本・書籍
2016/12/25 18:00

“頑張れ!”や“ちゃんとしなきゃ”に疲れたら――2017年は「適当」で「いいかげん」に生きてみよう

「今日のご飯、なに?」

結婚当初、「これから帰るよ」と夫から電話があった際に聞かれたくない言葉がこれだった。正確には、聞かれると胸が苦しくなる言葉。

 

別にご飯を作るのが嫌なわけではない。たとえば夫が好きな献立の日は、声を大にして答えられる。でも、あまり好きじゃないだろうメニューの日や、名前は特にない「ありあわせの野菜と肉を炒めたもの」の日とか、昨日の具とあまり変わり映えしない「味噌汁」などは、なんだか言いにくかった。だからいつも「うーん、別に変わったものじゃないんだけど……」とか「まだ決めてない……」とか、ごにょごにょと小さな声で誤魔化していた。

 

今日のご飯を夫に伝えて、がっかりされたくなかったから。期待を裏切るような返事をしたくなかったから。今思えば、慣れない家事にいっぱいいっぱいだったのかもしれない。

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「がんばって!」って言わないで

大学時代、友人が「”頑張れ”って言葉が好きじゃない」と言っていた。

 

あの頃の私には、その理由がよくわからなかった。でも、結婚して出産し、一人目がどうにも寝てくれない子で睡眠時間がほとんどなく、精神的にも追い詰められていた頃。あまりにも夜泣きがひどいことを先輩ママ友や支援センターのスタッフさんに相談したとき、「わかる! うちも大変だったよー。いつかは終わるから、がんばって!」などと言われると、内心ひどく不快だった。

 

今思えば、親身になってアドバイスをして励ましてくれた、心から感謝すべきことだったのに。初めての育児で余裕がなかったあの頃は、「がんばって」って言われても、そんなこと言われたって、これ以上どうしたらいいの?と思ってしまっていたのだ。

 

“ちゃんとしなきゃ”に疲れたら

いずれの場合も、「奥さんになったんだから、ご飯はしっかり作らなきゃ」、「旦那さんを喜ばせなきゃ」、「子どもを上手に育てなきゃ」と、~しなきゃ!にがんじがらめにされていたから、しんどかったのだろう。

 

今でもそう。

 

家はいつも綺麗にしなきゃ、子どもを良い子に育てなきゃ、人に迷惑をかけないようにしなきゃ。外出先でも家の中でも、そんなことばかり気になってしまう。

 

それで、たまにちょっと疲れてしまう。

 

そんなとき、以前テレビで見て以来ずっと気になっていた心屋仁之助さんの本を読んだ。『いいかげんに、生きる』(朝日新聞出版・刊)。「他人の評価」や「世間の目」を気にして行動したり、「自分の思い」よりも「他人の思い」を大事にしたり、「自分がやりたいから」ではなく「周りに迷惑をかけないようにやる」ような人は、「いいかげんに生きてみよう」。そう仁さんは述べていた。いいかげんに生きる? そんなこと、できるのだろうか。許されるのだろうか。

 

「いいかげん」に生きる方法

仁さんが薦める「いいかげんに生きる」方法は、どれもとても興味深かったが、本書の中で特にハッとした言葉をご紹介しよう。

 

・人から、なぜか褒められることを大事にする

「自分では、そんなにすごいと思っていない」のに、やけに人から褒められたり頼まれることってないだろうか。それを大事にしてほしい、と仁さん。他人は難しいと思うことが、自分には苦もなくできるということは、つまり「才能がある」ということだから。人から褒められたときは、自分では気づいていない才能に気づけるチャンスかもしれない。

 

・「あ、簡単」と思った人のところに、答えは降りてくる
仁さんはカウンセラーのとき、悩みを聞いた後の第一声で「それ、簡単ですよ」と答えることが多いのだそう。悩みを「大変」という前提で見るから、大変なことになる。だったら、「簡単」という前提で見れば、簡単な答えが見えてくる。何か困難に直面したとき、「大変」と思うか、「簡単!」と思うかで、答えは変わってくる。

 

「いいかげん」で「適当」が”いい加減”

思えば、「いいかげん」という言葉はネガティブに捉えられがちだが、漢字で書くと「いい加減」。ちょうどいい具合、いいあんばい、ということ。同じように「適当」という言葉もあまり良い意味合いでは使われないことが多いが、ちょうどいい具合になることを意味する言葉のはず。むしろ、褒め言葉なのではないだろうか。

 

いつも周りを気にして、他人を気にして、自分の好きなように、思うままに生きられずしんどいという人は、仁さんの教えを参考に、「いいかげんでテキトー」に生きてみてはいかがだろうか。きっと、自分にとっての「いい加減」が見つかるはず。

 

ちなみに、私がよく人から言われるのは「3人も育ててて、偉いね。大変でしょ?」という言葉。幼子3人を1人で連れて電車で長距離移動をすることも、3人を連れてスーパーで買い物することも、抱っことおんぶを同時にしながら上の子の習い事を見ていることも、私にとっては「当たり前のこと」であり、端から「大変」だとも思っていない。

 

つい子どもにイライラしてしまうし、躾に悩んだり、毎日反省してしまったりもするけれど、私って結構子育てに向いているのかもしれない。思ったよりも、ちゃんと母親できているのかも。そう考えたら、凝り固まった体と心が、少し楽になった。これも心屋仁之助の魔法だろうか。

 

もうすぐ新しい年になる。2017年は、いいかげんに生きてみよう。もっと楽しい一年になりそうな気がする。

(文・水谷 花楓)

 

【参考文献】

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いいかげんに、生きる

著者:心屋仁之助

出版社:朝日新聞出版

 

いいかげんに生きると、ちょうど良い加減、好い加減がわかる──。適当、わがまま、常識はずれ、で生きてみる。超人気カウンセラー・心屋仁之助が説く「いいかげん」のすすめ。写真満載で見ているだけでも心がラクになる、満たされる一冊。

 

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