本・書籍
2023/2/17 21:30

並列的多読のススメ。新たな発想を生み出す読書術とは?『本は10冊同時に読め』

家の中ををきれいにしたいと思い立ち、奮闘努力を続けている。ゴミ袋を片手に家を歩き回り、不要品を探し出しては捨てるを繰り返していたら、少しはましになってきた。しかし、問題は本である。

 

本を捨てられない

私は本を捨てることができない。それでも、なんとかしなくてはと、捨てる本を入れる箱を用意してみた。そこにぽんぽんと本を放り込んでいけば、本棚はみるみるうちに整頓されていく。……はずなのだが、いざ捨てる段になると、本を取り出しては眺め、つい読みふけってしまい、別れの決心がつかない。これでは、箱を作る意味がない。

 

乱読なので、今まで様々なジャンルの本を買ってきた。書評の仕事をするようになってからは、とにかく手当たり次第読むようになった。加えて、書評欄に取り上げて欲しいという依頼と共に、新刊書が送られてくるので、もはや収集がつかない。

 

書評を生業としている方たちは、増え続ける本を一体どうやって整頓しているのだろう。私と同じように本に埋もれて生活しているのだろうか。

 

それを知りたくて、成毛眞の『本は10冊同時に読め』(三笠書房・刊)を読んだ。今さら言うまでもないが、彼は日本マイクロソフトの社長を経て、投資コンサルティングの会社を設立した実業家だ。読書量が多い方として知られており、私の胸には敏腕の実業家というよりも、「書評サイトHONZの代表」として刻印されている。

 

HONZは面白く、取り上げられるジャンルも幅広い。そのサイトの主催者なのだから、献本も大変な数だろう。当然、本の整頓には頭を悩ませてきたに違いない。私がどうしてもできない本の断捨離方法も会得しているのではないか。そう期待して『本は10冊同時に読め!ーーー本を読まない人はサルである』を読み始めた。

 

意外な展開

だが、しかし……。

 

私は「本は捨てない、借りない、貸さない」主義なので、小学生のころに買った本もすべてとってある。

(『本は10冊同時に読め!』より抜粋)

 

これはすごい。捨てるどころか、すべてとっておく人だったのか。自宅には手元に置いておきたい本と、資料として利用できる本を所蔵しているといが、その数、なんと約1万5000冊。別荘にはその倍の本があり、古本屋を開けるくらいだという。

 

『本は10冊同時に読め!』は2013年に出版された本だから、2023年現在も本は増え続ける一方だろう。新しく買った本を収蔵するためにすでに新しい別荘を購入しているかもしれない。本の断捨離方法を知りたくて、 『本は10冊同時に読め!』を読んだ私はかなり間抜けである。

 

自分独自の生き方を目指して

そう気づいた私は、新たな気持ちで読み始めた。この本は他の人とは違う読書をすることによって独自の生き方を目指すためには何をしたらよいのかを教えてくれる。

 

ところで、私は書評するために読んでいる本には、付箋をはさむ癖がある。あとで読み返すところを記しておいたほうが原稿が書きやすい。しかし、この本については付箋ががいくらあっても足りなかった。すべてのページに印象的な文言があるため、付箋だらけとなってしまう。

 

中でも、とくに心に響いたのは、もし、人とは違う生き方をしたいと願うなら、みんなと同じ本を読んでいてはいけないということだった。

 

驚きの提案

読書術について、驚きの提案がなされている。それは「本は10冊同時に読め」ということだ。それも、様々なジャンルのものを同時並行的に読みあさっていくべきだという。

 

私はといえば、今まで本は1冊ずつ読んできた。最初から最後まで通して読み、面白いと思った本を再読するを繰り返すのが好きだ。けれども、著者はリビングやトイレの中など、ありとあらゆる場所に本を置き、それぞれの場所でそれぞれの本を同時並行的に読んでいくほうがよいと述べる。実際、著者の家のリビングには50冊以上の本が置いてあり、寝室には2、3室、トイレにも3、4冊の本がある。

 

この読書法は私には無理だと、最初は思った。しかし、よく考えてみると自分も並列的に本を読んでいる。何しろ家中に本が散っていて、否が応でも並列的読書となってしまう。居間の本箱には旅行ガイドや中国関係の本が無秩序に並んでおり、寝室には小説が重なって置いてある。自分の部屋には、仕事に使う資料や本が置いてあり、トイレには漫画雑誌、台所にはレシピ本という風に、いつでもどこでも本に手が届く状態だ。

 

『本は10冊同時に読め!』には、著者独自の読書術が満載なので、是非、読んで確かめていただきたい。ただひたすらに本を読んできた人が持つ書物への愛と尊敬を垣間見ることができて面白い。子どものころから本に親しみ、大人になってからもなお、脇目も振らずにただ読み続け、もはや本なしでは生きていけなくなった「本の虫」の告白がそこにはある。

 

ところで、本を断捨離するヒントを会得したくて、『本は10冊同時に読め!』を読んだのだが、それは逆効果だったようだ。読後、私は著者が紹介している本が読みたくなり、次々と注文してしまったからだ。そして、今、家の中を見回しながら、届いた本をどこに置こうか思案中である。私には本を断捨離するのは無理だと思い知ったところである。

 

【書籍紹介】

本は10冊同時に読め!

本は最後まで読む必要はない、仕事とは直接関係のない本を読め、読書メモはとるなーこれまでの読書術の常識を覆す、画期的読書術!あらゆるジャンルの本からの情報を組み合わせることで、新しいアイデアが生まれる。「すき間時間」で本を読むことで、集中力が増す。どこを読み飛ばすのかを判断していくことで、決断力と情報収集力が身につく。本を10冊同時に読めば、10倍人生が面白くなる。

著者:成毛眞
発行:三笠書房

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