モノが溢れている現代。似たようなモノが増え、モノ単体だけでは人々の購入意欲を刺激しづらくなっています。そんななか、モノができるまでのプロセスを消費者に公開する「プロセスエコノミー」という方法が注目されています。
今まではアウトプットエコノミー
プロセスエコノミーとはどんなものなのでしょうか。『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』(尾原和啓・著/幻冬舎・刊)では、今までの商品のことを「アウトプットエコノミー」と仮称し、「プロセスエコノミー」と比較しています。
「アウトプットエコノミー」とは、できた商品そのものを販売するという方法です。音楽なら曲を、小説なら本を、というように完成した品物が店に並びます。これが今までの買い物スタイルでした。しかし、現代ではモノが多すぎて埋もれてしまい、このスタイルが通用しづらくなってしまったのです。
プロセスエコノミーとは何か
では、「プロセスエコノミー」とはなんでしょう。それは、その商品が完成するまでの過程に価値を見出し、お金を支払うことを言います。まだ形になっていないものにお金を払うなんてと、不思議に思う人も多いかもしれません。けれど、実際に現代の日本ではそうした動きが加速しているようです。
わかりやすいのは、クラウドファンディングです。クラウドファンディングとは、何かを始めるための費用を人々から集めることができる方法です。たとえば曲や小説を作るために、機材や取材費が必要である場合、その費用をファンや支援者に呼びかけて調達するというものです。
過程にお金を払う理由
クラウドファンディングサイトでは「これから商品を作りたいので、製作費を支援してほしい」という呼びかけが大量にされています。私も何度か応援したことがあります。たとえば「本屋さんを作りたい」というプランや、「離婚のプロセスをカードゲームにしてわかりやすく伝えたい」というプランに、お金を払ったことがあります。
クラウドファンディングには、何かしらの返礼があります。個人的には、ふるさと納税をすると返礼品がもらえるのと似ている気がしています。返礼としてもらえるものとしては、たとえば本屋さんがオープンした時に特製メッセージをいただけたり、離婚のカードゲームができた時は実際にその商品が届いたりとプランによってさまざまです。
特製メッセージをもらうためだけに、私は本屋さん企画にお金を払ったのでしょうか。決してそれだけではありません。私は元々本が大好きで、ぜひその場所に本屋さんがあってほしいと前から思っていたので、オープンすれば私の願いも叶うのでぜひ実現してほしかったのです。実際、オープン後にいそいそと店を訪れ、「この場所ができてうれしい」と心底そう思いました。完成までのワクワク感まで楽しめて、とても素敵な企画だったと今でも思っています。
プロセスエコノミーのメリット
本書には、プロセスエコノミーとして制作過程を公開することのメリットが3つ挙げられていました。ひとつめは、先ほどのクラウドファンディングのように、完成する前から資金を調達できるありがたさ。そしてふたつめは、クリエイターの寂しさの解消になるということ。確かに作業をひとりで続けるよりは、応援してくれて待っていてくれる人がいるほうが、頑張る気持ちになるというものです。
そして3つめは、長期的なファンが増えるということ。実際、私は本屋さんがオープンしてから喜んで何度も足を運びました。オープン前のプロセスも知っているからこそお店に親しみを感じ、そこで本を買うことを喜びにすら感じていました。
プロセスエコノミーでは、消費者は、その店やモノだけでなく、その裏にある背景や過程までもを深く味わうことができるのがいいところです。どうせお金を使うのなら共感できるモノや大好きな世界観にお金を使い、自分が満足するものが出来上がる過程を楽しみたい、そんな風に考える人は、今後も増えそうです。
【書籍紹介】
プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる
著者:尾原和啓
発行:幻冬舎
あなただけの物語を、走りながらさらけ出そう! 絵本で稼ぐのではなく、絵本を作っている過程をオンラインサロンで売る。CDで稼ぐのではなく、CDデビューまでの道のりをライブ配信で売る。人はプロセスに惹きつけられる。なにかを作り出すすべての人にとって、プロセスエコノミーは武器となる。
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