本・書籍
2021/4/29 6:30

『神木探偵』と一緒に全国の「御神木」の謎を解き明かす!!

神木探偵』(本田不二雄・著/駒草出版・刊)は日本全国にある御神木(ごしんぼく)を訪ね歩き、それらに対峙した記録をおさめた本です。著者・本田不二雄は、自らを神木探偵と称するだけあって、御神木に大変詳しく、迫力ある写真と丁寧な文章で私たちを御神木の世界へ誘ってくれます。以前から御神木に興味がある私には、『神木探偵』は、神が宿る木へどうやって近づくべきかを教えてくれる優れた案内書となりました。

御神木と人間

子どものころから、「御神木」が気になってたまりませんでした。樹木が私に話しかけるはずがないと思いながらも、見上げていると、何か囁く声が聞こえてくるのです。今、暮らしているマンションを選んだのも、裏山に大きなクスノキがあったことが大きな理由でした。

 

記念物の指定を受けているような特別な木ではありませんが、しめ縄がかけられ、近所の人たちに大切にされています。引っ越してきたその日から、私はベランダに出る度に、畏敬の念をもってクスノキを眺めてきました。1995年に阪神・淡路大震災に遭ったときも、「あの樹が守ってくれるからきっと大丈夫」と思いながら、電気やガスが止まったままの生活を過ごしました。

 

『神木探偵』には、樹木と人間の関係について、興味深い考察が述べられています。

 

御神木と呼ばれる木も、人との関わりなしに存在しない。(中略)いうまでもないが、神木といっても、木そのものが神なのではない。木に宿ったナニモノかを見出すことで木は神木と呼ばれる

(『神木探偵』より抜粋)

 

御神木を前に心を震わせることは、木を知ると同時に、自分自身を探ることにもつながるのでしょう。その意味で、御神木を求めてさまようことは、自分がいったい何者なのかを問う旅だといえるかもしれません。

 

たとえ御神木を見に出かけられなくても

出来ることなら、今すぐにでも、御神木を見る旅に出たいと思います。けれども、日常の生活にどっぷり浸かっていると、なかなか重い腰が上がりません。ましてや今はコロナ禍のもと、不要不急の外出は避けるようにとのお達しもあり、思うがままに御神木巡礼に出るわけにはいきません。けれども、『神木探偵』を眺めていると、たとえわが身は自宅にいようとも、心が体を抜け出して、御神木の前に立ち、巨大な木を見上げているような錯覚に陥ります。行くことが出来ない土地を丁寧に案内してもらっているようです。

 

『神木探偵』には多くの御神木がリストアップされています。それぞれ迫力ある写真が載っているので、ページをめくっていると、霊場巡りをしているような気持ちになります。たくさんの木が紹介されていますが、どれを選ぶかは人それぞれでしょう。私にとってとりわけ印象深かったのは、「寂心さんの樟(クスノキ)」「志多備神社(しだびじんじゃ)のスダジイ」でした。

 

寂心さんの樟

熊本県にある「寂心さんの樟」は、数ある日本の巨木の中でも、高い人気を誇る存在だといいます。県指定天然記念物であり、樹齢はなんと800年と推定されています。写真で見ているだけでも、「何かあったらきっと守ってくださる」と、慕いたくなるような安心感を醸し出しています。

 

寂心の名は、戦国時代の武将である鹿子木親員(かのこぎちかかず)の法名に由来しているのだそうです。親員は熊本を代表する熊本城の原型である隈本城を築いた人物として知られています。

 

寂心は亡くなった後、この樹の下に葬られました。樹は成長を続け、やがて寂心の墓石を巻き込んでしまったといいます。寂心が樹木に身を託したのでしょうか? それとも、樹木の方で寂心をかき抱こうと枝を伸ばしたのでしょうか? そのいずれかはわかりませんが、長い時を経て、樟は寂心の墓石と一体化し、寂心さんの樟として、今の時代も安らぎを与えてくれる存在となりました。

 

志多備神社のスダジイ

スダジイとはブナ科シイ属の常緑広葉樹です。子どものころ、シイの実を拾って遊ぶのが大好きでした。木の実を拾う楽しさは格別でしたが、もし、そのころ、島根県の松江にある志多備神社に行ったら、実を拾うのを忘れてしまったに違いありません。

 

樹齢300年以上と言われるスダジイは、ものすごい迫力で私たちに迫ってきます。樹木以上のものであると言いたくなります。著者と志多備神社のスダジイとの出会いも、衝撃的なものであったようです。

 

そこには”怪物”がいた。昼なお暗く葉を繁らせるその大樹の根元には、大蛇を思わせる藁製のオブジェ(藁蛇という)がぐるりと取り巻き、幹の分岐部分へと昇っている。ただならぬ風情だが、これは”怪物”の背中にちがいないと気づき、半周してその正面に立った

(『神木探偵』より抜粋)

 

この御神木は単なる樹ではなく、蛇を体に巻き付けた怪物として君臨しているようです。あぁ、見てみたい、今すぐにでも松江に向かいたい、そんな気持ちになります。もし願いを果たして、スダジイの前に立つことができたら、私は何を思うのでしょう。圧倒されて、尻餅をつくでしょうか? それとも、樹木の持つエネルギーを体に取り込んで元気はつらつとなるのでしょうか?

 

他にもたくさん紹介したい御神木が並んでいます。『神木探偵』を片手に、できれば実際に行ってみていただきたいと思います。今は無理ですが、私もその日が来るのを楽しみに毎日を過ごすことといたしましょう。焦ることはありません。何百年もの間、御神木は動くことなく、私たちを待っていてくれるのですから。

 

【書籍紹介】

神木探偵

著者:本田不二雄
発行:駒草出版

この国にはたくさんの“ヌシ”がいる。見る者の魂を震わす全国の御神木を巡り、その秘密を解き明かすはじめての本!すごい御神木69柱! 十二本ヤス(青森県五所川原市)、蒲生のクス(鹿児島県姶良市)、軍刀利神社の大カツラ(山梨県上野原市)、武雄の大楠(佐賀県武雄市)、岩倉の乳房杉(島根県隠岐の島町)…ほか。

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