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2023/5/7 21:00

湖池屋が一番最初に発売したポテトチップスの味は? 意外に知らない国民食・ポテトチップスの秘密~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。みなさんは何味のポテトチップスがお好きですか? 子どものころは、辛かったり、酸っぱかったり、ちょっと変わった味がお気に入りで、うすしおはなんとなく損な気がして敬遠していました。でも、大人になってうすしおの良さに気づいた感があります。

 

これと似たような例なのがアイスです。同じ値段なのにシンプルなバニラ味を買うのがもったいないと、チョコやストロベリーに目が行きがちでした。ところが、ある年齢からふとバニラが美味しいと思うように! といってもアイスクリームチェーンのサーティーワンに行って、バニラ味を頼む境地にはまだ至っていません(笑)。

 

ヒット本を連発する著者の新著

さて、今回の新書はポテトチップスと日本人 人生に寄り添う国民食の誕生』(稲田豊史・著/朝日新書)。著者の稲田豊史さんはライター、コラムニスト、編集者。映画配給会社、出版社を経て独立。『映画を早送りで観る人たち』(光文社新書)、『オトメゴコロスタディーズ』(サイゾー)、『「こち亀」社会論 超一級の文化史料を読み解く』(イースト・プレス)、『ぼくたちの離婚』(角川新書)など著書多数です。

日本独自の「のり塩」からすべては始まった!

スーパーのスナック菓子コーナーで一番いい場所に並び、日本人がこよなく愛するポテトチップス。本書では国産ポテトチップスの歴史を追っていきます。第1章は「ジャガイモを受け入れた戦後日本―日本食化するポテチ」。

 

そもそも国産ポテトチップスの元祖は1950年に発売されたアメリカンポテトチップ社(東京)の「フラ印アメリカンポテトチップ」。こちらは当時の価格で35g入りが36円。現在の物価に換算するとおよそ800円前後とか! 今で言う、フルーツタルトや高級チョコレートの立ち位置といったところでしょうか。しかし、ジャガイモは戦時中の代用食というイメージがあり、大苦戦を強いられたといいます。

 

それでも、ポテトチップスの可能性に目をつけたのが湖池屋の当時の社長・小池和夫さん。たまたま行った飲み屋でポテトチップスを食べてその美味しさに感動した小池さんは、もしお菓子ほどの値段で大量に作れたら売れるだろうと何年もかけて試行錯誤を始めたのだそうです。

 

その結果生まれたのが「ポテトチップス のり塩」(1962年発売)。なんと、湖池屋が最初に商品化したのは純和風ののり塩だったのです! しかも唐辛子を入れて味にキレを出し、日本人の舌に馴染み深い米油で揚げていたそうです。「日本におけるポテトチップスの運命はこの時点で決まっていた……最初から“和風”だったのだ」と著者の稲田さん。ポテトチップスが国民的おやつとなったのは、こののり塩味の開発が大きかったんですね。

 

ポテトチップスを切り口に、高度成長期から現在までの時代背景や、日本人の心の変遷までも映し出す一冊。社長をはじめ各メーカーへの取材も丁寧に行われ、裏話満載のポテトチップス史は読み応えたっぷり。それでいて読みやすい文章でうまくまとまっているのだから、ページはポテトチップスのように止まりません。アラフォー、アラフィフにはノスタルジーも隠し味。お好きなポテトチップスを用意してお楽しみ下さい。

 

【書籍紹介】

ポテトチップスと日本人 人生に寄り添う国民食の誕生

著:稲田豊史
発行:朝日新聞出版

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。