クレジットカード、キャッシュレス決済を取り巻く状況は日々刻々と変化。そんななかで生じる悩みや疑問をクレカの鉄人・岩田昭男師範が一刀両断に解決する連載企画。今回は、相変わらず落ち着く気配を見せない物価高に対抗すべく、日常使いで得する高還元クレカを岩田師範が厳選して紹介します!
【第29回】物価高を乗り切る最新のオススメカードを教えて!
【解説する人】岩田昭男
クレジットカード・キャッシュレス決済分野のオピニオンリーダーとして、30年以上取材・研究に携わる。『最強ポイ活大全-お得にポイントがどんどん貯まる!』(1870円/イカロス出版)が6月24日に発売。
【今月の悩める子羊】家尾守(いえお まもる)
東京近郊に妻と中学生の子ども2人と暮らす44歳会社員。育ち盛りの子どももいるなか、最近の物価上昇に夫婦で不安を感じている。クレジットカードのポイント還元でなんとか元が取れないかと考え、オススメのカードを訊きに道場を訪ねた。
(相談者の要望)
・日々の買い物でポイントがたまりやすいカードを教えて
・スーパーやコンビニで高ポイント還元のカードとは?
・ケータイ料金の支払いでより多くポイントをためる方法も知りたい!
この記事でわかること
いまや買い物する店舗によりカードの使い分けがますます必要に
師範 物価高に対抗できるカードを知りたがっとるのはおぬしか?
家尾 はい。食べ盛りの息子が2人もいるのに給料は上がらず、で。ポイント還元率の高いカードを作って、少しでも生活費に充てられればいいねと妻と話してたんですけど。
師範 ワシもスーパーに行くたび値札を見ては困惑しとるよ。
家尾 多くの食品が値上がりし続けているんで、最近は買い物はできるだけスーパーの特売日にまとめ買いをするようにしてます。
師範 そのうえで、ポイント還元も利用して生活費を抑えたいというわけか。それなら覚えておくべきは、「カードのおトク度は買い物するシーンによって異なる」ということじゃ。
家尾 というと?
師範 クレジットカードの基本ポイント還元率は最近では0.5%が一般的じゃが、なかには楽天カードやdカードなど還元率1%のものも多い。また、楽天ペイやd払いなどと組み合わせることでさらに還元率アップが可能じゃ。しかし、ここでワシが言いたいのは、利用店舗によって破格の還元率になるカードがあるということじゃ。
家尾 ふむふむ。その話、興味あります!
三菱UFJカードが新ポイントアッププログラムを開始!条件クリアで最大20%のポイント還元が受けられる
師範 例えば、三菱UFJカードは年会費永年無料で、1か月の同カードの利用合計1000円ごとにグローバルポイントが1ポイント(1P=最大5円相当)貯まる。つまり基本ポイント還元率は0.5%じゃ。ところがこの6月より「新ポイントアッププログラム」が開始。従来よりコンビニやスーパーなど対象店舗でカード払いするとポイント還元率が5.5%となる特典があったが、今後はこれが7%にアップする。さらに対象となる店舗にはオーケーやオオゼキ、東武ストアなどのスーパーが含まれていたが、ここに東急ストアやアオキスーパーなどが新たに追加されたんじゃ。
家尾 オーケーは私もよく買い物してますよ。ここは値段がほかのスーパーより安めですが、さらに7%もポイント還元するとは太っ腹です。それに職場の近くには東急ストアがあるので、今後はどちらの店舗でも7%の還元が受けられるようになるのはありがたい!
師範 スーパー以外の対象店舗には回転寿司チェーンのくら寿司、スシロー、コンビニではセブン-イレブン、牛丼チェーンの松屋などがある。(※:対象店舗によってはアメリカン・エキスプレスのカードは優遇対象外となります)

家尾 おお、コンビニは普段からよく買い物しますし、回転寿司や牛丼店もたまに行くので、このカードは使い出がありそうです!
師範 驚くのはまだ早いぞ。今回の新ポイントアッププログラムでは、対象店舗の利用での7%還元に加え、各種サービスの登録・利用で貯まるスペシャルポイントを用意。各種条件をクリアすることで、なんと合計のポイント還元率は最大20%となる。
家尾 最大20%!? その条件とは?

師範 具体的には、リニューアルした「MUFGカードアプリ」に月1回以上ログインすることで+0.5%、1か月の利用合計金額が5万円以上で+0.5%など、カードサービスの利用に応じて最大3.5%を還元。また、「三菱UFJダイレクト」へのログインで+1%など、MUFGグループ各社のサービスを利用することで最大4.5%を還元する。さらに、AppleのサービスやHulu(フールー)、ABEMAプレミアム、コミックシーモア、日経電子版などをカード払いにすることで最大5%還元。対象店舗利用の7%と合わせて最大20%ポイント還元になる計算じゃ。
家尾 スーパーやコンビニといった日常的な買い物だけでなく、外食やエンタメなどの支払いにも使うことで還元率がどんどん上がるのが嬉しいですね。
三井住友カード(NL)はスマホのタッチ決済利用で最大7%、他サービスと組み合わせれば最大20%還元に!
家尾 スーパーでの買い物に三菱UFJカードがオススメなのはよくわかりました。ほかの業態でおトクになるカードは?
師範 さきほどおぬしは、コンビニにもよく行くと言うとったが、コンビニでもうひとつオススメなのが三井住友カード(NL)じゃ。
年会費永年無料で基本ポイント還元率は0.5%じゃが、スマホのVisaのタッチ決済・Mastercardタッチ決済で支払うと利用額200円につき最大7%のVポイントが還元される。対象店舗はコンビニではセブン-イレブン、ローソンのほか、ミニストップ、セイコーマートなど。ほかにファストフード店では、マクドナルド、モスバーガー、ケンタッキーフライドチキン、吉野家、すき家が対象。サイゼリアやガスト、バーミヤンなどのファミレスも最大7%ポイント還元の対象じゃ。なかでもおトクなのはセブン-イレブンで、セブン-イレブンアプリ会員に登録し、Vポイント、三井住友カードを紐づけてスマホのタッチ決済の利用設定を行なったあと、セブン-イレブンアプリのコード提示(0.5%還元)とスマホのタッチ決済(9.5%還元)を行えば、なんと最大10%のポイント還元が受けられる(最大10%のうち0.5%はセブンマイルで還元され、セブンマイルをVポイントに交換することで10%になる計算)!
家尾 7%還元でもすごいのに、セブン-イレブンの還元率は10%の大台に乗っちゃうんですか? これまたぜったい利用したいです! それに、コンビニ以外にもファストフード店に対象店舗が多いから、特に若者にはより利用価値が高そうです。
師範 これら高ポイント還元の対象になるのは「スマホ」でのVisaのタッチ決済・Mastercardタッチ決済のみ。カードの差し込み、磁気取引は対象外で、カードのタッチ決済も1.5%還元に留まる。
家尾 ふむふむ、三井住友カード(NL)はカードではなくスマホで決済がおトク、と。
師範 ちなみに、家族登録のほか、Oliveアカウント登録のうえ三井住友銀行アプリもしくはVpassアプリへ月に1回以上ログインといった対象サービスと併せて利用することで最大20%ポイント還元される「Vポイントアッププログラム」も要チェック。
また、カードの年間利用額が100万円を超えるなら、三井住友カード(NL)でなく、三井住友カード ゴールド(NL)を選ぶ手もあるな。通常5500円の年会費が、年間100万円以上の利用で翌年以降は永年無料になるうえ、年間100万円以上利用で継続特典としてVポイント1万ポイントがもらえる。つまり、7%ポイント還元の対象店舗以外でも年間100万円決済すれば、還元率は実質1.5%。年間100万円の利用のうち7%ポイント還元対象店舗の割合が増えればさらにおトクになっていく、ということじゃ。
家尾 それは魅力的! ただ、年額100万円に達しないと1万ポイントまるまるもらえないのはプレッシャーですね。
師範 まあ光熱費などの公共料金をカード払いにまとめれば4人家族なら月に3万円以上はいくじゃろう。年間100万円ということは月平均8万4000円じゃから、公共料金を引いて5万円強、これをカード払いするのは、そこまで難しいとは思わんぞ。
スマホ料金は、それに特化したカードを持つという選択肢もある
師範 まあ、普段の買い物でトクをするカードというと、ワシのオススメはその2枚。じゃがここでもうひとつ、考えておきたい支払いがある。それはスマホなどの通信費。いまはMVNOなど格安キャリアが人気じゃが、理由があってドコモやauの回線を使っているなら、同系列の上級カードを持つのがよい。例えばドコモユーザーならdカード GOLDやdカード PLATINUM。dカード GOLDは年会費1万1000円でドコモケータイやドコモ光の利用料金1000円(税抜)ごとに100ポイントが還元される(還元率10%。※請求月の前月末日時点で、ご利用携帯電話番号として登録した電話番号の利用料金をdカード GOLDで毎月支払う設定している必要があります。※ドコモ mini/irumo/ahamo/ahamo光 利用料金・端末代金・事務手数料等一部対象外あり。詳しくはdカードサイトをご確認ください)。
例えば、ケータイ料金が月に1万円なら1年で12万円。その10%の1万2000ポイントが還元されれば、それだけで年会費以上のトクになる。
家尾 年会費がチャラになるどころかそれ以上におトクになるとは驚きです。私も月に1万円は超えるので、持たない手はないですね。
師範 一方のdカード PLATINUMは、昨年11月に発行を開始した新しい最上位カード。
年会費はかなり高額の2万9700円じゃが、ドコモの回線や光サービスの利用料金に対して初年度は20%、2年目以降はショッピング利用額に応じて10~20%のポイントが還元される。
家尾 あれ? 月に1万円の利用料があったとしてdカードPLATINUMのポイント還元は年間2万4000ポイント(初年度20%。※請求月の前月末日時点で、ご利用携帯電話番号として登録した電話番号の利用料金をdカード PLATINUMで毎月支払う設定している必要があります。※ドコモ mini/irumo/ahamo/ahamo光 利用料金・端末代金・事務手数料等一部対象外あり。詳しくはdカードサイトをご確認ください)。ポイント還元分から年会費を差し引いた差額を比較するとdカード GOLDのほうがおトクですよ。
師範 そうじゃな。ただ、dカード PLATINUMはほかにも様々な特典がある。年間100万円利用ではdカード GOLDと同様1万円相当の年間ご利用額特典が付くが、dカード PLATINUMは200万円利用で2万円相当、300万円利用で3万円相当、400万円利用で4万円相当まで特典ポイントが増えていく。さらに、2人以上の利用でひとりぶん無料になるレストランの優待サービスや、同カードを使った投資信託の積立で3.1%のポイントが付くなど、こちらは使えば使うほどトクになるカードと言える。ということで、dカード GOLDはケータイ料金でトクするために持つカードで、dカード PLATINUMは逆に利用額100万、200万、300万、400万円を目指して様々な支払いに積極的に使うべきカード、と考えればよいじゃろ。
家尾 うちでは年間200万円も大変そうですが。
師範 ちなみに同じようなカードはauにもあって、それがau PAY ゴールドカード。年会費は1万1000円で、auのケータイ料金やUQモバイルの利用料金、auひかりの料金を同カードで支払うと、通常ポイント1%と合わせ合計最大10%が還元される。さらに、同カードからau PAY残高にオートチャージすると、家族カードの保有・利用やETCカードの年1回以上利用など、条件達成に応じてPontaポイントが最大5%が還元されるぞ(月間最大1000Pontaポイント)。
師範 こうしてみると、各カードに使い所があるのがわかるじゃろ。特に三菱UFJカードと三井住友カード(NL)は年会費も無料であるし2枚持ちの候補にしてもよいと思う。
家尾 基本的にクレジットカードをたくさん持つのは好きではないですが、普段使いで少しでもお得になるなら複数枚の使い分けも検討する価値がありそうです。
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構成/佐伯尚子 文/平島憲一