スパイスやハーブは従来、“料理上級者が使うもの”というイメージがありました。ところが最近では、身近なスーパーマーケットでもさまざまな種類のスパイスやハーブが手に入るようになってきており、マッチする料理やスパイス同士の組み合わせを知っておけば、手料理だけでなくテイクアウトしたものも一味違ったおいしさで楽しむことができるのです。
今回は、スパイス調合家でもある料理家・日沼紀子さんに、スパイスの使い方やレシピを教えていただきました。
味に深みが出て本格的になる!
ハーブやスパイスは、カレーやエスニックにしか使えないと思っている人も多いかもしれませんが、実はいつもの惣菜や和食も、スパイスを使うことで味に深みが出たり、香りが豊かになってうまみが増したりするとか。「たとえばナツメグはハンバーグのタネに使う印象が強いのですが、クリームパスタにひと振りしたり、豚肉の生姜焼きの下味に使ったりすると、洋食屋さんの料理のような芳しい仕上がりになります」(スパイス調合家・日沼紀子さん、以下同)
揃えておきたい最初のハーブ&スパイス5種
さっそく、まずはどんなハーブ&スパイスを常備しておけばいいのでしょうか。
使い勝手がよく、味の広がりを楽しめるスパイスとして日沼さんがおすすめするのが、「バジル、シナモン、花椒、クミンシード、スモークパプリカ」の5つです。それぞれにどんな料理が合うのか見ていきましょう。
1.燻香が格上の味わいにする「スモークパプリカ」
パプリカを木のチップでスモークしてからパウダー状にしたもの。食欲をそそる燻製の香りと、トマトを思わせる濃厚な味わいが印象的なスパイスです。
「スモーキーな香りがお料理のアクセントになります。お肉やお魚にまぶして焼くのもよいですし、カレーの隠し味にするとコクが増します。炊飯器で手軽に作るピラフの隠し味にすると、ごちそうのような高級感のある香りに。カレーやピラフなどは、4人分の量に小さじ1/2程度から入れてみて、好みによって調節してみてください。塩胡椒などと同じタイミングで入れます」
2.エスニックな香りで和食との相性も抜群の「バジル」
生の葉で有名なハーブ。アジアン料理を思わせる、独特の香水のような香りが食欲をそそります。乾燥タイプはやや硬く舌に残るので、調理のはじめの段階で加えて一緒に煮込んだり炒めたりするといいでしょう。
「鶏肉や白身魚などのハーブソテーでお馴染みですが、おしょうゆ味の煮込みや、野菜の炒め物に少し使うと、アジアンエスニックの香りに変身します。鶏肉を、お酢とおしょうゆとバジル少々で煮込むのもおいしいですよ」
3.炒め野菜やサラダなどどんな料理にも合う「クミンシード」
セリ科の一年草で、カレーのような刺激のある強い香りがあります。
「炒めものの最初に油と一緒に炒めてから使うと、いつもの”カレー粉”よりも、ナッティな香ばしさがひきたって、食欲をそそります。蒸したじゃがいもや鶏肉のソテーなどに使うのが定番ですが、オクラやほうれん草などの青物野菜と炒めてもいいですし、サラダに振りかけるのもおすすめです」
4.甘くて清涼感のある香りは素揚げした野菜にぴったりの「シナモン」
ニッケイ属などの樹木の内樹皮からとれた香辛料で、甘さを感じるスッとした独特な香りがします。
「お菓子に使う印象が強いスパイスですが、かぼちゃやごぼう、里芋などを素揚げしたとき塩と一緒に振ると、香りのよいおつまみに。サンマやイワシなど、青背の魚を煮つけにするときに、一緒に煮込むと臭み消しのはたらきもしてくれます」
5.ぴりっとした香りと辛味が料理に深みを与える「花椒」
痺れるような辛味があり、麻婆豆腐など四川料理で活躍する中国原産のスパイスです。
「花椒だけでなく、シナモンと混ぜることで香りがより強く感じられ、コクが出て本格的な味わいになります。チャーシューや煮玉子、そぼろなど、甘じょっぱい中華味にはぜひふたつを合わせて使ってみてください。パウダー少々なら辛味も残らず香りだけつけられるので、チャーハンや中華丼、ラーメンには直接振りかけ、ギョウザやシウマイなどの餡に練り込むなど、中華料理全般に使えます」
基本のハーブ&スパイスをチェックした上で、こういったスパイスを使った料理のレシピを、引き続き日沼さんに教えていただきます。