温暖化が進み、今後もさらに気温が上昇するおそれがあると言われているこのごろですが、酷暑をしのぐにはどのようにしたらいいのでしょうか。砂漠や熱帯などの厳しい環境で生きている動物たちに学んでみました。
暑さから逃げる動物たち
真夏に人はどうやって暑さをしのごうとするでしょうか。よくニュースで見かけるのは、炎天下に海やプールに浸かる姿です。公園で水を浴びる人の姿や、水を飲む人も映し出されることが多いようです。人は暑くなると水を求めるのかもしれません。
実家の犬は、夏の暑い日は、家の中のクーラーがよく効いている場所を探し、そこに寝転んで静かに過ごしていました。暑い時に無理して散歩に出かけ、高温となったアスファルトで足の裏をやけどするよりも、ずっと賢い身の守りかただったと思います。
身体を冷やすための行動
暑い盛りに涼しいところで昼寝をして過ごす習慣を持つ人もいます。たとえばスペインのシエスタなどがそうで、昼の時間は仕事を一斉に休み、休憩を取るというものです。1日のうち最も暑い時間に出かけずに済むので、暑さ対策にもなっているのです。
『40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか』(永島計・著/化学同人・刊)には、「もっとも重要なカラダを冷やす道具は行動である」とあります。人間は水浴びをしたり、日陰に逃げたり、昼寝をするなどという行動によって暑さから体を守っているというわけです。
動物たちの工夫とは
本書には「人以外の生き物の暑さ対策」について書かれている部分があります。そのなかで興味深いのは、夏眠です。冬眠する動物がいるのは知られていますが、なんと夏眠する動物がいるのだそうです。カリフォルニアの砂漠に暮らすカクタスマウスは1日数時間、モハベリスは、数週間から数か月も夏眠してしまうというのです。
夏に長時間眠ってしまったら脱水してしまうのではと心配になりますが、水分をほとんど必要としない状態を保つことができるのだそうです。起きたら涼しい時期になっているわけですから、夏眠はうらやましい機能です。
夜行性で暑さを避ける
また、普段は昼に生息しているのに、暑い時期だけ夜行性になる小動物もいるそうです。これも最も暑い時間は寝てしまうわけですから人間の昼寝に近い部分があるのかもしれません。
人間も、暑い夏だけ夜行性にするというのはもしかしたらいいアイデアかもしれません。日没してから出社して、日の出のころに自宅に戻れば、太陽にジリジリ照らされて体力を消耗したり、スーツが汗まみれになることもないのです。特に、外で作業をしなくてはならない仕事の人は、大助かりなのではないでしょうか。
サマータイムで暑さ避け
夏に始業時間などを1時間早めるサマータイムという方法があります。たとえば会社の始業時間が午前9時だった場合、それが午前8時に早まり、終業時間は16時となるものです。日本では導入されていませんが、欧米では多くの国で取り入れられています。
サマータイムを導入すれば、涼しい時間に出社することができますし、退社後はまだまだ暗くならないので自由に使える時間も増えるのです。最も暑い時間を避ければ、快適に過ごすことができそうです。
ただ、大切なのは暑さから逃げるだけではいけないということ。本にも「40℃になるのを漫然と憂うより、今できる改善の余地は多くあると考える」と書かれていました。フランスのパリでは気候変化などへの対策として、2030年までに街の50%を緑地化する計画です。今後、こうした流れは日本でもどんどん生まれてくるかもしれません。
【書籍紹介】
40℃超えの日本列島でヒトは生きていけるのか
著者:永島計
発行:化学同人
夏が暑いのは当たり前。しかし、体温以上の「命に関わる危険な暑さ」に、人体は対応していけるのだろうか。本書では、身近であるにもかかわらず、十分に理解できているとは言い難い「人間の体温調節」のしくみに焦点を当てる。体温はどのように決まっているのか、カラダを冷やすしくみ、温度の感じ方、ヒト以外の動物の暑さ対策、熱中症はなぜ発症するのか、運動と体温の関係など、さまざまな側面からその精緻なメカニズムを解き明かす。猛暑を乗り切る知恵が得られる1冊。
楽天koboで詳しく見る
楽天ブックスで詳しく見る
Amazonで詳しく見る