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自己啓発
2023/1/17 21:30

格闘技ドクター・二重作拓也が解き明かす「真の強さ」とは?−−『強さの磨き方』

筆者が2023年最初にアップするこの原稿は、新年の誓い的な内容にしたい。実は、自覚している性格がある。承認欲求がすごく高いのに自己肯定感がきわめて低いのだ。去年はこういうアンバランスな状態に陥っているのに気づくことが多かった。

 

弱いからこそ強くなれる?

常にバランスの良い自分であり続けるには、どうしたらいいのか。簡単に言ってしまうなら、打たれ強かったり忍耐強かったり、さまざまなものに対して強くあれればいいと思う。そこで新しい年が明けた今のタイミングで手にしたのが、『強さの磨き方』(二重作拓也・著/アチーブメント出版・刊)という本だ。

 

著者の二重作氏は医師であり格闘家でもあり、「格闘技医学」という新しいコンセプトの提唱者だ。こう書くと、ほとんどの人がまさに文武両道を絵に描いたような“強い”人を思い浮かべるに違いない。筆者もそうだった。しかし二重作氏は、意外にもまえがきであっさりカムアウトしてしまう。

 

もともと病弱で運動音痴、ボールに遊ばれるような子どもでした。8歳の時、体育の授業で行われた相撲で、自分より小柄な同級生に投げ飛ばされ、顔中が砂だらけになりました。「強くなりたい!」。そう思ってカラテを始めました。

『強さの磨き方』より引用

 

そこから快進撃が始まる。中学からは試合に出場すれば入賞という状況が続き、17歳で高校生代表選手になった。ただ、アメリカで行われた試合で、アフリカ系アメリカ人の選手が繰り出した“見たこともない蹴り”で倒されてしまう。こうして「強さを追究する旅」が本格的に始まった。レベルの差はもちろんあるだろうが、まず自分は弱いとはっきりと認識することが強くなるための条件なのかもしれない。

 

格闘技医学というコンセプト

医師を目指すことを決心したのも、人間が宿す本当の強さを知りたかったからだ。研修医をしながら極真カラテの全日本ウェイト別出場を目指し、成功と挫折を重ねる過程で「格闘技医学」にたどり着く。スポーツにおける強さの根拠をレントゲンやCTと共に解析する方法論だ。

 

強さを求めるなかで気づいたこと、それは、己の弱さです。「少しは強くなれたかもしれないな」と思える瞬間もあります。しかし、次なるハードシップの前では、その感覚も露と消えてしまいます。現在も弱さと格闘する毎日です。

『強さの磨き方』より引用

 

二重作氏は、自分が弱いことを認めているからこそ強くなれる余地がよりよく見えるのだと思う。中学生時代も研修医時代も、そのスタンスは変わらなかった。

 

求道者のアリーナ

人はなぜ強くなろうとするのか。二重作氏によれば、今の自分を超えることでしかたどり着けない場所があるからだ。こうした思いからスタートする本書で試みられているのは「答えの提示」ではなく、「問いの共有」にほかならない。筆者なりにたとえるなら、求道者同士が思いをぶつけあうアリーナといった趣の一冊に仕上がっている。

 

章立てを見てみよう。

 

第1章 強さと人間理解

第2章 弱さの見つけ方

第3章 強さの磨き方

第4章 強さのロールモデル

 

人間を理解することで強さを定義し、自分の弱さを見つけ、さまざまな方法で強さを磨き、さらにロールモデルから具体的な要素を抽出して身につける。この一連の流れは、誰にとっても自分ごととして投影しやすいはずだ。

 

生きるという選択

筆者が激しく惹かれたのは、第4章で紹介されているプリンスの言葉だ。本書の装丁が紫のトーンで整えられているのも、そのあたりが理由なのかもなんて考えてしまう。1994年にプリンスの生誕地ミネソタ州ミネアポリスで聖地巡りをした筆者は、この本で『レッツ・ゴー・クレイジー』という曲が紹介されていることがひたすら嬉しい。

 

この曲の“better live now, before grim reaper come knocking on your door”というフレーズが一番好きだ。あえて訳すなら、「死神が玄関のドアをノックしに来る前に、今を生きるべきだ」という意味になるだろうか。

 

「おわりに」に次のような一文が記されている。

 

強さというテーマを中心にしながらも、実践的人間学としての「生きる」について書いてみたい。どうせいつかは終わるのだから。たとえどんなことがあっても「生きる」を選択する人をひとりでも増やしたい。私もそうするから。

『強さの磨き方』より引用

 

強さを磨いていくという過程は、自分の弱さを知り、ときとして抗いときとして迎合しながら、とにかく生きることを選ぶという行いの積み重ねなのだと思う。

 

私の考える強さは、あなたの考える強さとおそらく違うはずです。その違いを心から尊重し、共通性を全身で尊び合い、強さを磨き続ける。本書が小さなセコンドになれば幸いです。

『強さの磨き方』より引用

 

本当の強さというのは、マチズモという感覚だけで表現しきれるものではない。もっとしなやかな質感のものかもしれないし、ひょっとしたら想像よりはるかに柔らかいものかもしれない。本書を読んだ後、人はそれぞれ「強さの向こう側にあるもの」を見つけるだろう。人と違う部分があるのは当然だが、同じ部分もあるはずだ。形はいろいろだろうが、ひとつだけ共通するのは、二重作氏が言う通り「生きる」を選択することだ。だから、筆者もそうすることにした。

 

【書籍紹介】

強さの磨き方

著者:二重作拓也
発行:アチーブメント出版

格闘技×現役医師が解き明かす「強さ」の根拠。「強さ」とは何か? 人はどうしたら、本当に強くなれるのか?「強さ」の向こう側にあるものとは?

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