哲学は私たちの日常生活には関係ないこと……。そんなふうに思っている人も多いかもしれません。しかし 『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0』(富増章成・著/Gakken・刊)を読んでみると、哲学は私たちの生活にとても身近で、日々のモヤモヤを解決してくれるツールになるかもしれないと感じることができました。
『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0』では、現代人と哲学者がYES・NOの異なる視点からひとつのテーマについて議論していきます。「わかるわぁ」「私はそうは思わないな」と自分の心の声を交えつつ、最終的に自分ならこう考えると結論に結びつけられる内容になっています。
登場する哲学者は、ニーチェにカントにアリストテレス、マルクスと一度は名前を聞いたことがあるであろう歴史上の人物たち。最終章には、現代の論破王ことひろゆき氏も参戦! 一体どんな本なのかご紹介しましょう。
草食系男子 vs プラトンによる「恋愛ディベート」
コスパ重視の現代において、恋愛の価値観は大きく変わろうとしています。最近では「恋愛・結婚のオプション化」なんて言葉も出てきましたよね。こんな現代を古代ギリシアの哲学者プラトンさんはどのように議論していくのでしょうか?
「恋愛ディベート」では、恋愛に興味のない草食系男子くんが「恋愛を避けて生きるのはアリ?」というテーマに対してYESの立場、愛の神・エロースについて語りあった内容が綴られた『饗宴』を書いたプラトンさんがNOの立場でディベートしていきます。
プラトン「最近の若者は、恋愛をしないらしいな。告白もしないって話だぞ。」
草食男子「そうですね。僕も恋愛不要派です。告白したら断られそうで怖いですし、デートもいろいろと段取りを決めるのがおっくうで、もし失敗したらと思ったら恐ろしくてできません。」
プラトン「それはもったいない。古代ギリシアでは、恋愛がとても重視されていたんだ。私が書いた『饗宴』という対話篇があるんだが、これも恋愛論なんだよ。これは大いに恋愛をして魂を高めていこうという話なんだ。」
(『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0』より引用)
この議論がどのような盛り上がりを見せるのかは、ぜひ本書でお楽しみください。他にも、さとり世代 vs ニーチェによる「そこそこで生きるのは悪いこと?」や、港区女子 vs ポストモダン思想家による「ブランド志向はよくないことか?」など今を生きる私たちには興味深いテーマが20個も展開されています。
AI vs デカルトの「AIは人類を超えられるのか?」
個人的に20のテーマの中で面白いと感じたのは、AIとデカルトとのディベートです。デカルトさんと言えば「我思う、故に我在り」が有名ですが、なぜこの言葉が導かれたのかもAIとのディベートで明らかになっていきます。
さらに、デカルトは『方法序説』という著書の中で機械には心がないから、永久に人間を超えることができないと語っているのです。
デカルトは『方法序説』のなかで「…我々の身体とよく似ておりかつ事実上可能な限り我々の行動をまねる機械があったとしても、だからといってそれが本当の人間なのではない、…」と説いている。このようにデカルトは、機械は反応することあできるが、決して心はもてないと考えていた。
(『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0』より引用)
この考えを1600年代にすでに唱えていたって「あなた何者!?」と驚きました(笑)。 『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0』では、こうした哲学の知識もコラム的に紹介してくれています。気になった哲学者についてさらに深く知ることができますよ。私も早速、デカルト師匠の書籍をいくつかポチってしまいました。
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20のテーマに合わせてたくさんの哲学者が登場するので、今風に言えば「推し哲学者」を見つけるのも楽しいかもしれませんね。「いやぁ〜、この人の考えには賛同できないわ」という人もいれば、私にとってのデカルト師匠のように「すごい!」とか「もっと知りたい」と思える人も現れるはず。気になるテーマから深掘りしていく楽しさもぜひ実感してみてくださいね。
ラスボスとして登場する現代人代表は、ひろゆき氏!
そして最後に登場するのが、帯にもいらっしゃるひろゆきさん。論破王なんて言われていますし、さまざまな番組でディベートの様子が取り上げられたり、SNSでも有名な「それってあなたの感想ですよね?」が飛び交ったりしているので、ディベートの本には適任ですよね。気になるテーマは「論破するのはダメなこと?」で、対戦相手は哲学マニアさん。
個人的にはアリストテレスとかニーチェとのディベートが見たかったなぁ〜と思ったのですが、最後にふさわしい議論が繰り広げられていますので安心してください(笑)。議論の大筋とは関係ないですが、ひろゆきさん曰く「それってあなたの感想ですよね?」は過去に1回言っただけのフレーズなんだったそう。
ひろゆき「『それってあなたの感想ですよね』も、おいらは1回いっただけなんですよ…。で、本編に戻ると、おいらだってその大変さを軽んじる気はないんですよ。でも、その『感想』で課題が解決するかというと、そうではないわけです。感想をもつのは自由なのですが、物事を前に進めるためには事実と感想は分けて、事実ベースでどうすべきかを考えた方がいいでしょう。」
(『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0』より引用)
安易に「それってあなたの感想ですよね?」を使っていたみなさんにも読んでほしい! と思いました。ひろゆきさん好きな方にもおすすめです。
さまざまなテーマから哲学を知ることができる 『21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0』は、私たちの暮らしに新たな“視点”を与えてくれます。順番に読むのもよし、気になったテーマから読んでみるのもよし、現代人と哲学者たちのディベートを読みながら「自分ならどう考えるか」と自分自身と向き合うこともできるはず! 楽しみながら読んでいるうちに、哲学が身に付く一冊です。
【書籍紹介】
21世紀を生きる現代人のための哲学入門2.0
著者:富増章成
発行:Gakken
現代人の疑問、哲学者ならどう答える!? 新感覚の哲学書。悩みながら生きる人はみな立派な“哲学者”だ−−現代人も、歴史上の哲学者も、対等に考え、討論する。全く新しい哲学入門、ここに誕生。