グルメ
2019/6/16 17:30

【街中華の名店】これぞ革新的老舗! 浅草橋「水新菜館」が何倍も楽しめるワケ

先達の意思を紡いで進化する粋なエスプリ

好奇心が旺盛で、海外の食文化にも明るいマスターと、その影響を自然に受けて育ったソムリエの泰行さん。そんな「水新菜館」にはもちろん「あんかけ焼ソバ」以外にも珠玉のメニューが揃う。たとえば、ルックスからして目を引く「葱油鶏」(むしどりのネギ風味)だ。

↑「葱油鶏」(むしどりのネギ風味)1260円。合わせるのは、エレガントな香りと心地よい発泡感が楽しめるシャンパーニュ「ドゥラモット ブリュット」

 

しっとり柔らかく蒸し上げた鶏むね肉に、黒胡椒がたっぷりかかったこの一皿。スパイシーながら想像以上に辛味はなく、白髪ねぎ、針しょうが、香菜(パクチー)のアクセントも芳醇だ。

 

また、同店の点心で昔から人気なのが、40年以上前から提供している「小籠包」。当時は提供している店が珍しく、同世代の中華料理店オーナーとともに開発した力作だ。一方、素材を見直したことでよりおいしさを増したという「イベリコ酢豚」のような、独自色の濃い料理もある。

↑「小籠包 4ヶ」1050円。豚肉とそのスープが、もちもちの生地からあふれて激ウマ。ジョージア国のオレンジワイン「ストリ・マラニ」はクリアで心地よいタンニンと果実味が魅力で、肉の渋みとマッチする

 

↑「イベリコ酢豚」1680円。約10年前に豚肉を国産もも肉からこの肩ロースに切り替え、身のうまみと脂の甘味がより際立つおいしさに。持ち帰りは900円、定食は950円で味わえる

 

黒酢ではない、糖醋(タンツゥ)という日本おなじみの甘酢タイプで、玉ねぎやきゅうりなどの野菜もたっぷり。そしてイベリコ豚の味を生かす意味でも、このソースけがマッチしている。ワインは、爽やかでフルーティかつハーバルでスパイシーな「アンソランス」というプロヴァンスのロゼが好マリアージュ。

↑「水新はなれ 紅」の店内。街中華×ワインのマリアージュは、ここでも堪能できる

 

なお、店名の由来は、創業者の名前と当時の業態を掛け合わせたもの。初代の寺田新次郎さんが果物店と併設して水菓子業、いわゆるフルーツパーラーを営んでいたことから、”新”次郎の”水”菓子店として「水新」がスタート。その後、あんみつなども提供する甘味処となり、やがてラーメンや焼きそばも出す甘味中華に。

 

伝統は脈々と受け継がれ、現マスターは1974年に4代目店主となる。その際、改装するとともに甘味中華から、より食と酒を楽しめる街中華へと業態を変え、店名も「水新菜館」に。

↑左から寺田泰行さん、若目田耕太郎チーフ。そしてイタリアンテイストのコーディネートが似合う、寺田規行マスター

 

ただ、変えるといっても常連や先達の意思を受け止め、ガラっとではなく一部を残して進化させる。しかも独自のセンスと持ち前のバイタリティで、どこにもないスタイルに。これが下町ならではの、粋な計らいというものだろう。

↑砂漠をイメージした床に対して、天井に空を描いたユニークな店内。カラフルで、マスターの快活な雰囲気ともリンクする

 

そして、ひねりの効いたエスプリは、5代目の泰行さんにも受け継がれている。ぶどうなどを扱う果物店を離れてから時を経て、ぶどう酒を扱うワイン業態として一部が戻ったことは、決して偶然ではない。こうして初代から続く“水”脈は、“新”しい時代を迎えてますます勢いよく流れていくのだ。

 

撮影/我妻慶一

 

【SHOP DATA】

水新菜館

住所:東京都台東区浅草橋2-1-1

アクセス:JR総武線ほか「浅草橋駅」東口徒歩3分

営業時間:11:30~15:00(L.O.)、17:30~20:45(L.O.)

定休日:日曜、第2・4土曜

 

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