでもスマートに読めるのがメリットです。「筋トレは自己投資」という言葉は、サボりがちな私に刺さりました(笑)。
【書籍紹介】
ロジカル筋トレ 超合理的に体を変える
著者:清水 忍
発行:幻冬舎
なぜここを鍛えるのか、なぜこのフォームか――あなたは目的に合致したフォームや回数を論理的に考えてトレーニングしているか。たとえば腹筋運動でへそをのぞき込むように上体を起こす人は、肝心の腹直筋を使えていない。あごを引きすぎず、頭と背中のラインを一直線にして上体を起こせば、筋肉によりフォーカスできる。さらに効果を上げたいなら、腹直筋だけではなく、腸腰筋も同時に鍛えられる腹筋運動・シットアップのほうがおすすめだ。わかりやすいイラストと解説が、筋トレ効果を最大限にアップする!
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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。