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自己啓発
2021/6/1 6:30

「にゃーん」しか打てないキーボード、オンライン飲み会緊急脱出マシーン……「無駄づくり」に学ぶアイデアの生み出し方

無駄づくり」というYouTubeチャンネルをご存知だろうか。全然実用的ではないものを発明しては作り、発表しているチャンネルだ。無駄づくりを行っているのは、藤原里菜という女性。彼女は2013年から無駄づくりをはじめ、YouTubeでの活動をメインに、ワークショップを開いたり個展を開催したり、文筆活動を行ったりしている。今では日本だけではなく海外でも有名なアーティストとなった。ちなみに彼女は、元お笑い芸人だ。

 

「無駄づくり」とはどんなものなのか

「無駄づくり」で公開されている作品が、どのくらい無駄なのかは動画を見てもらえれば一目瞭然だが、どんなものなのかいくつか紹介する。

 

・レバーを倒すと自動的に上司に体調不良メールを送信する2度寝マシーン
・「にゃーん」しか打てないキーボード
・オンライン飲み会緊急脱出マシーン
・Twitterで「別れました」とツイートされると光るライト
・札束で頬をぶたれるマシーン
・イヤホンを絡ませるマシーン

 

■「にゃーん」しか打てないキーボード

 

一見、何のことやらわからないかもしれない。これを入力している筆者も、なんだかわけがわからなくなってきているが、まあ、こういうものを日々考え、作っているのが藤原里菜なのだ。

 

「無駄づくり」のアイデア発想法は無駄じゃない

彼女の何がすごいのかというと、そのアイデアだ。普通ならば、無駄だと思えるものは真っ先にアイデアリストから消去すると思う。だって、何も解決されないアイデアを実現することこそ無駄だからだ。

 

しかし、そのアイデア発想法には無駄がない。それがわかるのが『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』(藤原里菜・著/ダイヤモンド社・刊)だ。本書は、タイトルから分かる通り、彼女がアイデアを生み出す際のテクニックを71個解説している。

 

「無駄づくりをしている人のアイデア発想法なんて知ってもそれこそ無駄ではないか?」と思うかもしれないが、実はそんなことはない。アイデアが思い浮かばないとき、もっと斬新なアイデアが欲しいときなどにたいへん役立つテクニックが満載だ。

 

筆者がいくつか共感したテクニックを紹介していこう。

 

●「ダジャレ」から考える
ダジャレというのは、まさに「新しい言葉」をつくることだ。くだらないように思えるかもしれないが、そのものの本来の性質とは関係のない文脈で新しい言葉の組み合わせを考えることができるので、ダジャレはたいへんすばらしい。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より引用)

 

実は筆者は、企画を考えるときなどにダジャレで作ったタイトルだけを提出したら通ってしまったことが数度ある。本人はシャレのつもりだったのに、本決まりになってしまいたいへん苦労した思い出が……(内容まで考えてないから)。

 

●「アウトプットの言葉」を組み合わせる
アイディアを言葉から考えていくとき、まとめる言葉がたいへん重要な役割を果たすのだ。(中略)わたしはこれを「アウトプットの言葉」と呼んでいる。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より抜粋)

 

これは、企画を考えたときに、最後に何か単語を付け加えることでまとめるという技法。たとえば、イベント系だったら「●●フェア」や「●●祭り」、ノウハウ集なら「●●大全」「●●ガイド」、電子工作系なら「●●マシーン」「●●ロボ」のような単語だ。思いついたアイデアにアウトプットの言葉をくっつけてみると、意外と新鮮になることがあるという。なるほど。このアウトプットの言葉を多く持っていると、いろいろなアイデアに結びつきやすい。

 

●「感情移入」する
わたしは、知らない人が自分がしない行動をしていることに注目して、その人たちが抱えていそうな問題を、勝手に考えたりしている。(中略)また、無機物に惨めさを感じるときもある。鳥よけのために畑に吊されているCDを見ると、切ないような惨めな気持ちになる。CDたちはきっと音楽を聞いてほしいのに、まったく別の使われたかをされていてかわいそうだ。その惨めさを解消するにはどうすればいいだろうか。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より抜粋)

 

要は、自分以外の、人、動物、無機物の気持ちになってみるということだ。上の文章で藤原里菜は、鳥よけのCDに感情移入をしていた。そしてそこから思いついたのがこれ。

 

わたしが考えたのは、「畑に吊されたCDだけのクラブイベント」だ。吊されたCDたちを、一夜だけでも本来の用途として使ってあげたら、彼らも浮かばれるのではないだろうか。

(『考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71』より引用)

 

このアイデアを見たとき、筆者は不覚にもエモさを感じた。鳥よけとして余生を過ごしていたCDたちが、DJの手によって大音量で自分たちの音楽を奏で、それに合わせてオーディエンスが踊ったり歓声を送ったりしているところを想像すると、涙が出る。長年外に吊されていたために音飛びしていたりすることもあるだろう。しかし、それは魂のブレイクだ。こういうアイデアが思いつく藤原里菜、天才なのではないかと思った。

 

自分の堕落した感情もアイデアに結びつく、かも?

本書を読むと、彼女が常に何かを考え、それをアウトプットすることで次のアイデアを生み出しているのがわかる。つまるところ、いつもアンテナを張り巡らせ、考え、実行するということが大事なのかなと感じた。

 

人間は、普通に生きていると普通の考え方が身についてしまう。生き方はそうそう変えられないかもしれないが、考え方はいかようにも変えられる。見える世界を、ちょっとだけずらしてみて、自分の近くに引き寄せてみると、無駄なアイデアがいっぱい思いつくのではないだろうか。本書を読めば、「おなかがすいたけど食べるのめんどうくさい」という矛盾した感情から、何か無駄なアイデアが生まれるかもしれない。そう思わせてくれるだけでも、かなり良書だと言える。

 

 

【書籍紹介】

考える術――人と違うことが次々ひらめくすごい思考ワザ71

著者:藤原麻里菜
発行:ダイヤモンド社

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