RPG(ロールプレイングゲーム)を題材としたマンガ・アニメは数多くある。基本的にはゲーム内容と同じ、勇者ご一行が敵を倒しながら旅をして、最後にラスボスを倒して世界に平和がもたらされるというものがほとんどだ。
しかし、なかには一風変わった作品もある。たとえば『灰と幻想のグリムガル』は、RPGの敵側、たとえばザコキャラであるゴブリンの生活を丹念に描くことで、やられる側の視点を取り入れていた。
今回取り上げるのは『葬送のフリーレン』(山田鐘人・原作、アベツカサ・画/小学館・刊)。2021年のマンガ大賞を受賞した作品だ。
世界に平和が訪れたその後の勇者たち
この作品は、魔王を倒した勇者一行の後日譚を描いている。RPGは、勇者たちが魔王を倒すところで終わる。しかし冷静に考えれば、その後の人生のほうが長い。この作品では、勇者たちは10年もの間旅に出ていた。しかし、人生80年と考えれば、10年は人生のほんの一部。戦いを終えたその後、勇者たちはどのような人生を送っていくのだろうか。確かに興味が湧く。この視点が、『葬送のフリーレン』のおもしろさのひとつだ。
主人公は、エルフの魔法使い、フリーレン。エルフは非常に長寿な種族で、1000年以上も生きる。勇者や戦士、僧侶などのほかのパーティのメンバーは、人間とほぼ同じ寿命のため、フリーレンは彼らよりもさらに長い時間生きていかなければならない。老いていく他のメンバー。ほとんど歳を取らないフリーレン。この対比もおもしろい。
作品中に年老いた戦士がフリーレンに語るシーンがある。
人生ってのは衰えてからのほうが案外長いもんさ。
(『葬送のフリーレン(1)』より引用)
これは真理だろう。
物語はまだまだ続きそう
現在6巻まで刊行されているので、一気に読んでみた。シリアスな題材ながら随所に笑いもあり、読みやすい。絵柄も親しみやすく、スイスイと読み進められる。
しかし、作品の根底に流れるテーマは「老い」や「死」だ。前述した戦士の台詞のように、随所にハッとさせられるシーンがある。作品の見た目の雰囲気だけで読むと、時々心が苦しくなるときもある。それでも、適度にライトなテイストなので、エンターテイメントとして楽しめる作品だ。
この作品がどこまで続くのかはわからないが、6巻まで読んだ感じだとまだまだ続きそう。できれば、あまりだらだらと引っ張ることなく、物語の軸をぶらさずにエンディングまで進んでいってほしい。
【書籍紹介】
葬送のフリーレン
著者: 山田 鐘人, アベ ツカサ
発行:小学館
魔王を倒した勇者一行の“その後”。魔法使いフリーレンはエルフであり、他の3人と違う部分があります。彼女が”後”の世界で生きること、感じることとはーー残った者たちが紡ぐ、葬送と祈りとはーー物語は“冒険の終わり”から始まる。英雄たちの“生き様”を物語る、後日譚(アフター)ファンタジー!