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2023/1/8 21:15

空港で働くグランドスタッフの秘密の話! フライトキャンセルでてんてこ舞い!? 空港をヒールで大爆走!?~注目の新書紹介~

年末年始、帰省や家族旅行などで久々に飛行機を利用したという人も多いのではないでしょうか。私はいまだに飛行機に乗るというだけでもワクワクします。車で行ったらおよそ20時間かかる東京・札幌間が飛行機なら1時間半! まさに時空を歪めるワープ装置。そして、そのワープ装置が並んでいる空港についた時点でテンションアップ。空港って近未来の秘密基地みたいと思うのは私だけ……!?

 

 

羽田の元グランドスタッフが仕事を語る

 

さて、今回の新書は空港のカウンターやゲートで働くグランドスタッフの裏側を紹介する知られざる空港のプロフェッショナル グランドスタッフの舞台裏』(佐野倫子・著/交通新聞社新書)。著者の佐野 倫子さんは、JALの元グランドスタッフ(羽田空港勤務)。その後、空港業界就職誌『月刊エアステージ』の編集を経てフリーとなり、現在は小説家&エディターとして活躍しています。著作に小説『天現寺ウォーズ』などがあります。

グランドスタッフが震え上がる言葉とは?

第1章「宿命の対決!? キャビンアテンダントVSグランドスタッフ」では、乗客が接する機会が多いキャビンアテンダントとグランドスタッフを比較していきます。制服&ヘアメイクはどう違う? 給与はどうなっている? それぞれの特徴がよくわかります。

 

本書のメインディッシュとも言えるのは、グランドスタッフの実体験が盛り込まれた第2章「実録! グランドスタッフ現場別レポート」と第3章「ここだけのお客さま&グランドスタッフ(秘)エピソード」。グランドスタッフの4つのメイン業務「カウンター業務」「ゲート業務」「アライバル業務」「コントロール業務」で起きがちなトラブルが明かされていきます。

 

いかにも大変そうなのは、悪天候や整備の不具合などで飛行機が運行しなくなったフライトキャンセル時のカウンター業務。“フライトキャンセル”という言葉ほどグランドスタッフを震え上がらせるものはない、と佐野さんは言います。

 

当日フライトキャンセルになってしまった場合、そのことを知らずに窓口に来た人やなんとかしてほしいと訴える人に対応するのが仕事。他社便も含めて代替案を検討し、長時間に及ぶ場合はミールクーポンやホテルの予約なども提案します。大雪で欠航が長引き、イライラが募ったお客様が騒動を起こす……なんて事態も。

 

全員分のホテルは確保できるのか? 上役である責任者に聞いてからアナウンスすべきか? はじめのころは目の前の状況に必死だった佐野さんですが、何度か経験するうちに、もっとも大切なのは「迅速に、何度も最新情報をお客様と共有すること」だと気づいたとか。

 

ほかにも、遅刻してしまったお客様の荷物を担いで一緒にダッシュしたり、「飛行機の遅れで損失が出た」と補填を迫るお客様に対応したりと細かいトラブルは日常茶飯事。今何が起きているのかを推理して、機転を利かせて迅速にサポートする……。名探偵と現場の刑事をかけ合わせたような働きぶりです。

 

第4章「空港で働くプロフェッショナルたち」では、グランドスタッフ以外の、運航を支援する「グランドハンドリングスタッフ」や飛行ルートを決定する「ディスパッチャー」などの職業にも触れられています。多くの人々のチームプレイによって、安全に飛行機が運航されていることがわかります。

 

空港での恋愛事情も含めて、ざっくばらんに明かされる仕事の裏側は、まるで友達の打ち明け話を聞いているかのよう。読み味は軽めですが、安全第一と臨機応変が求められるグランドスタッフの矜持は、多くのビジネスパーソンにとって共感できるはず。いつかお仕事ものとしてドラマ化されそうなエピソードも多数。空港であれこれ想像が膨らむ一冊です。

 

【書籍紹介】

知られざる空港のプロフェッショナル グランドスタッフの舞台裏

著:佐野 倫子
発行:交通新聞社

世界のすばらしい空港ランキング世界2位(2022年)、定時出発率世界1位(2021年)など、安全性・快適性で世界的に高く評価されている羽田空港。その裏には、空港を支える多くのプロフェッショナルがいます。本書は乗客にとって空港でもっとも身近な職種、グランドスタッフを中心に、空港のさまざまな職種を元グランドスタッフが執筆。仕事のリアルな舞台裏や驚きの接客術はもちろん、アフターコロナで需要が高まる航空業界を目指す人へのアドバイスやマル秘プライベートなど、経験豊富な著者ならではのリアルな視点で紹介します。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。