生きたいように生き、働きたいように働く。言うのは簡単だが、いざ実行するとなると常識とか社会規範などさまざまな縛りがかかり、なかなか踏み出せないのではないだろうか。
ゆるく考えてラクに生きよう
『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』(ちきりん・著/イーストプレス・刊)は、そういう縛りと自分のアイデンティティをすり合わせていく上でとても役立つ本だ。
著者のちきりんさんがこの本を書いたのは2011年。東日本大震災の一か月半前というタイミングだった。朝から晩まで、そして時には休日まで働き続けるようなライフスタイルに疑問を感じ、それまでの仕事を辞めて新しい働き方を模索していたという。
仕事やお金や人生設計に関して、もっと自由に発想し、もっと合理的に判断できれば、今という時間を楽しむことを、もっと優先する生き方ができるはず。そう考えてこの本を書きました。
『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』より引用
自分についてちょっと思い出してみる。筆者がとあるシティホテルに就職したのは1986年。入社したてだったのに、年末のボーナスがえらく良かった。今思えば、そこから4年あまり続くバブル景気を感じさせるに十分な出来事だった。
あの時この本があれば
でも、結局は2年で辞めてしまった。第一の理由は、入社直後から続いたナイトシフト勤務が辛すぎたこと。特にレストランサービス課で働いていたときは1回出社すると2日経ってしまう。ほとんど眠れなかったし、大したこともしないまま時間がものすごい速さで流れていった。
ある日突然、これは違うと確信した。その日のうちにワーキングホリデーに関する資料を可能な限り集め、2週間後には具体的な計画を立てた。辞表を提出したのは、それからちょうど1か月後だ。あのころこの本があってくれたら、よりポジティブでよりよいものごとの進め方を考えることができていたと思う。
自分を縛らない
当時の筆者の気持ちをそのままなぞってくれたような文章がある。
また、日本には「良薬口に苦し」ということわざがあり、まるで「つらいこと=価値があること」のようにいいたがる人がいます。けれど、論理的に考えれば一番いいのは「楽しくて、ラクで、価値があること」であり、まずはそれを目指すべきではないでしょうか。
『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』より引用
目次を見てみよう。
1.ラクに生きる
2.「自分基準」で生きる
3.賢く自由に「お金」とつきあう
4.仕事をたしなみ、未来をつくる
5.ストレスフリーで楽しく過ごす
「何よりも自分のアイデンティティを大切にしながら無理せず働き、ネガティブな要素になるものとは距離を置いて、自分が心地よい範囲内で生きていきましょう」という方向性だ。周囲から押し付けられる思いで自分を縛ることもない。
完全に自分らしくある覚悟
この本は、欲との向き合い方として読むのも正しいかもしれない。そのニュアンスは、次の文章に表されていると思う。
毎日を気分よく楽しく過ごし、おいしいものを食べて、できる限り長い時間を自分の好きなことに使って過ごしたい。それを実現するためには、世間で言われる「あるべき論」も、ちょっとだけゆるく解釈すればいいじゃないか、これが私の基本的な考え方です。
『ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法』より引用
筆者は、ちきりんさんの考え方を全面的に認める。だって、ずっとそう生きてきたから。いくつか職を経て32歳でフリーランスライターになったとき、ある人から「毎日が日曜日みたいな生活」と言われ、「ああ、世間からはそう見えるのね」と感じさせられることもあったな。
とあるツイートの話
ごく最近、とあるハローワークの相談員さんの言葉に関するツイートが話題を集めた。
「もっと無責任で、いい加減に生きなよ!嫌なら初日で辞めな!いろんな職場見て、自分に合うところが見つかるまで転々としたって全然いいんだよ、自分の人生なんだから周りの意見なんて聞きすぎちゃダメだよ!」
ハンドルネームりんごさんのツイートより
世の中は、ちょっとずつ変わってきてるんだろうか。副業という働き方、45歳定年制、FIRE…。生きるということにおいて比較的大きな側面である働き方にも、さまざまな選択肢が増えつつある。そんな中、この本はさまざまな要素の優先順位を決めていく方向性を的確に示してくれる。
コロナは、テレワークというこれまでとはまったく異質な働き方を日本社会にもたらした。こうした働き方が定着したとは言いがたいが、それなりに手ごたえや手がかりを感じている人も少なくないはずだ。自分という存在をとりまくさまざまなことがらについて、もっとゆるく考えてみる。今が絶好のタイミングかもしれない。
【書籍紹介】
ゆるく考えよう 人生を100倍ラクにする思考法
著者:ちきりん
刊行:イースト・プレス
「仕事やお金や人生設計に関して、もっと自由に発想し、もっと合理的に判断できれば、今という時間を楽しむことを、もっと優先する生き方ができるはず…そう考えてこの本を書きました」(「文庫化に寄せて」より)世の中が大きく変化していく中で、どう考え、どう生きていけばいいのか。「世の中」「お金」「働き方」についての具体的で実用的な考え方が満載。日本一影響力を持つブログ「Chikirinの日記」の著者によるベストセラーが遂に文庫化。
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