今年の2月、「バーテンダー向け」という前代未聞の焼酎が発売されました。その名は「The SG Shochu」。米、芋、麦の3種同時リリースで、製造元がそれぞれ異なっている点が驚き。アルコール度数は38%または40%と焼酎にしては高め。デザインも独特で、表ラベルの文字はすべて英語と、焼酎には見えない個性的なビジュアルです。
手がけたのは、カクテルの国際大会を制し“世界一のバーテンダー”として知られる後閑信吾(ごかん・しんご)さん。味わいは? 開発の背景はや狙いは? などを発表会の様子とともにお届けしていきます。
アルコール度が低いとバーでは使いにくい
バーテンダーといえば、基本的には洋酒でドリンクを作ることが多いもの。後閑さん自身、日本でその道を志してニューヨークで腕を磨き、世界一になったのも「バカルディ レガシー グローバル カクテル コンペティション」という洋酒ブランドの名が冠された大会でした。
そんな洋酒に縁の深い後閑さんが、なぜ今回「焼酎」を手掛けたのか――。そこには、ゲストバーテンダーやセミナー講師として世界のバーシーンを見てきた後閑さんならではの想いがありました。
「ニューヨークで長年働き、上海に店を出して、2018年に『The SG Club』(エスジー・クラブ)を日本に出店しました。久しぶりに日本で生活してみてふと気づいたんです。『海外には各国を代表する蒸溜酒があって、世界中のバーテンダーがそれを使っているのに、なぜそこに日本の酒がないんだろう』って。日本が誇る蒸溜酒といえば焼酎。500年以上の歴史があって、手間ひまがかかっていて原材料は高品質。作り手の技術も素晴らしく、味も抜群においしい。それなのに日本で焼酎は安いお酒のイメージですよね。その理由は、『そうしないと売れない』という側面があるからです」(後閑さん)
後閑さんは、バーで使われない理由に、焼酎のアルコール度が挙げられるのではないかと言います。
「焼酎のアルコール度数は、ほとんどが20%や25%。ほかの蒸溜酒に比べて低いんです。カクテルのベースにしようとすると使い勝手が違うので、バーテンダーとしてはちょっと扱いづらいんですね。それならば、もっと使いやすい焼酎があればと思ったんです」(後閑さん)
米、芋、麦それぞれの作り手とタッグを組む
その発想から生まれたのが、40%近いアルコール度数の本格焼酎。そして焼酎は、主となる原材料ごとの味の多彩さが大きな特徴ですが、なかでも伝統的な米、芋、麦それぞれのエキスパートである作り手とタッグを組むことに。米は「白岳」や「しろ」が代表銘柄の熊本県の高橋酒造、芋は「さつま白波」で知られる鹿児島県の薩摩酒造、麦は「いいちこ」で有名な大分県の三和酒類。
カクテルにした際にもしっかりとベースのフレーバーが生きるよう、味わいも個性的に仕上げられています。以下で画像とともに3商品の特徴を紹介しましょう。