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2021/12/13 6:15

癒しじゃないの? 江戸時代「レンタル猫」の意外な仕事——『絵で見る江戸の女子図鑑』

江戸時代の人はリサイクルを考えたり、おしゃれに気を使っていたりと、現代に近いところがあります。そして江戸時代の女性の職業にも、現代とかなり通じるものがあったようです。

 

働く江戸の女性

江戸時代の女性の仕事と聞くと、ついつい思い浮かぶのは大奥でのおつとめや吉原の花魁など、華やかな世界です。しかし、庶民の世界でも女性は大活躍していました。

 

江戸時代の絵には、行商で、魚やアメなどさまざまなものを売り歩く女性の姿が多く描かれています。また、小間物屋や茶屋などで忙しく働く女性も大勢いました。時代劇にもよくお茶屋の娘さんが出てきますよね。

 

江戸時代のレンタルペット「猫屋」

絵で見る江戸の女子図鑑』(善養寺ススム・著/廣済堂出版・刊)の「女性の生業百姿」の項目には、江戸時代の女性の仕事がたくさん紹介されています。それを見ると、当時の賑やかさが垣間見えるようで、楽しくなります。

 

なかでも驚いたのは「猫屋」。猫を売ったり貸したりする仕事があったようなのです。当時はウサギをペットとして飼うのが大流行していて、かなりの高値で売買もされていたようですが、猫を売る女性もいたのですね。

 

現代でもレンタルペットという業種がありますが、これは寂しい現代人のひとときの心の癒しのために貸し出されているもの。しかし江戸時代は、猫はネズミよけに貸し出されていたそうで、また別のニーズがあったようです。

 

江戸時代のスタイリスト「すあい」

また、依頼を受けて着物や小物を仕入れ、コーディネートをして販売する「すあい」という仕事もありました。本には「セレクトショップのようなもの」とあるので、彼女が買い付けてくる品を楽しみにしている女性たちもいたのでしょう。

 

江戸時代の女性はアクセサリーは髪飾り以外はほとんど付けなかったというので、きっと素敵な櫛やかんざしなどもあったことでしょう。買い付けは国内に限られていたのかそれとも舶来品もあったのかも気になるところです。

 

江戸時代の結婚相談所「口入れ屋」

新鮮だったのは「口入れ屋」です。口入れ屋が職業紹介業だということは知っていたのですが、なんと結婚相手も紹介してくれていたそうなのです。ハローワークと結婚相談所の兼業は、考えようによってはとても合理的です。たとえば同業の人と結婚したいというニーズにもすぐに応じることができそうです。現代日本でもこうした形態の業種があってもいいのかもしれません。

 

さらに、長屋に入居する際の保証人にもなってくれていたそうなので、人を介するよろずのことに関わっている奥深い職業だったようです。転職、結婚、転居と人生のさまざまな転機に口入れ屋が寄り添っていたことが想像できます。

 

江戸時代のプロデューサー「御次」

大奥にも興味深い役職がありました。「御次(おつぎ)」という、大奥での宴会の準備をしたり、自らも芸を披露したりする係です。さまざまな芸をすることができ、さらに周囲の心をひとつにして場を盛り上げる技術なども必要とされたので、芸人としてだけでなく、イベントプロデューサーとしての業務も担っていたようです。

 

本によるとイベントは季節ごとに行われていたようなので、どのような演出にするか毎回趣向を凝らしていたのではないでしょうか。また、芸を行う様子を見初めた大名などからお声がかかることもあったそうで、大抜擢されるチャンスのある魅力的な地位だったようです。

 

江戸時代でも女性はさまざまな工夫をしながら仕事をこなしていたであろう様子が伝わってくると、こちらも頑張ろうという気持ちにさせられます。現代は江戸時代よりはずっと職業選択の幅も広がり、自分がやりたいことに挑戦する機会もたくさんあり、江戸時代の女性たちから見たらうらやましく思われるところもあるのかもしれません。

 

【書籍紹介】

絵で見る江戸の女子図鑑

著者:善養寺ススム
発行:廣済堂出版

錦絵のリメイクを中心に、江戸時代に生きた女性たちのくらしとファッションを解説。習い事いっぱいの江戸娘。三行半だけじゃ離婚できない!女性の仕事いろいろ。江戸時代に着物や髪型はいろいろ変わった!

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